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それぞれ
夜の色は黒ですか それとも白ですか
いやいや ひっそりと野に咲く お月見草の黄色ですよ
あらあら 父親が吸う 煙草の火の赤ではありませんか
友人たちは好き勝手に ぼくのキャンバスに色を足していくので
ぼくはパレットの絵の具をかき混ぜながら
ごちゃごちゃと色彩の仲直りを待っていた
喧々とする議論は 諤々と絵の具を混ぜ合わせ
とうとう真っ黒な塊が出来上がってしまったので
ぼくは一言 やっぱり黒ですよ、と そう宣言したのです
あら紫よ それまで無口だったきみが ぼくのパレットを覗き込む
どうしてだい ぼくは間抜けに口を開け きみの笑顔を覗き込む
だって私の好きな色だもの
そこでぼくらは ふふふと笑い
夜の色は紫だと そういうことにしたのです