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138.

 前田は須田からの連絡を待ってから1週間が経った。その間事態は拍子抜けするほど進展していないように見えた。だが須田からの連絡がようやく入った。

「須田ですが、お知らせしたいことがあります」

「何か進展があったんですか?」

「これからです。とりあえず今から言う雑誌を見ていただけますか?」

 須田は雑誌の名前を告げた。それなりに名の知られたゴシップ誌だった。

「それに何があるんですか?」

「読んでみればわかります。それから、あなたのいるマンションからは早めに出たほうがいいですね」

 電話はそこで切られた。前田はわけがわからないまま言われた通りに近くの書店に行き、言われた雑誌を手に取った。毒々しい表紙のその雑誌の目次のページを見ると、前田の顔色が変わった。素早く読んで、その雑誌を閉じると、すぐに書店を出た。

 マンションに戻ると、ほとんどない荷物をまとめているところに、電話がかかってきた。

「須田です。雑誌は見ていただけましたか?」

「見ました。ずいぶんひどい記事ですね」

「そうですか。ヒモをやっていた男の疑惑の自殺にから始まって、殺人未遂、そして過去にあった某地方政治家の黒い噂。警察の腐敗。なかなかよく書けていると思いますが。心当たりのある人間には楽しいものではないかもしれませんね」

「これで奥があの町に帰るんですか? どこかほかのところに逃げるか、それとも、この街から動かないかもしれませんよ」

「逃げるにしても奥はあの町に一度は帰ると思います。5年前の件を考えれば奥が一番影響力を行使できる場所、つまり本拠地はあそこでしょうからね。私の印象では、奥は自分が投資した労力と金を無視できるような人間ではありません」

 須田の言葉に前田は黙って考え込んでいるようだった。

「それに大平さんがすでに戻って、色々と種をまいているはずです。奥が戻りたくなるような、そしてそれを逃がさないようにするためのものをね。同時に、あの人の雇用主の利益も守るようにするでしょう。あの人ならそれくらいはできますよ」

「わかりました」前田は意を決したようだった。「あの町に戻ります。大平さんと連絡をとってくれませんか?」

「連絡先をお教えしますよ」須田は大平の連絡先を告げた。「三島さん達のことはどうするつもりですか?」

「彼女も誘ってみます。最後まで見届けたいでしょうから」

「危険かもしれませんよ」

「お互いに承知の上です」

「それでは、ここを発つ前に私の事務所に来ていただけますか。清算と最後のご報告がありますから」

「わかりました。2時間後くらいに行きます」

 須田は電話を切った。

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