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4.

 須田にとっては、ちょうどいい具合になった。とりあえず、前田の言った女、三島理恵

の家に行ってみると、写真で見た例の男が出てくるところに遭遇できた。男を見失わないように、ゆっくりと後をつけた。男は振り向きもせずに、悠然と歩いていた。

 男が行き着いた先は、見るからに高級なマンションだった。須田は男の乗ったエレベーターが5階に止まったのを確認した。ポストを見てみると、五階には六部屋あり、そのうち三部屋は空室という紙が張られていた。

 入居者が居る三部屋のうち、二部屋は家族で住んでいるようなので、話は簡単だった。残った一部屋、安田という表札が貼られている部屋が目的の男の住処に違いなかった。

 須田は、安田の部屋に行ってみたい衝動にかられたが、なんとか思いとどまった。気は進まなかったが、手っ取り早く安全な方法を取ることにして、電話をかけた。

「はい、木村興信所です」

「須田という者ですが、一人身で三十代の木村さんをお願いします」

「あなたは知らないだろうけど、いたずら電話を切っても文句を言われる筋合いはないのよ」

「ユーモアのセンスがないともてないぞ」

「充分もててるわよ」

「なら良かった。ついでにもう一ついい話だ」

 須田は安田の住所を告げた。

「何それ?」

「今言った住所に住んでる奴の情報が欲しい」

 受話器の向こうから溜息が聞こえた。

「それじゃ、いつもの店で二人分の予約ね」

「相手がいるのか?」

「作るのよ」

 二人の間に、しばらく沈黙が流れた。

「まあ、しっかり頼む」

「安心しなさい、候補はたくさんいるから」

 いつも候補止まりだろうが、と心の中でつぶやきながら、須田は電話を切った。初日にしては出来すぎと言っていい成果だった。

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