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女の子なんて、こんなもの。

作者: 上阪まひる

 えーっと、佐伯さん主催の企画、『悪い奴を書く』に参加させていただきました。

 短いし、いつもと雰囲気変わっちゃいましたけど…

「南保」

 後ろから、私を呼ぶ声がした。

 だけど、私は振り向かない。


「南保、ここにいるの?」

 無視だ。私がここにいるってことは絶対にばれちゃいけないんだ……


「ここじゃないのか。うーん、どこに行ったんだろ……」

 扉が閉まる音がして、私はため息をついた。

 良かった。ここで人に見つかるなんて、それもよりによって美幸に見つかるなんて、最悪だ。


 私は汗まみれになった手で握りしめた、小さく折りたたんだ紙をもう一度開いた。


『美幸ちゃん、お願い、もう私にかかわらないでください。お願いします。マリ』

 タイプライターで打ったその文字は少しにじんでいる。

 いけないこと、だということはわかっている。


 だけど、美幸のためなんだ。


 紙を素早く折りたたんで美幸の机の中に入れると、私は泣きながら、転がるように教室を出た。


                      ☆


 次の日の朝、学校に行くと美幸ちゃんが泣いていた。

 マリはいつも通り学校を休んでいる。


 そうだよ、マリみたいな不良に、美幸ちゃんが関わったらいけないんだよ。

 罪悪感で胸がいっぱいになって、また泣きそうになったけど、ぐっとこらえた。




 マリが二年生になってから、学校に来た回数は片手で数えきれる。

 小学生を泣かしているとか、髪の毛を染めているとか、ピアスの穴をあけているとか、タバコを吸っているとかいろいろな噂がある、いわゆる不良だ。

 美幸ちゃんはいつもきちんとしてて、みんなの真ん中にいて、マリとは正反対。


 なのに、二人は仲が良い。

 美幸ちゃんと一番仲が良かったのは私なのに、マリになった。


 なんでマリなのか、分からなくて、悔しかった。

 マリなんかと一緒にいると、美幸までマリみたいになってしまうと思った。


 だから、私は悪くないんだ……




「南保、南保!」

 私はハッと我に返った。

 そこにはクラスメイトで、気の強い夕希が仁王立ちしていた。


「何してるの!?」

「あ、ごめん……」

「美幸のこと、南保は何も知らないの?」

「……うん」

 私は下を向いてそう答えた。


「そう。それじゃあ、今日の放課後に、もう一回あたしのとこに来て。あ、部活は休んで。たぶん話、長引くから」

 夕希はそれだけ言うと、どこかへ行った。



                     ☆


 放課後、私は沈んだ気分で夕希の前に立った。

 夕希は、私が打った紙を持っている。


「これ、あんたが書いたんだよね」

「ちがっ……」

 違う、と言いたかったけど、睨まれて何も言えない。


「知ってんだから。隠しても無駄。このこと、美幸に言うよ?」

「それだけは、やめて!」

 それじゃあ本末転倒だ。美幸ちゃんともっと仲良くなりたかったのに、仲が悪くなってしまう。


「馬鹿なの? こんなことして。言われたくなかったら、あたしの奴隷になって」

「夕希……」

 目の前が真っ暗になったような気分だ。


「ふふっ、あのね、マリもあたしの奴隷なの。いいこと教えてあげる、マリも同じことしようとしたんだよ? あんたと美幸を引き裂くために。次は美幸を奴隷にしたいなぁ」

「夕希って最低。本当に悪い人ねっ!」

 楽しげに言う夕希に、私はありったけの怨念を込めて言った。


「へぇ。どの口がそんなこと言うのかな? あんな方法でマリを陥れようとしたのに?」

「……」

「結局、あたしもあんたも悪い奴なんだよ、ね」

 夕希にそう言われて、私は否定することが出来なかった。

 どこが悪い奴か、と言われれば微妙になってしまいましたね…

 なんかすみません。

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― 新着の感想 ―
[一言] リアリティ-があって面白かったです。 私も女なのでなんかこういうのわかるな、なんて(笑) 自分自身も未熟なので、書いたことのない小説を見るのはとても勉強になります。 また、よくないと思っ…
[良い点] 最初に語り部で書かれている人物を悪い奴として押し出し、最後にそれを上回る人物が出て来てと、展開を裏切る感じがとても良かったです。 [気になる点] マリも奴隷になっていてという描写があるので…
2013/05/31 21:27 退会済み
管理
[良い点] ラストがとてもいいです。 【「結局、あたしもあんたも悪い奴なんだよ、ね」  夕希にそう言われて、私は否定することが出来なかった。】← 全体を通して、女の内面戦争みたいな作品ですね。 […
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