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ピッチに並んだのは1年生ばかり2年生は僕と野仲。戦力は1年のゴールキーパー佐野くらい。彼は2年生の正ゴールキーパーの影で試合に出られない。
さっきまで試合に出ていなかったメンバーで構成された思いっ切りのサブチーム。
「こいつらが試合するの見たことない。」
外野の目線が痛い。
笛がなってキックオフ深見さんがいきなりドリブルで仕掛けてきた。僕が立ちはだかる、かわされる。1年生2人がかりで止めに入って、あろう事かその1年生2人が跳ね返されて転がっている。彼女は何も無かったかのように、間髪いれずシュートを放った。
試合が始まって一瞬で失点してしまった。鮮やかに決まったシュートに何の感慨も抱かないと言わんばかりに横目で流し見た。
「真面目にやってる。」
自陣に戻りながら深見さんが睨みつけてきた。鋭い視線に何も言い返せない。
「初めて組んだメンバーだもんな、最初からうまくいかないって。」
野仲がセンターサークルでボールをセットしながら言った。
僕は軽く頷いた。
「とりあえず、ゴール前固めとくな。」
野中はテキパキと指示を飛ばした。
「ゴール前センターバック2人、後ろにスイーパー1人、前にアンカー1人、ボランチ3人、サイドバック左右に1人ずつ。」
説明するとサッカーは11人で行うスポーツである。そうすると野中の指示どおりに並ぶと。
GK
SW
SB CB CB SB
AN
VO VO VO
FW
GK・・・ゴールキーパー
SW・・・スイーパー(今では使われなくなった、現代は聞かないポジション。決してギャル語の性格悪いではない。)
SB・・・サイドバック
CB・・・センターバック
AN・・・アンカー
VO・・・ボランチ
FW・・・フォワード
全員守備じゃないか。攻撃のフォワードとものすごい距離あるし。
とたんにミドルシュートが飛んでくるようになった。逆にゴール前の至近距離のシュートはなくなった。クロスボールもゴールキーパーが弾き出す。
でも攻撃は全然できない。全員守備の弊害である。