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なんとか奪ったボールを回しで様子を見用としてボールを失った。相手のハイプレスにたじろいでしまって全くボールが繋がらない。
「余裕だね。弱すぎ。」
相手の中盤の選手がこちらお見ながら笑っている。
とにかくボールを回し続けた。その間もシュートの雨が降り注いだがゴールキーパーの佐野が神がかったセービングを見せた。
「おい、明日になったら佐野にポジション奪われているんじゃないのか。」
外野は盛り上がっている。気楽でいいよ。
野仲が近寄ってきた。
「そろそろ解ってきたか、中学の時はお前が作戦立てていただろ。なんかいいアイデア思いついたか?」
正直この戦力ではどうしようもなかった。幸運にもまだ失点は1点で済んでいた。ゴール前までボールを運べないから、シュートは打てない。ゴール前まで攻め込めないからファールのフリーキックもチャンスにならない。
とりあえず、今考えていることだけ言ってみた。
「攻撃の後サイドの裏が空いている。キーパーのロングボールがサイドに蹴り込めば崩せる。あと、ゴール前は密集しているけれどその前が空いている、ミドルシュートが枠に行けばゴールになるかな。」
「じゃあ、ミドルシュートはお前が打てよな。」
「35mはあるぞ。」
「飛距離はだけなら十分届くだろ。40mまでは余裕だろ、”大陸間シュート”。」
恥ずかしいあだ名を発して野中はポジションに戻っていった。
”大陸間シュート”とは昔、フリーキックの練習ばかりしていたら、実践でキッカーに指名されたことに始まる。その時ゴールから延々と離れていたにもかかわらず直接狙ったら相手のミスも重なってゴールになった。奇跡のゴール以来、定着したあだ名である。
残念ながらその後にフリーキックが決まったことは一度もない。
「残り時間少ないよ。こんな相手に梃子摺るずるなー。私たちならもっと点取れるだろー。」
相手選手は苛立ちを感じ始めただろうか。実際、深見さんが決めた最初のゴール以来得点は入ってない。
シュートが来る。ゴールキーパーが危なげなくキャッチする。