17.
「はい、木村興信所です」
「最近は電話にはりついてるのか?」
「おかげさまでね。それで、例の件?」
「ああ、なんかおもしろいことはあったか?」
「まあまあってとこでしょ」
「そうか、それじゃあ今からそっちに向かう」
「はいはい。その様子だと何か進展があったようだけど、ま、こっちに着いてから聞かせてもらいましょうか」
須田は何も言わずに電話を切った。木村興信所に足を向けて、とりあえずは何も考えないで先を急いだ。
木村興信所に到着した須田は、顔見知りの社員と一言二言言葉を交わしながら、木村のデスクにたどり着いた。木村はパソコンのモニタから目を離さないで口を開いた。
「潔白というのとはほど遠いみたいね」木村はちょっと首をかしげた。「まあ、うちのデータベースに載ってるんだから、それはそうなんだけど」
「どういうことだ?」
「学生時代は色々あったんじゃない? 親が素行調査の依頼を出してきてるくらいだったようだから」
「どんな理由だ?」
「どうも、不自然に金を持っている、と親は考えたらしいけど」
「何かやばいことでもしてるんじゃないかと、そう考えたわけか」
「実際のところは、考えていたよりも重症だったようだけど」
木村はうなずいた。過去の依頼のファイルを開いて、三島理恵の情報を表示した。須田はそれを覗き込んで、ため息をついた。
「これは、ドラッグだな」
「そう、でも当時は違法ではなかった」
「なるほどね。足を洗ってれば問題はないわけだ」
「逮捕されたということはないようだから、大丈夫だったんじゃないの」
「そう願いたいね」
木村は振り向いて、皮肉っぽい微笑を浮かべた。
「もちろん、違法になって希少性が生じたものの商権は手放したくはないだろうけどね。おいしいものをどうして手放さなくちゃならない? そんな感じで」
「リスクが大きすぎるということはあるさ」




