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3人だけのマスカレードまたは怪人達の座談会


決して猫虐待ではっっ!

石投げないで下さい~!





とある街のとある屋敷。





怪人1「…お気に入りが一匹もいなくなってしまったわね」




屋敷の奥まった一角を占めるその場所は、艶やかになるまで磨き上げられた桜材の寄せ木細工が美しい床があり、その所々に高価なラグやソファーを配した居心地良さそうな部屋である。




そこに3人の怪しい人影があった。





怪人2「おっかしいな~。あの子達確実に堕とせたと思ったのに」



首を捻る怪人2号に、長椅子に体を預けた3号がボソリと呟く。



怪人3「…2号はやり過ぎ」


怪人2「ええ!?あれはやり過ぎじゃないわよ。みんな可愛らしく喉を鳴らして甘えてたじゃない」



床にぺったりして舌なんか出しちゃって。

とってもラブリー(はぁと)




怪人3「…だからぐったりしてもまだ続けて、私達が止めてなければ、みんな呼吸困難を起こしてた」



怪人2「私の指に反応してるうちは平気よ。もっともっと可愛いがってあげたいじゃない?あのくらいなら大丈夫、大丈夫」



何が平気で何が大丈夫なのかはスルーした2号



怪人1・3((リアルに別世界へ連れていきたかったのかしら…))



怪人1「酷いと言えば3号だって酷いわよ」




1号は一人掛けのソファにゆったり座ると、傍らの小卓からグラスを取り上げた。


それに倣うかのように、もたれていた長椅子の袖から体を起こすと、ルビー色に輝くグラスを手に取って小首を傾げる3号。




怪人3「…私が?」





頷く1号を見て、心底意外だと言うように3号の眉がアーチを描く。



2号はクスクス笑いながら手にしたグラスを満たす。こちらはラグの上に寝そべり、両肘をついている。




怪人2「あ~、あれね」


怪人1「そう、あれ」




再び首を捻る3号。



怪人1「まぁ腰が抜けるほど愛でてあげるのは良いわ。でも…」


怪人2「そうそう、そのぐったりしている子達を高い高いってするのはねぇ」



視線を合わせて頷きあう1号と2号。


3号はその光景を思い出したのか、グラスを当てていた口元を綻ばせる。




怪人3「だってアレをしてあげると、皆必死になって私にしがみ付いてくれるし」



3号は目を細めながら続けた。




その必死さに萌える




怪人1・2「「………」」




2号は咳ばらいをすると、1号に向き直った。




怪人2「やり過ぎといえば、1号もなかなか」



怪人1「私が?」




こちらもまた、ワタシワカリマセ~ンなポーズをとる。

しかしその顔にはカナリアを召し上がったかのような表情が浮かぶ。




怪人2「黒いシャトンちゃんは良いとしても、あのトラ君には酷かったじゃない?」


怪人1「あら、どこが?私達はラグの上で愛を語り合っていただけよ」



怪人3「必死で1号から遠ざかろうとしていた」


怪人2「そうそう。それを1号ったら。なぜ連れ戻すのにラグの外へ出るまで待ってたの?」




1号は持っていたグラスを再び満たす。




怪人1「いくらそっとしてあげても、やっぱり床に爪を立てるでしょう?

ラグの上だと爪が繊維に引っかかってしまうもの」



万一あの子が怪我でもしたら大変だわ。





1号はヨロヨロと離れて行く猫の後脚をそっと手に取り、引きずり戻すのがお気に入りで、一番の被害猫は件のトラ猫であった。

床からラグの上へとゆっくり引きずり戻されては1号に玩ばれて伸びていた。



怪人2・3((猫ってプライド高いよね……?))



二人は1号の犠牲になった尾の短いトラ猫を思い、心の中でそっと黙祷を捧げた。




とにかく、と気を取り直して2号は言った。



怪人2「とにかく、猫用の出入口を造ったのは失敗ね」


怪人3「あの子達は外猫だから、外出禁止は可哀相」



怪人1「ええ、だから此処に慣れて来た頃合いを見計らって猫扉を造ったのに」



怪人2「まぁ、あの子達は特別プライドが高かったし」



ね~、と言いながら自分の脇にくっついて丸まっている三毛猫の額を撫でる。

2号にコチョコチョされた三毛猫は、目も開けず煩さそうに耳をピルピルさせている。




怪人1「この子達は残ってくれたのに。ねぇ」



膝の上には、既に1号に撫で繰り回された猫が伸びている。



怪人3「この子達もかなり意地っ張りだけど、手応えが今ひとつ…」



3号は長椅子から腕を伸ばして、ラグの上で腹を見せて万歳している猫の相手をしている。




怪人1「出て行った子達とどこが違うのかしら?」



怪人2「本当。同じ街から連れて来たのに」



怪人3「……野性?」



怪人2「野性かぁ。確かにあの子達かなりワイルドだったよね」



怪人1「そうね。最後まで進んで自分からは近寄って来なかったし」



怪人3「この子達は大きな傷や欠損があまりない…」




近くにいる猫の頭から尾の先へと指を滑らせながら3号は呟いた。




怪人2「残ったこの子達は、ある程度大きくなってから外猫になったと?」



3号は頷いた



怪人3「成獣してからかなりの期間を室内で過ごしたんじゃないかな」



怪人1「じゃあの子達は…」



怪人2「由緒正しい外猫?」



怪人3「(由緒正しい?)生まれた時からの外猫」




だから何よりも自由を望む…




しばしの間広がった沈黙を、


ひそやかな笑い声が破る。




怪人1「まあ諦めるのは早いわ」


あのシャトンとトラはきっと手に入れる。



くつり、と笑いながら1号は宣言した。



怪人2「ええ、そうね。プライドが高い子ほど一緒に遊ぶのは楽しいし」



怪人3「まずは逃げた子達を追跡する」



怪人1「ふふ…逃がさないわ」



怪人2「鬼ごっこのスタートね」




怪人3人組は立ち上がると、手にしたグラスを合わせた。



…チリン……




それは次の遊びのスタートの合図。






逃げろ猫達!


危機はすぐ後ろまで迫っている。



自由とプライドを賭けた必死の攻防が


今から始まる







たはして猫達は逃げ切る事が出来るのでしょうか?



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