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3.

 小汚い喫茶店で、うまくもなんともないコーヒーを飲みながら、須田は依頼のことを考えていた。とりあえず、写真の男の身元を割り出す必要がある。女に張り付くのが一番手っ取り早いかもしれない。

「ここは空いてるかな?」

 須田の思考は男の声に遮られた。顔を上げると、なじみのある顔、三山雄一がテーブルの向側に立っていた。

「これは驚きだ。飲み屋の経営者もこんなところに午前中から来るのか」

 三山はそれを聞いて、今にも大笑いしそうになりながら、勢いよく椅子を引いて腰を下ろした。

「おいおい、もうほとんど昼だぞ? それにな、俺が経営してるのはバー、パブ、スナック。どれも高級っていうのが頭につくんだ。そこらの赤提灯みたいな言いかたはやめてくれよ」

 三山は手をあげてウエイターを呼んだ。

「メロンソーダを頼むよ。おっと、アイスクリームを忘れないでくれよ」

「相変わらずそれか。成人病まっしぐらじゃないか?」

 須田の嫌味を無視して、三山は須田の顔を凝視した。

「ところでな、さっきはずいぶん難しそうな顔をしていたようだけど、難しい依頼でもあったのか?」

「まあ、つまらなそうな仕事なんだがな。この男を調べるんだ」須田は財布から写真を取り出して、三山の前に置いた。「知ってるか? この左側の男」

 三山は写真を手にとって、しばらくそれを見つめてから、おもむろにうなずいて、それを須田に返した。

「知ってるよ。つまらん男だ」ウエイターがメロンソーダを持ってきたので、三山はそれを受け取って、一口飲んだ。「こいつはな、ヒモ気取りのアホだ。クスリも扱ってるらしいけどな。まあ、ろくでもない野郎だよ」

「ヒモにクスリか。思ったよりもやっかいな話かもな」須田は難しい顔をして、コーヒーを一口飲んでからもう一つの質問をした。「三島理恵って女は知ってるか?」

「いや、知らんな。その女がこのヒモ気取りに引っかけられたのか?」

「かもしれない」

 二人の間に沈黙が流れた。三山はアイスクリームを二口ほど口に放り込んでから、須田の目を覗き込んだ。

「女に関しては、お前の元女房を頼るべきだな」

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