測定
【最恐】に首根っこを掴まれる事、俺のクラスの測定室に連れてこられた。室と一言で片づけたものの、広さは教室の何倍もある広い空間だった。天井も数十メートルはあるだろう。そこに前のクラスだと思われる生徒が少数いて、そのあとに俺のクラスメイトと思わしく顔ぶれがすでに列を組んで並んでいる。
【測定】というからには何かしらを計るための機械なのだろう。制服を着た学生がその機械の前で記録している。
ただ何をしているのか分からない。
そんなことよりも、学生生活初体験な俺にしてみれば気になることがあった。
「そういえば制服って俺ももらえるんだよな。学生は皆着るって聞いたことがあるし、俺以外にもまだ制服じゃない人もいたな」
ちらっと隣にいる【最恐】をみた。彼もまた服装は制服ではないと思う。実際に制服を見たのは今回が初めてだけど、大多数の生徒がいるなかで統一された服装ではないから間違いない。
「あ゛? 何見てんだ」
「制服って――」
「うるせぇよっ」
「(ぇええええええええええ、質問すらダメなの!?)」
そのうち分かる事だろうから、いいかと俺はため息交じりで列に混じる。
すると、
徐々に列の生徒が減っていく。
そう間違いなく減っている。
進んでいるのではなく減っている事実に、愕然とした。
「ここまで亀裂は大きいのね」
「はっ、空いていいじゃねぇか」
その事実に【最恐】はご満悦のようでいなくなった空間を詰めていく。
「ひぃ」
悲鳴はすでに【測定】に入った生徒からのものだ。逃げるにも、すでに始まってしまったせいで逃げられなかったようだ。南無さん!
俺が合唱を心でしていると、影が割り込んできた。
「んぁ? 何横から入ってきてんだよ」
横入りをしてきたのは、【最強】だった。
「最初から並んでいた。お前たちが勘違いして詰めただけだ」
最悪にも二最が揃う。
「いなかっただろうが!」
「はぁ、少し列からずれていただけだ。それをお前たちが勘違いしただけだ」
言われてみれば、何人も列から逃げたせいで少しのずれでも、同じように逃げたように見えた。
「勘違い? 違うだろ、てめぇも一緒だろうが、雑魚がっ!」
今まで前を向いてこちらを振り向きもしなかった【最強】の、顔がこちらに初めて向いた。
言葉はない。しかし、その目は怒りを物語っている。
この瞬間、俺は思った。
「めんどくさっ、あ、声に出しちゃった」
想像していた学園生活がもう無理だと感じた瞬間、暴力を振るわれない限り、他はどうでもよくなった。
「…………」
「っ!? てめぇ、人が大人しくしてると思って、調子にのったな?」
「いや、調子には乗っていないけどさ。そもそもさ、大人しくってなんだよ! 全然大人しくない!」
「ふっ、同感だな」
「くっ、てめぇら」
「ほら見ろ! 大人しくってのは、もっとこう何事も起きる前に静まるっていうか」
話している間に、【最恐】の大人しくする期間は終わったようで、拳が目の前まで迫っていた。
それをひょいとかわし、
「ほらみろぉ」
「ぐっ」
拳を避けられた怒りと、俺の言っている事が正しい事で歯ぎしりをたてながら怒りを露わにする。
「ぶっ殺す!」
「あ、終わったみたいだ、怒ってないで一番が良いならほらっさっさと、ほら! 悪いけど、譲ってくれ」
「ああ」
【最強】に順番を譲ってもらい、【最恐】の背中を押して【測定】を促す。
「調子に乗りすぎだ」
低く唸るような声。
「喧嘩はもういいのね、じゃあ、その機械の前に立って、ってもう立ってるか、じゃあ、そこで――」
そこに【測定】をしてくれる女性徒の説明が混じる。
「【限界解除】!」
「そうそう、そのまま【限界解除】維持して計測するから」
毛が逆立ち、まるで部屋の中なのに風に仰がれているように【最恐】の周りの空間がざわめき立つ。
「はぁ、これはこれは今年の新入生はいいのが入っているって聞いていたけど、限界解除率一三%とは」
女性徒が緊張感のない声で測定結果を口にした。
一瞬の静寂の後、急激に測定室中がざわつき始めた。
「う、うそだろ、じゅ、十三パーセント!?」
「噂通りの化け物だ」
「前の学校じゃあ、教師すら恐れてたって……」
飛び交う悪き噂の実態。俺にはそれがどれだけすごい事か分からず、思わず近くにいた【最強】に尋ねようとした。が、冷静な態度から漏れ出す、その表情は間違いなく驚きのものだ。
「へっ、当然だろ。さて次はお前の番だ【最強】さんよ」
周りの様子よりも一番に崩す事の無かった人物の変化に、さっきまでの機嫌の悪さはなくなったようだ。
「はいはい、計測が終わったら、解除は外してそこずれる。で、次は速やかにってハイパーイケメン君じゃない! ほら野獣はそこ速く退くっ」
「ちょ、てめぇ、調子に――お、押すなぁあ!」
新入生一同が恐れる【最強】をぞんざいに扱い、女生徒は目の前からすぐさま退去させた。
「こ、これが最強と呼ばれる由縁か」




