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「もしかして見えているの。空飛んでいるみたいに見えるやつ。俯瞰だっけ。」
「まさか、そんな能力ないよ。」
「だってそうとしか考えられないよ、普通、同じピッチに立っていたらどこに人が居ないとかわからないよ。」
どうも納得いかないといった感じでいるようで。
「隠さないでよ。テレビで見る時みたいに見えているんでしょ。」
「見えているのとは違うと思うけど。サッカーのテレビゲームやっている時みたいに選手の並び方は考えている。一枚の板の上に並べていくと大体は解るよ。」
「まぁ、あれだけ作戦立てても勝てないのはやっぱり、個人能力の問題だね。」
実際そうだろう。僕なんかは一度も深見さんの突破を止められなかったのだから。
「あっ、その、あのミドルシュートは凄かったよ。」
何とも言えないフォローである。
深見さんがこれほど喋る人だとは思わなかった。いつも、教室で一人でいる彼女が誰かと話しっているところを見たことはなかった。
後ろから走ってきた車がクラクションを鳴らした。狭い道に差し掛かると、自転車で横に並んで走るわけにもいかなくなった。道の中側を走っていた深見さんは車のプレッシャーに押し出される形で、僕の前に出て、僕らは一列になった。