お姫様の○○育成日誌
お読み下さろうとなさっている、寛大なるあなた様、脳内変換でご対応頂ければ…(←何を?)
しんじられない!
なんなのこのじょうきょう!
誰かいないの!
誰か~!!
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しんじられない
いつもは閉じられてる扉が開いているなんて
だから
こんなチャンスをのがすなんて、こうきし…こうがくしんおうせいなわたしにできるはずないもの
だってお外よ
お・そ・と
開いている扉からお外をのぞいてみると、いろんな音やにおい、それに毛皮やおひげをさわさわなでる風をかんじて、じまんのしっぽがピンとしたの
(わたしのしっぽはおかあさまゆずりでとっても長いの)
そっとお家の中をうかがうと、おかあさまはおくのお部屋で、まりにごじまんのまっしろい毛皮のおていれをさせているみたいにだった
お空はどんよりしているけど
ほんの少しなら…
ちょっとお家のまわりをおさんぽのするだけなら…
危ないことなんてないわよね?
それにほら、なにごともけいけんって言うものね
わたしは開いている扉から、お外へとすべりでた
はじめてみたお外は、びっくりするぐらいうるさかった
それにまあるいわっかのような足で走るはこ
とまっているときはしずかなのに、走っているときはず~っとうなっているし
それにっそれにっ、レディのまえでオナラなんてっ
とってもしつれいよ!
ってレディになにいわせるのよ!
…とにかく、おかあさまとわたしがお出かけするときにはいるはこににているけど、まりがよういするものとはおおちがいね
おさんぽではたくさんの発見があったけど、お外にはこんなにたくさんの人間がいるなんて、本日いちばんのびっくりかしら
人間って大きな群れでくらす動物だったのね
だってお家にくる人間って、いつでも一匹か、おおくても三匹か四匹だったから、人間って小さな群れしかつくらないって思いこんでもむりないわ
一つかしこくなっちゃった
やっぱりけんぶんってたいせつね
わぁ、木がたくさん
はっぱが風でザワザワしてる…
あら、
鳥がいるわ
…うふふ…
ちょっとおどかしちゃおうかしら
そうっとちかづいてつかまえるの
一歩すすんでうずくまる
わたしは石、石になるの
また一歩ちかづいてじっとする
ここから先ははっていくの
気づかれないようにそっとね
お腹がよごれるけど気にしない
もう少し、そっとそうっと…
あれ?
あっ、つい後ろ足としっぽが…
……まあ良いわ
本気で狩りをするつもりなんてなかったし(←ここだいじね)
だから少しもがっかりなんてしないわ
あら、毛皮がよごれてる
おかあさまがいつもおっしゃってるわ
レディたるもの、みだしなみをおろそかにしてはいけませんって
おとなになったら、ぜったいおかあさまみたいにステキなレディになるの
ん?
なんだか大きなみちがさわがしいわね
そんなことは良いわ
みだしなみよ、みだしなみ
うん、きれいになったわね
もう一度お顔をあらって…
かんぺきね
なにかしら?
せっかくととのえた毛皮がさかだっちゃった
…おかしいわね
もしかして、これが悪いよかんって言うのかしら?
お空もくらくなってきたし、そろそろ帰ろうかな
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大きな車道の向かい側、これまた無駄に大きな黒塗りの車が停まった。
急停車した車に、後続車からブーイングのクラクションが浴びせられる。
中には怪しげな人影が…
怪人1「見た!!見た見た見た!?なんてラブリーなの!」
怪人2「見たっ!もう悶えちゃう~」
二人は窓にかじりついている。
涎を垂らさんばかりな様子と、自分達の世界へと飛翔している視線に、目撃者がいればドン引きだったろう。
怪人3「…(スモークガラスで良かった)二人共少し落ち着いて…」
すると二人はシンクロなタイミングでぐりんと3号を振り返った。
怪人1「これが落ち着いていられますかっ!」
怪人2「そうよそうよ。3号だって見たでしょう!」
怪人1「あの完璧な肢体
に優雅な身のこなし。それなのに子猫特有のにぶい所も…」
怪人2「雀を狙っていたのに、夢中になったのかお尻ふっちゃって逃げられてる~」
2号は広いシートの上でコロコロと悶えている。
怪人1「それなのに“雀なんて全然興味ありません”みたいに毛繕いなんて…」
1号にいたっては床に座り込み、クッションに顔を押し付けながらシートをバンバン叩いている。
ひとしきり騒ぐと再び窓にかじりつく二人。
“ゴツッ”と響いたイタイ音に、最早(自分の空耳?)とはチラリとも思わない3号だった。
怪人3「…2号、そんなに顔を押し付けたらガラスが割れる」
怪人1「何を言ってるの。防弾仕様なのよ?2号の頭つきぐらいで割れるものですか」
怪人2「失礼ね!私の猫達への愛をもってすれば、防弾ガラスなんて障害にもならないし」
怪人3「…(突っ込む所そこ?)とにかく少し冷静に」
「「これが冷静でいられますかっ!」」
怪人3「………」
二人のテンションに、いささか腰が引ける3号。
怪人3「とっ、とにかく、今私達が追っているのは逃亡した子達だし…」
すかさず3号の台詞を遮るように断言する2号
怪人2「あの子きっと迷子よ!私達で保護してあげないと」
怪人1「そうね。きっと迷子ね。私達が保護してあげないとね」
2号の言葉に乗っかった1号は、まるで聖母のような微笑みを浮かべた。
怪人1「保護している間は、十分可愛がってあげるから、寂しい思いなんて感じさせないわ」
怪人3「…あの子が迷子と決まった訳でもないのに、勝手に連れて行く訳には…」
そんな3号の言葉を再び遮る2号。
怪人2「絶対迷子よ!決まってる。ああ、待っててね、私のハニードロップちゃん」
(…ハニードロップ?)
怪人1「あんなに可愛らしいのよ。きっと邪な者達に誘拐されてしまうわ」
(1号、自分が拉致りたいわけね)
怪人2「そうよ。きっと弄ばれてしまうわ」
(2号、自分が玩ぶつもりね。心行くまで…)
3号は咳ばらいをすると、二人を押し止めようと再び頑張る。
怪人3「その……ハ…ハニードロップの飼い主だって探し…」
「「とにかくあの子は私達が保護するの!」」
息ピッタリな二人に、3号は反対の言葉を奥歯ですり潰した。
…とっても苦い味がした…
怪人3「…分かった。あの子用に追跡者を出す。彼らに伝える特徴は?」
すると二人は留まることなく喋りはじめる。
ただしそれは、目撃情報+自分的萌えポイント×妄想によるバックグラウンド=な内容であったため、そのまま追跡者達に伝えては、多大なる混乱を招くであろう事は想像に難くない。
しかしそこは3号も慣れたもので、枝葉をばっさり切り払い、少ないながらも個体識別できるだけの情報に纏めると、ラップトップパソコンから指示を出した。
改めてPCに残された情報に目を通しながら、3号はため息を吐いた。
(あの距離でよくここまで…)
片側3車線の向かい側にある公園である。
その距離をものともせず、毛皮の色はもちろん、瞳の色や、雌雄、体重やおよその年齢にまで及んでいる。
可愛らしい深紅の、銀色プレート付き首輪は勿論の事。
(私には見えなかった…)
我が身と二人の身体能力を比べ、そこはかとなく黄昏れる3号。
そもそも人外規格な二人と、比べる事が間違いだと気付いていない。
(…愛?私の猫達への愛が二人に劣っていると?)
いささか違う方向性に走り出した思考に気付く事なく、ぐっと拳を握り締め、明後日の方角へ向かい誓う3号。
(いいえ。私の猫達への愛は二人を超えていると、必ず証明してみせる。
まずは…)
…傍から見ればバカバカしい、しかし本人にとってはそのプライドと存在意義をかけた計画を真剣に立てはじめる3号であった。
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………え~と?
たしかこの道をこっちから来た……わよね…?
……… こんなピカピカ光るかべなんてあった?
…えっとえっと……
………このじょうきょうって……
……ま い ご ?!
あっ!つめたい
…みず?
…あ! 雨…?雨ね!
わぁ…
わたし雨にさわってるのね…
(…………)
っきゃ~
もう十分~
ぬれるのイヤー!
どっ・どこかにかくれなきゃ
あ、はこがある!
あの中ならぬれないかも…
…ふぅ……
………肉球がすりむけてる………
………みだしなみをととのえなくちゃ……
……おかあさま……
…まり…
お家に帰りたい…
…おむかえにきてよ……
…なんだかとってもつかれちゃった…
はこのそこにぺったりたれてしまったしっぽを
できるだけ体にまき付けけて
おなかにお顔をかくして
少しだけねむろう……
…ほんの少しだけ……
追加時に操作ミスで、きれいサッパリ消してしまい、魂半分飛び出るかと思いました。
あんなショックは久々でしたね。
なんとか記憶をかき集めて追加致しました。
でも“消した○○は何とやら”な心境です。