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134.

「つまり、お前の言う5年前の事件っていうのを掘り返すのか」

 三山はあきれたような声を出した。

「そうだ」

「またなんでそんな面倒くさいことをするんだよ」

「これは推測だけどな、奥の本拠地は5年前の件の町だ。あの男を叩くにはそこに追い込んでからにしないと駄目だ」

「お前、そこまで遠出する気なのか?」

「いや、それはやりたい人間にまかせる」

「なるほどな。つまり、くそ野郎をこの街から叩き出して、自分の本拠地に逃げ帰らせようってことか。しかし、そう都合よくいくのか?」

「わからない。だが、警察や政治家を動かした昔のことを考えれば、奥はそこでは影響力があって安全だと考えていてもおかしくはない」

「本拠地だから逃げ出すわけにもいかずに、ほとぼりが冷めるまでそこで油を売ってすごすかもしれないか」

「そうだ。だからこっちでも少し派手にやってやる必要があるかもしれない」

「それで、事務所に押しかけるわけか」

 三山の言葉に須田は首を横に振った。

「とりあえず連絡だけだ。あっちにも考える時間が必要だろうからな」

「本当にそんなことがうまくいくと思ってるのか?」

「ほとんど賭けだ。だが、奴が本拠地に戻って火消しをしなきゃならないような状況は作ってやるつもりだ」

「ずいぶんとでかい話になってきたな」

「そうだな、電話を借りるぞ」

 須田は例の雑居ビルの電話番号をダイヤルした。

「なんだ?」

 電話には奥らしき人物が出た。須田は一呼吸おいてから口を開いた。

「たぶん知ってると思いますが、私は須田という探偵です。あなたは?」

「当ててみろよ、色々嗅ぎまわってるんだろ」

「そうですか。ところで奥さん、少しあなたと話をしたいと思いましてね」

「俺のほうからは何もない」

「残念ですが、私のほうからは大いに用があります。あなたもできるだけ穏便にことを済ませたいとは思いませんか?」

「ずいぶん大きく出たな」奥は受話器の向こうで笑っているようだった。「いいだろう、会ってやる」

「それではあなたが今いる場所で会いましょう」

 須田は電話を切った。三山はそれを見てためいきをついた。

「面倒くさいことになりそうだな」

「ああ、悪いが力を貸りることになる」

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