133.
前田と別れた須田は三山に連絡をした。
「俺だ、ちょっと付き合ってもらいたい場所がある」
「例の件か。そろそろ終わらせられそうなのか?」
「そうしないとまずそうなことになってきたんだ」
「おおかた依頼人がしびれをきらしたとか、そんなところか」
「それもあるんだが、少し釘を刺しておかないと逃げ出しそうな奴がいるんだ」
「でっかい五寸釘でも刺すのか? やりすぎると逆に逃げられるぞ」
「しっかり壁に固定してやらないといけないんだ。やりすぎくらいでちょうどいいかもしれない」
「なるほどな。その相手は例の奥って野郎か?」
「そうだ。直接接触をしようと思ってる」
「なるほど。まあ、俺としてもこの街にやっかいごとを持ち込んでくれた礼をしてやりたいと思ってたところだし、協力してやるよ」
「すまんな。ところで、大平さんはそっちにいるか」
「ああ、おとなしくしてるぜ」
「それじゃ、今からそっちに行く。くわしいことは着いてから話す」
須田は電話を切って、とりあえず自分の事務所に向かった。そして事務所に到着すると、金庫を開けて小さな箱を取り出した。その箱を開けて中身を確認してから、それを鞄に入れた。さらに作業用の厚手のグローブも鞄に入れた。カフェインの錠剤を一粒水で流し込んでから、須田は三山の店に向かった。
店の前ではバーテンダーが掃除をしていた。須田は一声かけてから店内に入ると、店内には掃除をしている三山がいた。
「掃除中悪いな」
「お前が遅いから暇つぶししてただけだよ。珍しく鞄なんか持ってどうした?」
「色々必要なものが多くてな、事務所に寄ってきたんだ。太平さんは事務所か?」
三山がうなずくのを見て、須田は事務所に入った。大平は椅子に座って何かを手帳に書いていた。須田が入ってきたのを顔を上げて確認すると、手帳をしまった。
「大平さん、これからちょっと面倒をかけるかもしれません」
「面倒というのは、なにかな?」
「あなたの本業が忙しくなるかもしれません。昔の火を消すので」
「そうか」大平は軽く笑った。「君の好きにするといい。私も久しぶりに活躍の場ができるのは楽しみだよ」
「ありがとうございます」
須田は頭を下げて事務所から出て行った。




