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寮で始まる狩り

NO編集でお送りしております。あしからず

さて、この状況を誰が予想しただろう。まぁ、入園して速攻退園が噂されたこと自体が予想できないことではあったけど、その間にこんな罠が仕掛けられていたとは思いもよらなかった。


順を追っていくと、あの後二人と別れ俺は来るであろう宣告を待つだけまった。しかし、代表会なるよくわからない集団はこなかった。おそらく退園の話がなくなって放置ということはないだろう。


何が原因でその宣告を来ないかは分からないが、来ない物は仕方がない。この学園から勝手に出ていくということもできないので、俺は一度正規ルートで入園した方達と同様寮の手続きをしにやってきた。


しかし、


「へ? 俺の部屋がない?」


管理人室の受付を前に俺は衝撃の事実を突きつけられた。


「そ、あんた今問題を抱えてる子だろう。その所為で本来与えられるはずだった部屋の手続きができないんだよ。たぶん、代表会が処置した後なんだろうね」


ちょっとまて、処置をするなら先に俺の処遇を言い渡した後だろう。俺は今絶賛放置プレイ中なんだぞ。


「じゃ、じゃあ俺はどうすれば?」


「あたしが知るかい」


受付の窓越しに投げやりにおばちゃんに言われた。


「まぁ、追放の通達もでてないんなら、ここには居ていいんだろうよ」


それを聞いて安心した。


寮は高層ビルのように高く一階はロビーやら食堂やら管理されている共同スペースだ。部屋がないだけで雨風は凌げそうだ。


「じゃあ――」


「ダメに決まってるだろう」


「まだ何もっ――」


「あたしは何のためにここにいると思ってるんだい。学生が夜な夜な出歩かないよう管理してるんだよ。ここの寮では生徒は九時以降外出禁止、一階は十時で封鎖だよ。アンタもまだこの学生なら従ってもらうよ」


馬鹿かこのババァっ!


「部屋もない、外出もできないって俺はどうするんだよ!」


「知るかいっ!」


「鬼かっ、ババァっ!」


「ばっ、ばばぁだ! このクソガキっ!」


鬼ババァの叫びと共にポーンと時計が鳴る。同時館内放送が流れた。



九時になりました。これより生徒の外出は禁止されます。各自部屋に戻ってください。繰り返します――



ババァがにやっと笑う。


「さぁてと、終了業務でもするかね」


そう言った瞬間、受付にシャッターが下ろされた。


「うそっ、うそうそ! おねえさんっ! ちょっと待って! このまま放置はあんまりだ! どうか寛大な処置を!」


シャッターが少し空き一言。


「友達にでも泊めてもらいな」


ガシャンっと勢いよく閉められた。


軽はずみな暴言は予想、ババァの怒りを買ってしまった。


「友達って……」



そんなわけで、【挌闘走学科】寮にいる俺の知り合いと言えば、


「火蓮、一晩泊めてください――ぐべっ」


開口一番蹴りが飛んできた。


「ふざけんな獣」


次には冷たい暴言が。


「ど、どっちが獣だ」


腹を押さえながら立ち上がる間に周囲はざわざわと行方を見守っている。


「あんた立場分かってんの?」


「はっ、そうかいくら月日が経っているとはいえ――」


今頃気付いたのと言わんばかりに火蓮はため息を吐いた。


「そうよ、私は女で――」


「俺が襲われかねない!」


「死ね」


「ぎゃあああああああああああああああああああっっっ!」


降りの中に猛獣、一晩で俺は肉片に変貌してしまう。駆ける獣から俺は脱兎のごとく逃げ出した。


「殺す」


ていうかしつこい!


逃げながら途中見つけた階段を一気に駆け上る。


と、その途中。


「あ゛?」


三最の一人と出くわした。


こっちは逃げている身、しかも部屋がないと来れば背に腹は代えられない。


「今晩泊めてください」


「……は? なんで俺がてめぇを泊めないと行けねぇんだよ」


殺す、殺す、殺す! と呪詛が近づいてくる。


「あれよりはマシだからです」


なぜかイラッとしたように飲んでいた缶コーヒーが握りつぶされる。


「つまり、俺の方が弱いから安全だと、【限界解除率】が低い俺の方が良いと」


「いや、別にどっちが強い弱いの話ではなく、狂暴かどうかの話で」


「ほう、つまり俺は温和でよわっちぃと」


さっきからなんなんだこの人。


「いや、だからっ、一緒にいても危険が少ない方が良いという話で」


「なめてんのかてめぇっ、俺が殺してやる!」


握りつぶされた缶コーヒーが顔の横を通過した。そして殺気がみるみるふくらんで破裂した。


「おらっぁ!」


いや、もう意味が分からないッ!


「なんでだよ!」


強烈な蹴りをしゃがむことで回避し、なぜか追跡者が二人に増えた。


逃げながらここで重大な事実を確認してみよう。現在俺の友達……もとい知り合いは多く見積もっても火蓮と【最恐】の二人。そして、その二人から逃げている。じゃあ、他に泊めてくれそうな知り合いは、いない!


「ふむ」


そうとなればできることは一つだった。


近くの部屋の扉をノック。


「はい?」


「今晩泊めてくれませんか?」


「は? っておまえっ!」


扉越しでのぞき穴から、コネ入園と噂されている俺の姿にどこか憤怒を感じる声。と次には怒りからか、扉を勢いよくあけ廊下へと出てきた。


「自分の立場分かって言って――ってあれ」


声から判断して泊めてくれそうにはない。だからすでに俺は隣の扉にアタックを仕掛けていた。


「すいません、今晩泊めて――」


「おまえっ、ノックしといて――ヘ、ブンっ」


と、そこに追跡者が追い付いてしまった。可哀そうなことに扉をあけっぱなしにでてきた最初の住人が扉を強制的に蹴られたことで閉まり、激突後伸びている。


「くそ、追いつかれたか」


一度この階の部屋は諦めるしかなさそうだ。


「なんだてめぇ、あいつは俺の獲物だ」


「は? 他人は引っ込んでなさい。あんたには関係ない事よ」


「あ゛? てめぇ、【限界解除率】が俺より高いからってなめてんじゃ――」


「しまった――」


「あ゛? ってあいつどこ行った?」


「あんたが邪魔だからよ!」


「っち、てめぇは後回しだ!」


「お互い様っ」



         ★


なめきった奴は全員ぶっ殺す。しかもあいつは朝の一件でもぶっ殺す理由は十分にある。


「上に昇ったのは確認している」


さっきの行動からして、手当たり次第『○○に泊まろう』を繰り返しているはずだ。だったら、上るごとに廊下を確認すればあいつの姿は確認できるはずだ。


考えをもとに、【最高】と鉢合わせをした階層から一つ上がり、その階の廊下へと飛び出した。


「なっ、」


「誰だ人の部屋勝手に空けたのわ!」


「だ、だれっ、ノックもしないで人の部屋開けようとしたのっ!?」


「うるせぇなっ! 誰だよ!」


「何時だと思って――」


あの野郎!


しかし、端から端から見えるはずの廊下が無差別にあけられていると扉によって遮断されている。


「あのやろうっ!」


コケにされた手前怒りで壁をぶん殴る。


が、その所為で一斉に視線が集まった。


「あ゛?」


ジロっとその集まる視線は、間違いなくイタズラの犯人だと決めつけている。冷静に考えれば、俺がいる場所からでは明らかにタイミングが違うことが分かるはずなのに、こいつらは勘違いの結束で犯人を決めつけやがった。


「お、俺じゃねぇぞ!」


なんだこれは……。学園の中じゃ俺にビビって近寄ることもできないクズどもが、妙な結束を結び視線で攻撃してきやがる。


「な、なんだその『へぇ』って信用してない目はっ!」


俺がやったことで軽蔑の目をされるのは慣れてるが、やってもいないことで罪を背負う気はねぇぞ!


「でも、どう考えたって【最恐さん】しかいないしぃ~」


「誰だ、今言った奴はっ!」


そう言った瞬間、扉越しに顔だけ出していた視線が声の方へと顔を向けた。


「あ、やべ」


「てめぇっ!」


よりにもよってその犯人は、廊下の一番端で扉の影になるようにしゃがみ込んで発言していた。しかも、まだ完全には見つかってないと思っているのか、もう一度体を隠して見せる。


だが、間違いなくそれは測定上【限界解除】ができない現在逃走中の男だった。


「コノやろうっ」


「大変よ猛獣が解き放たれたわ皆逃げて~」


声色を変えて、そんな事を言っている。おそらくは俺をダシに顔だけ出している連中を廊下に出し騒ぎにしたかったんだろう。そうすれば、道は混雑し退路がやすやすと出来上がる。だが、残念ながら、てめぇも悪い意味で有名になってるんだよ!


「こいつなら殴っても罪にならないよな」


「コネ入園なんて許されるはずない」


「代表会が動いてないなら私達で捕まえてもいいわよね」


「あの一件じゃなくても、今の騒ぎだけで十分殴るに値する」


一瞬に意識は奴へと注がれる。


「あれれ、予想外の展開……」


墓穴を掘ったついでに、てめぇが集めた雑魚を解き放ってやるよ。


「そいつはなぁっ、部屋がないから手当たり次第に部屋をぶんどろうとしてるんだよ!」


引き金は引いてやったぜ!


俺が摑まえる予定だったが、仕方ねぇ。


「ちょ、いくらそんなウソ吐いたって――あっらー、この学科血の気の多い方ばっかりなんですねぇっ!」


さぁ、狩りの始まりだ。


         ★



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