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114.

 須田は前田との話は頭から追い出して、山崎からもらった情報で動き始めた。まずは一番手近な物件から片付けていくことに決めた。とにかく総当りで、手当たり次第にドアをノックしていくしかない。

 最初のマンションでは奥の写真を見せてまわっても、日本語がわからない不法占拠の住人達の反応はまるでなかった。不法占拠でない住人の反応も駄目だった。須田は事務的に不法占拠者の状況を手帳にメモすると、次のマンションに向かった。

 その頃、前田は朝食のために喫茶店に入っていた。ちょうど朝食セットが来ると、携帯電話が鳴った。確認すると、奥からかかってきていた番号だった。

「奥か」

「いいえ、違います」

 前田は勢いよく出たが、受話器の向こうから聞こえてきた声は奥のものではなかった。

「まあ、代理人と思ってもらえますか」

「その代理人がなんの用だ」

「あなたに少し話がありますので、そのままその店を出てください」

 そこで電話は切れた。前田は店内を見回したが、それらしき人物は見当たらなかった。前田は多少いらついたようにコーヒーを飲み干して立ち上がった。

 店を出ると、いつの間にか一人の目立たない感じの男が並んで歩いていた。

「とりあえず、あなたにやってもらいたいことがあります」

「なにを?」

「宿を変えてもらいます。滞在費も、足がつくのも、比較的心配ないところがありますから」

「それと、あんたらにとって行動が把握しやすいところか」

 前田は自嘲とも嘲りともとれるような表情を浮かべた。男はそれを意に介さず、無表情で口を開いた。

「我々は協力者ですから。連絡はしっかりとれるようにしておかないといけません」

 男は住所と簡単な地図が書かれた紙を前田に差し出した。前田は黙ってそれを受け取った。

「すぐに行ってみてください。場所を確認したら、移るのは今日中にしてもらいたいですね」

 かすかに命令調でそう言って、男は足早に立ち去った。前田は後をつけようかとも思ったが、今は相手に従っておくことにした。これから接触することも多いはずだと自分に言い聞かせていた。

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