19.
須田は三島の家の前に来ていた。前田が警察のことに関して、嘘をついているのか本当のことを言っているのかどうかは気になっていたが、今は三島のほうが、より重要に思えたからだ。
しばらくすると、三島が家から出たきた。須田は声をかけようと足を踏み出そうとした。しかし、見たことのない男が三島に近づいていったのに気づいて、須田は足を止めた。小柄で筋肉質な男だった。男が声をかけると、三島は立ち止まった。二言三言しゃべると、二人は三島の家に入っていった。
須田は踏み出した足を戻さずに、家に近づいていった。ドアの前まで来ると、中から何かが壁にぶつかったような低い音が聞こえた。須田は嫌な予感にとらわれて、ドアをノックした。
「三島さん、三島さん。いらっしゃいますか?」さらにドアを強くノックした。「警察です」
家の中は静まりかえっていた。須田は家の裏側に回った。居間の窓だと思われる窓があったが、カーテンがしまっていて中の様子は見えなかった。須田は手近な石を拾って、窓に叩きつけた。
ガラスが割れる音が響いた。家の中からは、あわてた足音が響いた。須田は窓の割れ目から手を突っ込んで、鍵を開けた。一瞬だけ、逃げていく男の背中が見えたが、三島が倒れているのに気づいた須田は、すぐに彼女に歩み寄った。
三島の首には手の跡がついていた。頭も打っているようだったが、弱々しくせきこんでいる以外は特に異常は見られなかった。
「間一髪だったようですね」
三島はまだ苦しそうにしながら、須田の顔をぼんやりと見て、口を開こうとした。須田は首を横に振った。
「無理をしてはいけませんよ。すぐに救急車を呼びますから、安静にしていてください」
須田の言葉に、三島は力なくうなずいた。




