早すぎる宣告
だが、直後【最強】と呼ばれている本当の由縁を目の当たりにした。
【最強】が女生徒の前に出る。
「【限界解除】」
【最恐】と同様、空間がざわめき、有名なもう一人の結果に辺りがその結果を見守る。
そして出た結果は――、
「十五%」
「っ!? てめぇ、さっきの反応は……」
驚きで優越感から一気に目が覚めたのだろう。思わず尋ねてしまったその声色はあまりにも惨めな色が漂う。
それに応えるように【最強】が当然のように言う。
「俺以外に十%を越えている生徒がいると思わなかっただけだ」
数字でいえばたったの二つしか違わない。しかし、その数字は【最恐】の尊厳を簡単に粉々にした。
しかし、
「花王に来た甲斐があったぜ」
野獣の表情には笑みがこぼれる。
そんな二人のやりとりに、俺は意味を理解できず、たった一つの違和感だけを確認するために二人に尋ねた。
「その割には、驚いている人って制服着てない人だけだよな」
二人の結果が出て声を出して驚いた生徒も、息を飲むように見守っていた生徒の誰を見ても制服を着ていない。つまり、花王付属の学園外から来た生徒だけなのだ。
逆に制服を着ている生徒、【測定】をしてくれていた女生徒でさえ、驚いたような口ぶりはしていたものの、すでに一度経験を済ませたような反応をしていた。
俺の声に何かに気付いた様子で、花王学外から来た生徒は辺りを見渡す。あれだけざわついていたのが、自分達だけだという事実が目の前にある。
そして違う、そのざわついている姿を見て制服を着ている生徒はにやにやとどこか笑みを零している姿が目に移る。
つまるところ、それが意味している事実は――、
「出るぞ、部外者共、ウチのエースの結果が」
誰かが口にした、その直後に部外者はその意味を知る。
「十九%」
その結果に制服を着た生徒の歓喜がいっきに部屋中に響き渡った。
今度こそ驚いた様子で立ち尽くす二人の横を、結果を出した【最高】が通りすぎる。
通り過ぎざま、
「こんなんで驚いてたら、ここでは生き残れないわよ。そもそも限界解除率なんて最低限考えるべきことだし、だいたい先輩方はもっと上にいる人も多い」
興味もなさそうに、【三最】の中に自分が含まれている事が不満げに、その場から立ち去っていく。
その途中、俺の横も通り過ぎる。
「?」
たぶん、目があったと思う。そして観察された。
「この二人と一緒にいるから目を付けられた……というより少し様子をみたってとこだな」
【最高】の行為の予想はついた。
そして来る。
「ほら、次はそこの君の番だよ、さっさと前に来て、ちゃっちゃと解除してさっさと帰る」
【最恐】よりもぞんざいに扱われた俺の順番が。
「ちょっとだけまって、なぁどっちでもいいんだけど――っていないし!?」
聞きたいことを訊こうと振り返ると、二最の二人は俺の結果など興味がないように出口へと向かって歩いていた。
そして、なぜだが、【最高】だけが壁によしかかりこちらを眺めている。
一気に俺の背中に嫌な汗が噴き出す。
「なに? どうしたの?」
「いや、あの……」
そう俺は気が付いていた。この【測定】で何を計るか知った時から、この結果で俺にもたらす岐路を――。
「実は俺ごにょごにょごにゅ」
「なに? 声が聞き取れない」
「いえ、なんでも……。ただ、結果がどんなことになっても驚かないで大げさな反応をしないでくれたらうれしいかなっと」
「あー、はいはい。あの三人以上の結果が出ても驚かないから早くして」
適当に棒読みで言われたその約束を、密かに信じ、俺は立つ。
「どうぞ」
俺は密かに抱えていた悩みの年月に期待し、高らかに唱えた。
「限界解除!」
誰も俺のことなど見ていなかった。
女生徒が約束を守ってくれていたなら。
「あは、やっぱりできなかった」
「はぁあああああああああああああああああああああっ!? ちょっ、ちょっとまってできなかったって、まさか【限界解除】できないの君!?」
三人の時とは違うざわめきが空間に響き渡った。
その恥じに俺は慌てて弁解する。
「いや、仕方ないだろ! だって俺はここに【限界解除】できるようになるためにきたんだから!」
俺の悲痛の叫びが無音になった。
「へ?」
あまりの静けさに不安になって辺りを見渡した。そりゃ、俺だって驚いている。親父にそういわれてこの学園に来たっていうのに、皆当たり前のおうに【限界解除】していくものだから、その孤独ったるやいなや尋常ではなかった。
静けさの中、小さく俺以外の声が漏れる。
「【限界解除】ができない……?」
さっきまで出口に向かっていた【最恐】だった。
「笑わしてくれる」
【最強】はそのまま完全に立ち去った。
「ま、まさか!?」
預けていた壁から体を離し、心底驚いた様子で一人おかしな反応見せていたのが【最高】だった。
そんな中、残酷なお知らせが伝えられた。
「君、退学」




