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13.

 須田は三山と吉田に交互に視線を送ってから、少しの間天井を見上げて、口を開いた。

「一昨日のことだ。吉田さんと同じで、一人の男が事務所にきたのが発端だ。そいつは自分をふった彼女の新しい男を調べて欲しいと言ってきた。それで動き始めてみると、翌日には依頼人が俺を雇ったことで脅されていた。いくらなんでも早すぎるし、こっちに対して何のアクションもないのも妙だ」

「なるほどね。お前を雇ったのはわかってるはずなのに、警告の一つもよこさない。確かに妙だな」

「その依頼人はどんな男なんですか?」

「一見したところでは、そう特殊な人間とは思えない。ところが、ただの単純な男ではなさそうだと思えることがあった」

「なんだ?」

 須田は溜息をついた。

「依頼人の彼女とやらがやって来たんだ。その女は、謎の人物から俺を紹介されたらしい」

「それはお前の依頼人か?」

「確証はないが、その可能性は否定できない。女の周囲に俺を知ってる人間が居るとしたら、今の依頼人という線は十分にあり得る」

「それで、肝心のお前の捜査のほうはどうなんだ?」

「ヒモのねぐらを突き止めた。まあ、多分に偶然ではあるけどな」

「尾行か」三山は言葉を切って、少し考えるような素振りをした。「それが気づかれて、依頼人が強請られたってことはないのか?」

「それはないだろうな。あれは正真正銘、奴のねぐらだったようだし、つけられてるのに気づいていたのなら、俺に何も言ってこないのはおかしい」

「そういうことなら、ただ単にカマをかけただけかもしれませんね。あるいは釘を刺しにきただけか。どちらにせよ、あなたが雇われたことにすぐ気づくような鋭い人間とは思えないですね」

「それは言えてるな」三山は頷いて、須田の顔を見た。「その男の写真かなんかあれば出してくれ」

 須田は黙って前田から預かった写真を取り出した。

「ああ」吉田が特に驚いた様子もない声を出した。「この男ですよ、私のところにきたのも」

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