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29.

 夜遅く、須田は警察署の石村を訪ねていた。石村の課は人影がまばらで、須田にとっては都合がよかった。石村は須田の姿をみとめると、書類から顔を上げた。

「よお、あれから何か進展はあったか?」

「いや、ちょっと外せない用事が入ったりしてな、大した進展はしてない」

「そうか。これで一気に進展してくれるといいんだけどな」

 石村は机の隅のファイルを手にとって、須田に差し出した。須田はそのファイルを受け取って、ざっと目を通した。

「どうだ?」

「いや」須田は首を横にふった。「しかし、こいつはずいぶん放浪癖があるらしいな」

「ああ、そういえば言ってなかったな。まあ、それがこの野郎をしっかりおさえられない原因の一つではある。確認できてるだけでも、この5年で10回はねぐらを変えてやがんだよ」

「それだけ居場所をしょっちゅう変えて、しかも警察にやる気を起こさせないように行動してるんじゃ、しっかり捕捉するのは難しいだろう」須田はもう一度ファイルを開いた。「これだけの情報があるのは驚きだな」

「まあ、それはな。善良な市民の協力というやつらしいんだが。いよいよ実を結ぶ、か?」

「そう願いたい。面白そうな線がいくつかあるしな」

「面白そうな線ねえ。当然教えてはくれんわけだよな」

「いや、依頼人以外に義理立てすることはそれほどない」須田はにやりと笑った。「吉田っていう中年の弁護士は知ってるか?」

「いや、初耳だ。どんな弁護士だ?」

「それなりにまっとうに仕事をしてきたらしい。傷がないわけじゃ、なさそうだが」

「どうも面倒くさそうだな。手っ取り早く、その弁護士先生をゆさぶって何か吐かせられないのか?」

「それは三山に頼んだ」

「ああ、それなら安心だ。あの人はもともとあっち側だもんな」

「それは本人には言うなよ」須田はファイルから奥の写真を抜き取った。「コピーさせてもらうぞ」

「ああ、俺たちが動けるような材料を頼むわ」

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