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124.

「むしろ私が悪人なほうが都合がいいと思うよ」

 大平はそう言って薄く笑った。

「そうでしょうか」

「私が悪人でなかったら、情報は手に入らないからね。なにか書くものをもらえるかな?」

 須田はメモ用紙とボールペンを大平に渡した。大平はそれに一つの住所と電話番号を書いて須田に差し出した。

「君の手間を省ける情報だ」

「いいんですか?」

「ああ、かまわないよ」

 須田はメモ用紙を受け取って、それを胸のポケットに納めた。そうしているうちにタクシーは三山の店の前に到着した。2人はタクシーからは一緒に降りて、店内に声をかけてから一緒に店に入った。

「奥で続きを話そうか」

 大平はそう言ったが、須田は首を横に振った。

「いえ、少し考えたいので、先に行っていて下さい」

 須田の言葉に大平は黙ってうなずいて事務所のほうに消えていった。開店時間にはまだまだある店内は、見張り役の人間以外の姿はなかった。須田はカウンターのストゥールに腰かけた。

 須田は大平から教えられた奥の連絡先を書いたメモ用紙を見ながら、じっと考え込んた。今ここで奥と接触するべきか。うまくいけば事態を一気に解決することもできるかもしれない。もちろんリスクも大きい。

 しかし、今はリスクを考えている段階だろうか。できることが増えたということは素直に歓迎すべきことのはずだ。相手にプレッシャーをかけなければ行き詰る可能性が高い。

 そこまで考えると、須田は立ち上がって事務所に入っていった。事務所の中には大平と三山が座っていた。須田は黙って大平からレコーダーを受け取って、椅子に座るとイヤホンを耳につけた。それを聞き終わってから、須田はあごを手でさすった。

「前田さんはすぐに行動を起こしますかね」

「さあ、どうだろうね」

「大平さんの考えではどうですか」

「彼はやるんじゃないだろうか。ぐずぐずしているタイプではないはずだよ」

「そうですか」須田はそう言って立ち上がった。「こちらもぐずぐずしているわけにはいきませんね」

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