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迷う残光は空に  作者: 悠月 蒼祈


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4

 三日後。いつの間にか出来上がっていた制服に身を包む。そういえばいつからかフィーナが着ていた気がする。

 今回の徴兵に合わせてある程度の数を事前に用意していたらしい。

 極端な体型でなければ即日……は流石に問題があるが翌日には届いていた人もいるそうだ。


 ようやく医者の許可が降り魔力封じをしての生活が始まる。

 魔力を封印しての生活は思っていた以上に辛い。

 体力がまったくなくなった、それに全身がギチギチして動きにくい。

 ラエルの適当な強化魔術の負荷で傷がついている状態だという。


 他の隊員はと言うとすぐ動けなくなるラエルを負傷兵に見立てて救助訓練。

 初陣があるとすればどうせ後方支援だ。予定していた訓練内容にさほど違いはない。

 リュクスはラエルにそう言い聞かせてくる。

 心配させないように……ではない気がする。予定と大差ない訓練内容なんだろう。


 後はペッタポッタも魔力を封じていた。

 どうも、森の集落での生活で、多少の強化魔術を使っていたらしい。

 もちろん魔力消費や負荷はラエルほどではないが。

 というかペッタポッタのものはかなり筋の良い強化魔術だったらしく、鍛錬頑張るようにと魔術教官に言われていた。

 魔術はリュクスが他人に教えられる能力に達していないので、他の教官が指導している。

 まぁ魔術に関してはどこの隊もそんな感じだ。

 他の座学とか訓練は幹部候補生……つまり新兵寄せ集め隊の隊長に指導の経験を積ませるため、隊長が行っているのだが。


 エ・イの民が大森林での生活に適応しているのは、強化魔術を無意識に使っているというのもあるのだろう。

 ペッタポッタが尊敬の眼差しで見てくるようになった。

 どうやらペッタポッタ程度の強化魔術でも封じられるとかなりきついらしい。

 無理やり動かしていたラエルの強化魔術を考えるととんでもない事だそうだ。

 ラエルの強化魔術は魔力消費や体への負荷の割に効果は微妙なので、尊敬されている意味がわからないのだが。


 更に一週間後。

 魔力の補助で無理やり動かしていたとはいえ動けてはいたのだ。

 筋力、体力が補助分育ち方が緩やかだっただけだし、動かし方は体が覚えている。

 すぐに体力がなくなる、力がないという重大な問題はあるものの、走ったりしなければ倒れることもなくなってきた。


「ラエル、次の休日はお出かけしましょう。ほら広場の時計見に行く約束でしょう?貴女の体力づくりに丁度良さそうだと思うの」


 うんうんとラエルはフィーナに頷く。

 時計は見に行きたい。ラエルは興味津々。

 なら、色々準備しないとね?と、何やらフィーナが考え込んでいる。



 翌日。


「次の休日だが、礼服を仕立てに行く」


 そんなリュクスの言葉に驚く。

 休日、お出かけ……時計……


「社交の場の護衛任務などに備えて夜会形式の訓練がある。夜会と無縁と思っているだろうが、君達でも警護等で参加することもあるのだ」


 なるほど。

 そういった大層な場所は騎士がやるものだと思っていたが。

 騎士だけでは間に合わない事もあるのだろう。


「君達も参加するのが確実なものだと成人の儀。成人の儀に参加する年齢の者は夜会の参加者として、他は護衛の訓練だな」


 ああ、成人の儀。

 高位貴族の警護は騎士が、下々の者の会場は下っ端の一般兵がやるということかな。


「普通の衛兵としてかはわからんが……そういった会にそれなりに参加する必要がある」


 遠征の祝賀会とかですねとアールがリュクスに尋ねる。

 うむとリュクスが頷く。

 そういうのもあるのか。


「まずは成人の儀で失敗しないようにという事だ。仕立て屋の予約が取れたので次の休日に」


 仕立て屋?よくわからないので首を傾げる。


「フィーナはともかく、他三人は夜会に着て行く礼服は用意できるか?」


 言われた三人、ラエル、アール、ペッタポッタは首を振る。

 用意できるわけがない。金銭面もそうだし、どういう服を着ればいいかわからない。


「フィーナ、君の場合はお祖父様が張り切って衣装を用意するだろうが……ラエルの衣装選びを頼みたい」


「わかりましたわ」


 フィーナはラエルの手を握る。


「私が必ず、似合う衣装を選んで差し上げますわ」


 フィーナの可愛らしい姿からは想像できないくらい強い力で手を握られる。


「あ、ああ。よろしく頼む。ラエルの手が潰れそうだからそれくらいにして……」


 あら、おほほとフィーナがわざとらしく笑う。


「フィーナ。君の衣装もだが、まだ入隊したての新兵だ。隊の予算に合わせた範囲でほどほどにな」


「わかっていますわ」


 そうして今日の鍛錬が始まった。



「ラエル、時計を見に行くのはその次にしましょう。まさかこんな事になるなんて……」


「仕方ないよ」


 ラエルが落ち込んでいると思ったらしく、フィーナがずっと謝ってくる。

 時計は確かに楽しみだった。でも……


「仕立て屋も楽しみ」


 フィーナに聞いた所、服を作ってくれるお店らしい。


 ラエルがそういうとフィーナがラエルの手を握る。

 フィーナが選んでくれる衣装は素晴らしいだろう。

 彼女の身の回り、持ち物から彼女の審美眼は中々の物だとラエルは思う。

 ラエルと感覚があっているという意味なので一般的にどうかは知らないが。

 まぁ問題があれば仕立て屋やリュクス等の周りが止めるだろう。


「ええ、ええ、そうね。任せて頂戴。夜会の訓練までに貴女を立派な淑女……はまだ早いわね……お嬢様にしてみせるわ」


 フィーナはリュクスにラエルの礼儀作法も見てやってくれ。と、頼んでいたのだ。

 訓練の座学にあるので復習になるだろうという名目で。


「んー?」


 フィーナの圧が強い。


「髪も特に生え際は綺麗になってきたし、肌も血色が良くなって出会った時に比べればかなり良くなったわ」


 ふむ?とフィーナを見る。

 フィーナがそういうならそうなのだろう。

 髪の毛の根本を触ってみる。うーん?ちょっと根本が太く?なってる気がする。

 多分見えない僅かな部分だと思うんだけど?


「その夜会の訓練とやらの日時はまだわからないけど……全力を尽くすわ」


「よろしくおねがいします?」


 よくわからないがフィーナがやる気を出しているので、まずは全部任せればいいだろう。

 今後の参考にしよう。

 自分が着飾るのは今ひとつ好きではないが、綺麗なものは好きだ。

 自分が身につけると見えないので好きじゃない。


「任せておきなさい」



 そして休日。

 皆で馬車に乗り仕立て屋に向かった。


 仕立て屋は貴族が利用する店だけあって、素晴らしい内装だった。

 それに見本で飾られている衣類が素晴らしい。


 買い出しの時に制服を仕立てる時に一応採寸は済んでいたが、一応採寸する事になった。

 まだまだ皆子供でつまり、育ち盛りだからね。

 この短期間で数値が大きく変わっているようなら、季節に合わせた軍服やら装備の発注計画も修正が必要になるらしい。


 仕立て屋では男性陣からの採寸だ。

 順番を待っている間に仕立て屋が出してくれたお茶を飲む。

 フィーナに作法を教わりつつだったので、ちゃんと茶を飲む作法勉強が必要だなと思った。


 男性陣はさっさと決まってしまった。なのでリュクスに先に帰るように促されている。

 ここからは地獄だぞ。と、こそこそ話をしているのが聞こえる。

 アールが納得してペッタポッタを連れて帰っていった。


 ラエルの衣装は予算がそれほどでもなかった。なので選択肢は少なかった。

 思っていたよりは早く終わった。

 少年二人が残っていた場合、うんざりした、くらいの時間だ。

 うんざりで済む程度の時間だ。軍に志願するような男の子には長い時間だろう。

 ラエルは色々な装飾品を見れて大満足だった。


 そして変わらぬ鍛錬の日々。

 ラエルの体力づくりがそう簡単に結果が出るわけもなく。

 それでも包帯の巻き方やら座学の方はそこそこ進歩はあった。

 魔力を封じられているので、回復系の魔術の練習はまだ始められないが。

 それでも、一日に使える量に限りがある魔力に頼らない回復も重要。こういった応急処置は必須なのだ。


 今の体力では座り仕事も微妙だが……まぁなんとかなるだろう。

 素行不良で使えない奴よりはマシだ。とリュクスが言っていた。

 どうやら訓練に耐えれない者、特に座学に耐えれない者が脱柵してるらしい。

 まだ、正式に軍に入隊したわけではないので、逃げ出してもきつい処罰ではないらしいが。

 それでも故郷に連絡は行くし、今後生活していくのが厳しくなるだろう。


 脱柵者の話は置いておいて。

 

 ラエルが動けないのは魔力を封じられている状態での話だ。

 いざとなれば身体強化で普通に家事をする程度は動けるし、医療班で雑用なら問題ない。

 魔力さえ使えれば活動に問題はほぼないのだ。

 今まで常時発動して生活していたし、魔力が足りないという事もないだろう。

 ……何かしらの強化への対策を的にされた場合を考えると、常時身体強化している状態が問題になる。

 それに、ラエルの使う我流の身体強化も体に良くないし、使うなと言われているので最後の手段だ。

 それでも任務で必要なら使うしかないだろうが。

 

「ラエル、今度の休みこそお出かけしましょう。そうね……時計を見に行くついでに博物館に行きましょう」


 考え込んでいるとフィーナが提案してくる。博物館?


「ラエルの好み的に宝石店や美術館の方が良さそうだけど、博物館は中央広場にあるのよ。だからまずはね?」


 どうやら仕立て屋で興味津々に色々見ていたラエルを思っての提案らしい。

 ラエルの様子などお構いなしに衣装について討論していた気がするのだが。

 見られていたのかぁとラエルは思う。

 内装に茶器や衣装、装飾品を見てそわそわしていた自覚がある。少し恥ずかしい。

 ラエル、落ち着く。頑張る。


「ラエルの眼に止まる物があるかはわからないけど……ああ、そうだわ。勇者の剣とかもあるし」


「勇者の剣?」


 ラエルが尋ねる。何故武器?


「そうね、十年、もうちょっと前ね……ラエルが生まれるちょっと前かしら……?」


 ラエルは十二歳ですよ。フィーナ。

 十二と訴えかけておく。


「勇者が魔王を倒した時に使っていた剣が展示されているのよ。残念ながらその激闘で折れてしまっているけど、綺麗な石が装飾されているの」


 なるほど。それはちょっと気になります。


「ラエルは仕立て屋で宝石を熱心に見てたでしょ?興味あるかと思って」


「うん、見たい」


 石は見たい。宝石キラキラ。ラエル好きです。

 ラエルはフィーナが薦めてくるので博物館に興味が出てきた。


「じゃあ決まりね」


 次の休日が楽しみだ。

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