表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

第5話 調査三日目

第5話 三日目の調査


霧は、昨日より薄かった。


消えたわけではない。

広がり方が変わっている。


アルバートは足を止め、器具を取り出した。

数値は安定している。異常はない。

だが、同じではない。


(三日目)


偶然を切るには足りず、結論を出すには早い。

それでも、変化は積み上がっている。


少し後ろで、ラミアが立っていた。

霧に踏み込みすぎない距離を保っている。


「……少し、重たいですね」


率直な感想だった。


「正しい感覚だ」


アルバートは短く答える。


健常者なら、すでに頭痛を訴える濃度。

だが霧は荒れていない。

むしろ、落ち着いている。


(条件は揃っている)


過去に記録された兆候。

反応が出るとすれば、ここだ。


アルバートは目を閉じ、意識を研ぎ澄ます。

風の流れ。温度差。

濃淡の揺らぎ。


――応答はない。


一拍。


「……やはり、いないか」


声は低く、独り言だった。

霧は答えない。


撤退ではない。

ただ、今日はここまでだ。


器具をしまい、森を抜ける。


日常の空気に戻る途中、ラミアが足を止めた。


「先生」


「どうした」


ラミアは湖の方を見ている。

霧ではない。

森の向こう、水面が見える方向だ。


「……さっきから、あの辺り」


言葉を探す。


「なんとなく、見える気がします」


「霧か?」


「いえ……」


首を振る。


「霧じゃないです」


アルバートは立ち止まった。


「説明できるか」


ラミアは少し考え、首を横に振った。


「できません。

 でも……残る感じがします」


残る。


霧ではなく、人のいる方角。


アルバートは、それ以上聞かなかった。


「今は、それでいい」


意味づけはしない。

判断もしない。


森を抜け、霧は背後に残る。


アルバートは最後に一度だけ振り返った。


霧は静かだ。

だが、空振り=不在ではない。


視線を湖の方へ戻す。


遠く、小さな人影が見える。

少年だ。


(接点は、あちらか)


教えない。

今は、まだ。


調査は、三日目。


湖では、別の現象が続いている。

花は、まだ——

何も語らない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ