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殺戮狩り

なんども書きますNO編集です。

編集しない限り、繋がりがどんどん広がります。

あしからず。

逃げ切ったといっていいでしょう。


予想をはるかに超えて、巻き込んだ人間が多い。そのおかげで混乱に陥りきっとあの二人も諦めるはずだ。


しかし、なぜ泊めてもらうだけの行為であの二人は怒り狂ったのだろうか疑問が浮かぶ。


でも、それももう解決――



「どこだぁ、ごらぁ!」


「安眠妨害者抹殺!」


「男の……男の純情をもて遊んだ者に死を」



頭を抱えた。


「おかしい……、敵が増えてる……」


下層から聞こえる怒号がどれも思い描いていた二人のものではない。


「こまったなぁ」


言ってしまえば寮という名のビルは、密室。外に出られない以上、いずれ逃げ道が閉ざされる。現状では上へ上へと逃げ続けているが、限界があった。


「あっても百か二百ってところか……」


騒ぎを起こした間隔は十程度、時間にして約一時間と言ったところだろう。単純計算でみても、残り十時間から二十時間。そう考えれば余裕で逃げ切れる。ようは外に出られるまで逃げればいいからだ。


「時間だけを考えればだけど……」


仮に制限時間を設けた場合の計算であって、これに相手の出方や、さらには外へ出るための経路などは全く計算に入っていない。


例えば、下層の人間が上層の人間に連絡を入れれば時間はあっという間に短縮される。


「裏目にでたかなぁ」


下に降りる事に関しては人数が増えれば増えた分だけ、目標である俺の存在が全体の標的としてはあやふやになる。


「知り合いが少ない分、俺の存在が知れ渡っていたとしても顔までは伝わってないから、まだ可能性はあるんだけどなぁ」


階段を一気に三十は駆け上った俺は、今後の流れを考えていた。


細かいことを考えながらも、やはりというべきか、当初の目的通り誰かの部屋に泊めてもらうのが一番手っ取り早い。といよりも身を隠す一発逆転の方法になっていた。泊めてもらう部屋さえ突き止められさえしなければ探しようがないからだ。


ただ、これまた当初に戻り、その相手がいないからこそのこの騒ぎなのだ。


「収穫がないわけでもないな、」


この騒ぎで分かるように、火蓮のような……というよりも女の子の部屋に泊めてもらうのはまず難しい。幼馴染でもあの怒りようだ。知り合いでもない女の子に懇願でもしようものなら、発言をする前に刺されそうだ。


そうおもいながら今度は【最恐】を思い出す。


「気性が荒いのも駄目だな」


なによりも会話にならない。


そうなると、


「男で、穏やかで、話が出来て、知り合い……話をしたことがある人で……」


該当者を考えながら、学科が違う火群を思い浮かべる。


くそ、元から火群が同じ学科だったら、こんな問題は起きなかったのに、そもそも、あいつなら俺が退園の危機に陥った段階でこうなることが予想できたはずだ。にも関わらず、俺を見放した。今頃は違う寮ですやすやと寝ているんだ。


そう思うとだんだんと腹が立ってきた。


「全部あいつが悪いんだ……」


一人、俺は文句を零しながら階段を昇っていく。この騒ぎを知らない空間にいるためには、時間が短縮されてしまうが仕方がなかった。


そして、新たな廊下へと出ようとした時、人の気配が近づいてきた。どうやら二人いるようで、部屋に戻る途中話をしているようだ。


俺はなるべく自然な態度でその廊下へと歩を進めた。そのまま二人とすれ違い、また別の階段がある場所へと歩き出す。


その意味は二つ、まずは騒ぎが起きていない階層で、俺をみた反応とどこまで騒ぎが広がっているかの確認。もちろん、自然な態度ではいるつもりだったが、相手も同じように態度を隠している可能性があるわけで、すれ違って距離があくまで緊張しっぱなしだった。


「噂通り、いいっ」


「新入生話題の子だもんっ、彼」


「やっぱり噂通りのクールっぷりなのかな」


「見た子はそう言ってたよ」


それも杞憂に終わり、二人の女の子は俺の存在も気に留めず話を続けながら何事もなくすれ違う。


そしてもう一つの理由が、階段の変更だ。


この寮自体ビルのような作りで、両端に二つと真ん中に一つの階段がある。当然、同じ階段だけを使っては居場所や行動がバレ易い。なのである程度の危険を理解していても、行動の変更はしなければいけなかった。


「そういえば、彼一個上の部屋にいるらしいよ」


「じゃあ、お姉さんとして挨拶にでもいく?」


「あっはは、それ自分が会いたいだけでしょ。普通逆じゃない?」


「あはは、バレたか」


ふと、すれ違った二人の会話でもう一人の三最の一人が思い出される。


『男』『穏やか』『話が通じる』『知り合い』


いくつか疑問が浮かぶ項目があるにはあるが、おそらく俺が出会った人物の中で該当するのは彼しかいない。


なぜなら俺が出会った人はもう他にいないからだ!


「あ、すいません」


思いついたと同時、該当している人物の確認と共に、その部屋の所在を二人に尋ねたのだった。




思った通り女の子達の話は三最の一人【最強】こと、桑折庵の事だった。

本名を今しがた知った俺が宿泊を願い出るには図々しいとも思わず、訪ねてきたのだが、困ったことに数度のノックも虚しく返答が返ってこない。


「やっぱりダメなのか」


【最強】のことを尋ねた時こんなことを言われていた。


『彼の部屋、何度も女の子が訪ねてきても返事もしないらしいよ。いるはずなんだけど』


噂通りのクール野郎なのか、寮では誰とも会わないし、会話もしないらしい。だから噂が多い。誰とも接することがない所為で、【最強】の事を知っている人間がいない。


もう一度だけノックをしても状況に変化はなかった。


中にはいるいけど、対応する気はないようだ。


「仕方ないか」


俺はため息を吐いた。そのまま、制服のポケットから常備している針金を取り出した。


部屋の鍵穴からガチャリと解除音が聞こえる。


「よし」


そうして扉を開いた。



「おかしいだろ」



椅子に腰かけ眼鏡姿で本を読んでいた【最強】の第一声はそんな言葉だった。


「ん?」


「人の部屋の鍵を開けて、勝手に入ってくるのはおかしいだろと言っている」


「いまさらでしょ、おかしいのは? ちなみにカギ明けのスキルは旅の途中で出会った盗賊に教えてもらった」


退園問題を抱えているのも、寮で追われているのも全部がおかしいことだらけなのだ。だから今さらおかしいとかどうでもいい。


「それはお前の主観で起きている事をさしているだけだろう。俺には関係ないことだ。さっさと出ていけ」


「一つお願いをしに来た」


「出ていけ」


「今晩泊めてください」


「出ていけ」


「………………」


「………………」


「ひと――」


「消えろ」


「はな――」


「失せろ」


ちょっとまって! 会話どころか話しすら聞いてくれない! 一番、そう一

番性質が悪い。


「ちくしょうっ、話ぐらい、いや、説明ぐらいさせろよ!」


「う せ ろ」


頭にきた。


だから、


「うわぁああああああああああん! 頼むよっ、一日だけ、ね。一日だけでいいからさぁっ!」


【最強】こと庵はとうとう、声すら発しなくなった。


なんなんだ、なぜ頑なに俺を泊めようとしてくれないんだ。怒った理由は不明だが、火蓮はまだわかる。【最恐】も性格から考えたら、勘違いで怒ったのは理解できる(どっちにしても泊めてはくれなかっただろうけど)。


じゃあ、どうして庵は駄目なんだ! 確固たる理由はなんなんだ!


「理由っ、理由を教えてくれ!」


それでも回答はなかった。


困った素振りも呆れた素振りもない。そこにあるのは目の前に存在している俺を完全無視する、徹底した無関心。


これだったら、名も知らない、話しすらした事の無い人の方がまだ可能性を秘めているとさえ思える。


「ぐっ」


だから諦めるしかなかった。真面に取り合うどころの話ではない。庵にとって俺は、目の前に存在すらしていないなのだ。


「分かったよ……」


俺は肩を落としわざとらしく絶望感を醸し出し憐みを誘ってみても見たが、それでも声を掛けられることはない。本当にダメだった。


今度こそ、本当に諦め扉の方へと振り向いた。


その僅かな瞬間、庵の視線がちらりと別の方へ向けられた。


それは一瞬の仕草だった。


だが、旅といういつどこで何が起きるか分からない状況に慣れている俺は、その僅かな仕草を見落とさなかった。


庵の視線の先へと顔を向ける。


その途中でも庵の動きだけは視線から外してはいない。その直後、拳を握った庵が駆けてくる。


思いっきり俺を殴ってでもそれを見せない気だ。


「うおッ、っと」


だが、あまい。火蓮よりも遅い拳は、警戒を解いていない俺にとっては避けるのに容易だった。


だから、避けられた反動で態勢を崩していた庵よりも早く、俺の視線はその先へと向けられた。


そこには壁に欠けられた写真があった。


それはよくある光景だ。


旅館では風景画や肖像が飾られている。一般の家庭にも家族の写真を飾る家がある。だからきっとこの写真もそういうことなのだろう。


誰とも接しないから、こんな当たり前の光景にうろたえるのだ。きっと他の部屋にだって同じような事をしている人なんていくらでもいるっていうのに。


「あ、もしかして」


頑なに部屋に泊めたくなかった理由はこれか。身内の写真を人に見られたくないから、人を部屋に入れない。


「別に家族の写真なんて恥ずかしい事じゃないって」


「家族じゃない」


じゃあ、誰? と聞き返しても堂々巡り、「うせろ」の一言だけを発し、返事は返ってこなくなった。


浮かび上がった疑問に改めてその写真を眺めた。


映っているのは複数の人だ。


「ん?」


ただ、なんとなくおかしいことに気が付く。


写真なのは間違いない。ただ、映っている人たちが家族構成にしてはバラつきが目立つ。父親、母親、兄弟、姉妹、の構成がない。近所の人たちも混ぜて撮ったといった方が近いだろうか。


それにしても、そうなんていうか、気が付かないうちに写真を撮られたような。視線が誰もカメラに向いてない。それにある一人の男性を中心に端の方はピンボケしている。


突如、思考よりも早く俺の背中は寒気を覚えた。


『彼の部屋、何度も女の子が訪ねてきても返事もしないらしいよ。いるはずなんだけど』


この部屋を教えてくれた女の子の言葉が思い出される。


そして、学園での小さないざこざ、この男は女の子にモテるという現象を起こしている。なのに特定の相手がいない。


それはなぜ……。


その瞬間点と点が繋がった。


「そっちの人だったのか……」


子供の頃はよく旅先で絡まれて泣いたっけな。うん、俺そういう人種苦手。


「それじゃあ、失礼しました」


「まて」


発せられた声に背筋が凍る。まずい、余計な秘密を知ってしまったがために、踏み入れてはいけない道へと誘う気だ。


「いや、ホント失礼いたしました。いやー出会った人の部屋に泊めてもらおうなんて非常識ですよね。いや、ホントどうかしていました」


「待てと言っている」


がしっ、としっかりとした鍛えられた男の人の手でつかまれた。


「ひぃっ!」


「……何を勘違いした」


とっさに掴まれた手から逃れる。


「オーケー、話し合おう。まず、俺はソッチの気はないんだ」


「ッ!? ……一から全てを教えなおしてやる」


危険危険、この人危険。一からナニを教えるって!?


これは人生初の危険信号だ。早くこの部屋から逃げなくては!


「分かった、話は聞こう! だから近づかないようお願いいたします!」


「違うっ、あの写真はただ憧れている方の写真だ」


「だよねー、そうだよねー」


「……なぜ距離は広げた?」


「か、隠す必要ないよ。きっと理解者はいるよ。だってこの学園の人口多いしね」


「そうか……言っても分からないか」


おっと、まずい。


これは傷を負わされる。


深手の傷を心に刻まれる。


庵の足が一歩前に出た。


「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!」


俺は尻を隠して部屋から飛び出した。


どんっ!


扉を開け飛び出した瞬間、ちいさな悲鳴があがった。


どうやら相変わらず、庵を訪ねてきた女の子にぶつかってしまったようだ。女の子は倒れまいと俺の制服を掴むが、人一人の体重に衣服は耐えられない。小さな亀裂音と共に押し倒してしまったようだ。


「ご、ごめん、でも今は逃げなくちゃ」


倒してしまった女の子に手を伸ばしてさっさと助けて逃げなければ――、


「みーつけた」


しかし、それどころではなくなった。


「ここにいたか」


鬼と野獣に見つかってしまったのだ。


庵の秘密を知っている間に結構な時間が経ってしまっていた。


「追いつかれた!?」


「こっちにへ来い」


「九煉、こっちに来なさい」


鬼は右の階段から昇り、野獣は左の階段から昇ってきた。その後ろにはいつの間にか兵を幾重にも増やし、隙間なく道を塞いでいる。その兵と共に徐々にその距離を詰めてきていた。


だが、まだ中央の階段が残されている。


「っち、なんの騒ぎだ」


そしてもっとも恐れる存在がすぐそばにいた。




「い、いやぁああああああああああああああああああああああああああああ!」




後ずさった俺の背中を廊下の窓がぶつかる。


「何、その悲鳴」


「きもちわりぃな」


事情を知らない二人から呆れたように似たような発言がされる。


俺は庵を指さした。


気が動転していた俺は、



「こ、この人、ゲイなんです!」



思わず、二人にも理解できるように叫んでしまった。



「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………!?」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」「………………」


恐ろしいほど沈黙した。


やがて時は動きだし、全ての視線が庵に、続いて俺の破れた衣服に向けられる。


ずさっ――。


男一同が一歩後退した、その中に【最恐】も含まれる。


火蓮は気まずそうに視線を逃がした。


彼はあまりの出来事に遅れて全てを理解した。


ブツンっ――。


荒縄が強く引きちぎられるようなブチ切れ音。


俺はもうすでにその場から逃げている。


その途中、二人の男子生徒とすれ違う。


「なんか騒がしいな」


「あれ、お前知らないの?」


「なにが、」


「ああ、なんか一人の男を巡って『痴女』と『暴漢』、あと今聴こえただけだけど『ゲイ』が出たんだって」


何を話していたのかは分からない。


だから、なぜ三人が本気を出したのか俺は知ることはなかった。



「「「【限界解除っ!】」」」



三人同時に限界を超え、新たに殺戮狩り(ハント)が幕を開けた。


こんな出来ですが、おつきあいよろしくお願いします。

では、また。

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