学園(代表)
九煉に獣の牙を与えた男は立ち去った後、痺れが残る両の手を眺める。
「痛っ、なんだあの野郎、限界解除は使ってなかったはずだよな。くそっ、むかつくぜ」
イラつきが拳を握らせた時だった。目の前にいくつかの足が並んだ。
「ならば、その気分の悪さを私にぶつけてみますか?」
「あ゛? なんでてめぇ!」
「代表を知らないとは新入生とはいえ無知すぎます!」
「さすがは代表。やんちゃ坊主は初めから取り締まっておかないと、これからも無茶をする。だから、あえてその怒りを代表自ら受け止めようとする、いやはや、勝てませんな」
「何を言っているんですか、そんなことを代表にさせるわけにはいかないでしょう。面倒ですが、ここは私が教育をしておきましょう」
「…………手柄がほしいだけ(ぼそっ)」
「なな、何を言ってるんですか、私は代表の遣いとしてですね、代表の手を煩わせないようにと」
「…………高感度UPが狙い(ぼそ)」
「字が違うし、何を言ってるんですか!?」
「はぁ、まったく、あなたたち静かにしなさい。改めて新入生の雀強喜、先に喧嘩を仕掛けたのはあなたですね」
「ぞろぞろと金魚の糞みてぇに、だったらなんだってンだよ!」
老けたモノ言いで代表と呼ばれる少女を賞賛していた筋肉質の男が一歩前に出た。
「簡単だわい、力の差を思い知って学園生活を大人しく送ってもらうだけじゃ」
「へっ、面白い。やれるもんなら、やってみろ!」
罰が執行される直前、代表と呼ばれた少女は窓辺から問題があったとされる校門へと視線を向けていた。
「彼は?」
「ここから見る限り、怪我はないようですね」
「ここから見る限りって、一キロは先だよね」
「お二人とも限界解除率が我々の比ではないですからね」
「…………化け物二人」
「何か?」
化け物という単語に、主に状況の説明をしていた少女が振り向いた。その目は睨んでいるような冷たい視線。
「へ? わ、私では――はっ、何を人の後ろに隠れているんですか!?」
「お静かに」
「はひぃ!」
「…………怒られた(ぼそ)」
「誰の所為で――」
ギロッ!
ビシッ! と、きょうつけで静かになった。
「彼の名は?」
「新入生の元九煉です」
「そう、かっこいいわね彼」
「へ?」
「へ?」
「…………ん?(ぼそ)」
「は?」
と、粛清を終えた筋肉質の男が帰ってきた。
「代表の冗談は分かりにくのぉ」
「そうだよねぇ、冗談だよねぇ」
「焦りました」
「…………焦る理由は心に秘めておく(ぼそ)」
「黙れチビッ(ぶちっ)」
「それはそうと、終わりましたか?」
「がっはっはっは、まだまだひよっ子ですわな、おっと怪我はさせてませんですよ」
「そうですか、ですが、念のため救護室まで運んでください」
「あいよ、ですわな」
そう言うと筋肉質の男は雀強喜を軽々と肩へと乗せた。
「では、いきましょう」
歩き始めた代表一同を後ろに、主に説明をしていた少女は一人足を止め、窓目から喧嘩の仲裁をしたと思われる少年を眺める。
「……冗談でいいのかしら。どちらにしろ、今年は荒れそうね」
一人素の声色で呟いていた。




