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大人の為の子供相談室

大人の為の子供相談室 敬老の日

作者: 栖坂月

タケジー:それでは『大人の為の子供相談室』第八回の始まりです。

ミカリン:ところで今更な話なんだけどさぁ。

タケジー:何です?

ミカリン:どうして九月なのに第八回なんだろ。一月が第一回だったら九月で九回、わかりやすくて良かったのに。

タケジー:ホントに今更ですね……。

ミカリン:いや、ホントにふと思っただけなんだけどね。あ、大人の都合とかなら質問なかったことにするから。

タケジー:いや、何ですかその「とっても聞いちゃいけないこと聞いちゃいました」的な物言いは。

ミカリン:だってアレでしょ。都合の悪いこと言っちゃうと老人会みたいなのに消されちゃう世の中なんでしょ?

タケジー:いやないですから。というか、せめて元老院とか、それっぽい名称使ってくださいよ。老人会って、ただの爺さん婆さんの集まりじゃないですか。

ミカリン:いやもう、最近の年寄りは怖くてねぇ。うっかり電車の中で席も譲れないご時世です。

タケジー:何ですか、それは。年上を敬うってのは昔からある日本の美徳じゃないですか。お父さんお母さんを大切にしようとか、お爺ちゃんお婆ちゃんを労わろうとか、子供の時に習いませんでしたか?

ミカリン:うん、CМでは何となく見たことある。

タケジー:何のCМですか、それ!

ミカリン:何のって、えーと……何か昭和っぽいヤツ?

タケジー:昭和って……まるで昔の格言みたいに言わないで下さいよ。

ミカリン:あ、そういえば日本昔話とか久しぶりに見たいかも。

タケジー:何の話してますか?

ミカリン:何って、年寄り怖いって話でしょ?

タケジー:……まぁいいですけどね。とりあえず丁度良いお葉書が届いているので、ご紹介させていただきます。ペンネーム『高原の山羊飼いさん』からです。『お年寄りを立てろと聞きますけど、どうして歳を取っただけで偉くなるのかわかりません。僕にもわかるように三行で説明して下さい』とのことですが。

ミカリン:三行という辺りに邪悪さを感じるね。

タケジー:いや、意味がわかりません。

ミカリン:まぁとりあえず答えておくと、こんな感じ? そんな。必要は。ない。

タケジー:いやいやいや、敬う理由を全否定しないでください!

ミカリン:そうは言うけどさー、今の年寄りのイメージってアレだよ。すぐ切れる、よく万引きする、周りやテレビに流される、みたいな感じじゃない。

タケジー:いや、さすがに極端だと思いますけど……まぁ一部にそういう方達もいるようではありますけど。

ミカリン:フフフフ、さてタケちゃん、このイメージを聞いて何か思い当たらないかね?

タケジー:は? えっと、さっぱり。

ミカリン:ダメだなぁ、タケちゃんは。これってまんま、お子様のイメージじゃない。具体的に言うと中学生くらいね。

タケジー:あぁ、まぁそう言われれば。

ミカリン:つまりよ。昔はどうだったか知らないけど、今の年寄りはガキと変わんないってことでしょ。そんなのを年齢だけで敬うなんて、へそが溶岩噴出すレベルね。

タケジー:いやだから、そんなお年寄りは極一部に過ぎないでしょうに。とはいえ、昔に比べるとお年寄りのイメージが若々しくなったというのは間違いないですね。

ミカリン:若々しく? 苦々しくじゃなくて?

タケジー:コラコラ、私が子供の頃のお年寄り――というか還暦を迎えたお爺さんお婆さんのイメージと言いますと、前傾姿勢で杖を突いて歩くみたいなイメージだっんですけど、今は六十歳くらいだと腰が曲がってる人の方が少数派ですよね。

ミカリン:そうだねぇ、やっぱり大正の頃の年寄りって、今より年寄りって感じだった印象だよね。

タケジー:誰が明治生まれですか?

ミカリン:あぁゴメン。戦前くらいだったよね。

タケジー:がっつり戦後ですよっ。東京オリンピックだってとっくに終わってましたよ!

ミカリン:トンキンオリンピックとか、私若いからわかんなーい。

タケジー:くあっ、ムカつく。

ミカリン:まぁ確かに、老け込むのが遅くなってるってのは間違いないんだろうねぇ。子供の頃なんて、二十歳越えたら結婚するんだろーなぁくらいに思ってたけど、今の自分が三十路になっても結婚してるとは思えないし。

タケジー:実際、今の四十代って若いイメージありますよね。昔なら老人一歩手前、みたいなイメージでしたけど。

ミカリン:そりゃあね、まだ自分は若いと思ってる人にとっては、電車で席を譲られるなんて屈辱以外の何ものでもないと思えるってのはわからなくもないかな。私も『早く結婚しろ』とか言われたらムカつくし。

タケジー:いや、それは関係ないんじゃ……。

ミカリン:とはいえ、よ。本当に若かったら『いえ、私若いんで大丈夫です』ってニコやかに返せると思わない?

タケジー:ど、どうでしょう。さすがに少しはイラッとくるんじゃないですか?

ミカリン:だとしても、突然切れたりはしないでしょ。本当に若かったら、何言ってんのコイツ、みたいな顔で返せば済む話じゃない。それが出来ないってことはさ、心のどこかで自覚してるってことよ。人間って、的外れな中傷では怒らないけど、図星を突かれると怒るものじゃない。

タケジー:……何といいますか、聞けば聞くほど年寄りの威厳が崩壊していくような気もしますけど。

ミカリン:というよりもさ、年寄りはいい加減に気付くべきなのよ。

タケジー:気付くって何にです?

ミカリン:そもそも、いつから年寄りが敬われていると勘違いしていた?

タケジー:え、いやいや、勘違いってどういうことですか。

ミカリン:実家の爺さん婆さんに会いに行く子供達は田舎でしか売っていないような羊羹もどきやミニモナカを食べる為なのか? 普段は空気のような扱いをしている同居の祖父母に擦り寄っていく子供達は胡散臭い昔話を聞く為だと言うのか? そうではあるまい。

タケジー:えーと、結局何が言いたいので?

ミカリン:金だよ、金。ザッツマネー。

タケジー:いやいやミカリン、それはないわー。

ミカリン:何言ってんの。タケちゃんだって親の実家に帰省した時、爺さん婆さんのへそくりを探し回ったりしたでしょ?

タケジー:しませんよっ!

ミカリン:……マジで?

タケジー:マジで。

ミカリン:ま、まぁホラ、そういうことをしてるような子供が歳を取ると、子供染みた万引きをするような年寄りになるんだぞーというありがたいお話なワケで。

タケジー:まぁ確かに、ミカリンが年寄りになってもネットで暴言吐いてそうではありますね。

ミカリン:失礼だな、キミは。私は将来笑顔の可愛いちんまりしたお婆さんになることを心に決めているし、孫達の為にもへそくりは見付からない所にしっかり隠すぞ。

タケジー:いや、隠し方じゃなくて、もっと別の何かを工夫しましょうよ。というかですね。

ミカリン:何よ?

タケジー:孫を得る為には、まず結婚して子供を産む必要があるんですけど。その辺わかってますか?

ミカリン:ぐはぁっ!

タケジー:将来万引きとかしても、私は引き取りに行きませんからね。

ミカリン:ふっ、せいぜい上手くやるさ。仮に失敗してもムショならメシが食えるしな。

タケジー:変なところで前向きにならないでください!

ミカリン:敬うなよ、ベイベー。

タケジー:将来が心配になってきましたよ、ホント。


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― 新着の感想 ―
[一言] 拝読致しました。 もう何と言いましょうか、身につまされるお話のオンパレード(昭和風味)でした。 年功序列型社会が崩壊して久しいですから、お年寄りを敬う気持ちが希薄になるのも必然ですよね。…
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