27.
前田が事務所から帰った後、須田は三山に連絡をとった。
「ああ、お前か。あのヒモの件はどうなった?」
「そのことなんだが、色々やっかいそうなのが出てきてな」
「やっかいねえ。なんかあんまり聞きたくないな」
「お前にも関係があることだからな、聞いてもらうぞ」
「どうも嫌な感じがしてたんだ。どうぞどうぞ、話せよ」
「それなら、奥っていう男を知ってるか」
「それは話の核心ってやつか? だとしたら、思ったよりもつまらん話だな。そんな、ちょっと要領がいいだけの小賢しい奴が核心じゃ」
「そんなに小者なのか」
「小者も小者だな。素人だまくらかして、ちんけな薬をつかませてるだけの奴だよ。まあ、そういう野郎だから、今まで大して目立ちもせずに、うまいこと立ちまわってこれたわけだ」
「なるほどな。ところで、お前にも関係があることだと言ったと思うんだけどな、心当たりはないか?」
「心当たりね」少しの間、考え込んだような沈黙が流れた。「いや、俺自身は関わったことはないな」
「この間の弁護士だよ、関係あるのは」
「へえ、あのおっさんがか。きもったまの小さい三流弁護士だと思ってたけど、意外とやることやってんだな」
「内容知ってるのか?」
「知るわけないだろ。大体、その話は初耳だ」
「お前が足を洗う前のつてを使ってなにか探れないか? 3年前に探偵事務所に依頼が持ち込まれてるし、何も出てこないってことはないだろ」
須田の言葉に、三山は顔をしかめた。
「あんまりそっちの方の裏のつては使いたくないんだけどな」
「そんなにいい子ぶることもないだろ」
「ああ、わかったよ」受話器の向こう側から、大きな溜息が聞こえた。「よほどこの件にご執心なんだなお前は」
「人命がかかってるようなんでな」
「まったく、いい子ぶってんのはどっちだよ」




