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代表会

夜が近づき、部屋の一室に電灯がともされたとは言え暗さが残る。時間にして数時間の時を経て、代表会代表、華蔵悠宇はようやく学園の長と対峙した。


そこにいるのは学園長とは思えぬ風貌で、どことなく冒険家を匂わせる服装をしている女性だった。スーツなどの礼儀或る姿とは言えず、襟のついた白いシャツだけでその雰囲気を感じろと言わんばかりである。


「あまり時間がないから用件だけお願い」


早々に本題を急かすよう長たる学園長は言葉を発した。


「はい。本日付で新入生として入園した生徒に関して報告、もしくはご確認していただきたく事柄がありご足労願いました」


元々丁寧な口ぶりが一層増して悠宇は前置きを述べる。


果たして学園の長であるこの女性と対等に話せる人間は何人いるのだろうか。


人間が【限界解除】という進化を経てたどり着いた道には、ほかの生物への影響も大きく関係している。その結果、人間は自身たちで脅威たる存在を作り上げてしまった。長い歴史の内、その脅威の一つを打ち滅ぼした存在の一人が学園長たるこの女性なのだ。


手短にと言葉を換え発言した手前、長は一旦何も言わず次の言葉を待つ。


「新入生の一人である少年が『親のコネ』で入園したことを漏らしました。これは学生代表としての枠を超えた――」


――問題、と続けようとした言葉を遮り解答はすぐにでた。


「そんな事実はないわ。学生の入園は全てにおいて私が関与している。仮にコネなんていう形でこの学園に侵入しようものなら、入園前にあなたたち学生会が気付けるはずでしょう」


「お言葉ですが、その学生の情報は確かに存在しています」


「つまり教員以上の管理職以上の人間が招き入れた?」


悠宇が静かに頷く姿を見もせず、ありえないという意味を含め長はため息を吐いた。


「その学生の名前は?」



「元九煉」



窓辺から外を眺める長はどんな表情をしているか悠宇には分からないが、はっきりと大きくため息を吐いたのだけは把握した。


その意味を知ることはないが、続けられる言葉から学生会がしなければならないことだけははっきりとする。


「その生徒は間違いなく私が許可している。この先は云わなくても分かるわよね」


「心得ました。貴重な時間をいただきありがとうございます」


それだけを言い残し立ち去ろうとした悠宇に、静かに言葉が贈られる。


「どんな方法でも学園で起きた問題は私が責任を取るのを忘れないように」


一礼と共に悠宇は部屋を出た。



長たる学園長との対面を果たし終え、自身たちの城ともいえる一室に悠宇は戻ってきた。長テーブルの一番前へと座り、待つメンバーへと報告を始める。


「それで結論は?」


話しが円滑に進むよう代表側近である少女は尋ねる。


「結果だけでいえば、噂になっている事実はない」


代弁とされる結果に、テーブルを叩き、勢いよく立ち上がったメンバーの一人である少女は云う。


「噂になっているのにその事実がないってのはおかしいですっ! そもそも本人が言ったという証言があるんですよ!」


「本人が言ったからと言ってそれが事実とは限らない(ぼそ)」


小さく呟かれた的確な言葉に、立ち上がった少女は落ち着きを取り戻したように、椅子に座りなおした。


「つまり、本人が知らないだけで入園は通例通りに行われた……」


沈黙が回答になった。


だが、問題が残るのはまた別の話。


「それでは、ここにメンバーが集まったのは、その報告とこの騒ぎを収める為にどうするか決めるため」


側近である少女が書類をいくつかテーブルに並べると各々それを手に取る。

「あわてん坊のおかげで、説明はほぼいらなくなりましたので『元九煉』の情報を参考に対処の案と担当を誰が受け持つか――」


あわてん坊の評価にしょんぼりと小さく謝罪をいれた少女だったが、資料を手に取り再び感情を再加熱する。


「ちょ、ちょっと待ってください! この子【限界解除】ができないって……、入園条件を満たしてないです!」


それに関してはメンバー全員が静かに見守っていた代表へと視線を送る。


「聞きますが、この学園の入園条件とはなんですか?」


「え……、それは……」


質問され明確に返答できない事にしどろもどろになる少女は、助けを乞うために視線を送るが誰も視線を合わせてはくれなかった。


それでも暗黙の了解とされる最低条件が満たされていないことに、納得ができるはずもない少女は反論を続けた。


「それでも……」


「言いたいことは分かりますが、【限界解除】はあくまでこの学園で自分自身を守るために必要不可欠な物。しかし、学園長がなにも指示を出されなかったということは、『彼』はその条件を果たしているということになります」


「納得はできませんね……」


事実として入園を認められなかった存在を思い浮かべ、子供の様に少女の口は尖った。


「あなたが思う不満の部分は私では答えられませんね。では学園長に――」


「いっ、いび、いぶですっ! そこまでしてもらわなくてもっ、納得しますっ、というかしました!」


「か、カミ方がすごいな……」


「なんとなく子豚ちゃんが脳裏に思い浮かびました♪」


「誰かさんの所為で話が長引いた」


「そうだな、結果的にやることは決まっている」


「自分で撒いた種は自分で解決するベシ」


「ですね」


最初から決まりきった事をなぞるかのように結論は出ている。黙っていたメンバーが口火を切ったように声を出したことで、側近の少女がまとめに入る。


「では、方法と担当を決めたいと思います」


「ふむ、ではワシが――」


「おっさんの案なんて古臭いし、つまらなそうだから僕がやる」


そのタイミングを待ってましたと言わんばかりに手を上げた少年に視線が集まった。


「あなたでは――」


側近である少女がその少年の人格を考慮し、制止を掛けようとする。


「そうか、珍しくやる気を出しているようだから、任せるとしよう」


だが、代表はその少年が稀に見る積極性に許可してしまった。


「代表っ」


「滅多にないんだ、いいじゃないか」


「側近は黙ってなよ」


「キサマっ」


「なに? ヤル?」


「……好きにしなさい、ですが万が一なことがあれば――」


「万が一? 例えば……誰かが死ぬとか」


少年が軽く言ったその言動に、一瞬で空気が変わった。


だが、その空気を換えたのは少年ではない。少年の言動に反応し、少年の奇行に制限を掛ける為に立ち上がった悠宇だった。


「許可を出したのは私だ。しかし、目に余る場合、誰であろうと容赦はしないぞ」


許されない言動。


その目には明らかな怒りが現れていた。


「ま、まぁ、無茶はしないよ」


その少年を嘲ながらも、眼鏡を掛けた青年が尋ねた。


「それで方法というのは?」


「はは、それは ナ イ シ ョ 。 でもそうだな、タイトルを付けるなら――」


ヒントとなる表題に皆が耳を傾ける。




「『新入生で一番有名な男』」



表題の発表に皆が思う。



センスはないな、と……。



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