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20.

 病室の前で須田がうろついていると、中年の男が病室の番号を確認しながら、不安げな表情で歩いてきた。男は須田の前で立ち止まると、病室の番号を何度か確認した。

「失礼ですが」

 須田が声をかけると、男は必要以上に驚いた様子で振り向いた。

「三島さんのご家族の方ですか?」

「え、ええ。父親ですが。あの、あなたは?」

「私立探偵をやってる須田というものです。偶然娘さんの危ないところに居合わせたもので」

「ああ、そ、そうですか」私立探偵という言葉に、三島の父親はあからさまに動揺した。「あの、ひょっとして娘がなにか問題を起こしたんでしょうか? いや、それよりも娘を助けていただいたようで、ありがとうございます」

「運がよかったんですよ。医者は特に何の問題もなく回復するだろうと言ってますしね。すぐに退院できるようになりますよ」須田は微笑を浮かべた。「そうなったら少々聞きたいことがあるんですが」

「いえ、それは娘が決めることですから・・・」三島の父親は自嘲気味の笑みを浮かべた。「それに、そもそも私は何もしらないんですよ。娘とは二十年以上一緒に居たはずなのに。あなたが何を聞こうとしているのかはわかりませんが、私が話すよりはずっと役に立つと思いますよ」

 須田は特に何の反応もせずに、三島の父親の顔をしげしげと見た。

「許可してくださって、ありがとうございます。それと、そんなに卑下する必要はありませんよ。あなたはわかっているからこそ、自分で動かないんでしょうから」

「いえ、そんなことすらわからないんです」

「わからないということがわかっているのは重要なことです。お役に立てるように努力します」

「正式に仕事として依頼すべきですか?」

「依頼ならすでに受けています。とりあえず連絡先を教えていただけますか? 何かあったら連絡します」

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