表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷う残光は空に  作者: 悠月 蒼祈


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/19

19

 村に来て数日。

 畑仕事したり、駐屯地での任務を教わったり。色々あった。

 畑仕事は弱い新兵の体力作りに良い。

 まあ、ラエル筆頭に新兵が若いのが問題だと思う。

 でも、今後、邪神の手先、つまり多くの魔王の侵攻が本格化した時の事を考えると、仕方ないね。

 手遅れになる前に、今からラエルのような新兵を鍛えるための方法を、模索していかねばならないのだ。

 邪神の思惑を阻止する為に『私』は存在する。ラエルは気合入ってます。


 馬ともますます仲良くなった。でゅん、いい子。

 後は、騎士の人がラエルに良く絡んでくる。訓練一緒にしたりお菓子もらったり色々。

 とりあえず、安眠妨害が得意な、にわとりは許されないと思う。

 にわとりの朝の爆音での攻撃以外は事件や問題はない。そうそう獣の襲撃があってたまるか。

 騎士様見回りありがとう。


 それからフィーナの親戚の貴族も同じくこの村に来ていた。

 一緒に来た隊の一つに所属していたらしい。全く気が付かなかった。

 謝罪されたので受け入れておく。貴族なら怪しい孤児に対してそんなもんだろう。

 フィーナは可愛い。怪しい孤児に警戒するのは当然だと伝えておく。


「軍を辞めたらうちで雇ってやる」


 フィーナの友達だから世話してやっても良いと言う話だ。ありがたいねぇ。

 親戚貴族はラエルを心配してくれているらしい。驚き。

 フィーナの友達と認めてもらえたらしい。素直に喜ぶ。


 フィーナの御付きの皆さん、正確にはこの親戚貴族の御付きの皆さんが、随分ラエルを評価してくれているそうだ。

 まだまだだが、立派に育て上げてみせる。

 と御付きの皆さんが気合十分。という話をこの親戚貴族から聞いた。

 親戚貴族は、それ程偉くない。なので、ラエルのような平民の使用人を探さないといけないという。

 御付きの皆さんは偉いお祖父様が送り込んだ貴族の人達なので、このまま雇えないそうな。

 送り込んだ、つまり、厳密には雇い主はお祖父様らしいし、彼女らが撤収した後が大変ですね。

 というお話。

 親戚貴族が彼女らを雇うには、もっと偉くならないと駄目らしい。

 親戚貴族さんは出世頑張ってもらって。


 あんな風に絡んできておいて、ラエルを信用していいのか?的な話をして、雇うというのは話半分で聞いておく。


 ラエルはちゃんとわかってるから、親戚貴族が雇ってくれるなら。

 ちゃんと信頼できる主である限り、きっちり仕事はする。

 まぁ今はまだ、ラエルは使用人の仕事等出来る水準ではないので断るが。


 そんな事を考えつつ、ラエルを雇うのは最後の手段くらいで。と言ってその話はおしまい。



 そして今日は休みなのだ。

 ふんふんとリュクス以外の隊の四人で村を練り歩く。


 今更だがここは聞いていた通り小さい村……ではなくかなり大きい。

 王都の食卓を支える農村らしいが、王都の食卓を支えているのだ。大きいです。

 小さい商店も幾つかあるし、普通に大きい村だと思う。


 農地を守る為だと思うけど、駐屯地もあるし。

 だから農作物の買付やら安全にできるので仕入れの商人も多い。

 駐屯地が有って兵も多いし、安全で商機も多い。だから変わった商品を売っている商人もいる。

 上手く行けば兵、隊長格ならリュクス達の様に貴族の可能性が高い。

 そこを足がかりに……という事だろう。

 王都で営業するより、ここで営業した方が弱小商店には機会があるらしい。

 後は、商人達にとっては王都での前哨戦といった感じ。

 ここで王都の流行とか情報を探るらしい。

 ラエル達も一ヶ月程度の滞在だし、兵の交代はそこそこあるのだ。

 ラエルの居た村には行商人が気がついた頃に来てる程度だったから、やっぱりこの村は大きい。


 商人に呼び止められ飴を貰う。ラエルはお金持ってません。

 美味しかったら大人の人に勧めてくれよな!と口にねじ込まれる。

 ラエルにおねだりしろという事らしい。誰に?

 フィーナがよかったわね。と、にこにこしている。

 飴は質感がじゃらじゃらしている。ざらざらではなく、じゃらじゃら。

 勧めたいとは思えないなぁと思いながら、飴、ありあと。と、手を振っておく。

 不良在庫を押し付けられたね。きっとそう。

 飴はお腹の中へさっさと処分する為に、噛み砕いておいた。ふんす。


 しばらく村を歩いて商人達にうざ絡みをする。

 アールやフィーナが熱心に商品を見ているが、お金のないラエルは見ているだけなので、うざ絡みだ。

 ペッタポッタもラエルと一緒に、圧倒的に買う気はない気配を出してる勢だ。

 アールは市場調査で、フィーナも良い小物があれば?とか言ってた。

 二人は良い物があれば買うはず。

 しかし、未だ財布の口は固く閉ざされ、開かれず。


「誰か捕まえてくれ!」


 男の叫びが聞こえる。

 叫びの方を見ると堂々とした足取りで、人を寄せ付けず、進むにわとり。

 鋭い眼光でこちらを睨んでいる。こわい。

 王者の風格。あれは魔王では?

 ラエルの視線に、にわとりが、クククと喉を鳴らしている。

 あの、喉鳴らし。奴が、そう。本能的に理解する。


「あれは、葬送曲を唄い魔を統べる、にわとり……では?」


 フィーナに尋ねる。


「ラエル……何よ。それは」


 フィーナが頭を抱えそうになっている。

 アールも疑問でいっぱいのお顔。

 ペッタポッタは気にせず、にわとりへ駆け出している。流石だね。

 動物のことはペッタポッタに丸投げしておけば何とかなる。


「朝、こう。えーっと、悪夢へと誘う声を?」


 あの黄色の嘴、するどい。

 多くの者をやってる。叫び声だけではなかったか。

 と、にわとりの姿に慄く。

 にわとりはペッタポッタの接近に気がついて、大地を蹴る。衝撃でざっと、地面が抉れる。

 その、くわっとした爪も恐ろしい。全身凶器だね。危ない。


「いや、だから。その、そうではなくて。ええっと、そうね、朝、鶏が煩いと言いたいのね?どうしてそんな説明の仕方をしているの」


 フィーナが戸惑っている。

 もぅん?


「淑女たるもの、お洒落な、詩的な?表現を身につけるべき。皆言ってたよ?」


 フィーナの御付きの皆さんが言ってた。

 お茶会に誘われたら、素敵なお返事書けるようになりましょう。

 そのうち、お茶会のお誘いのお手紙の練習があるので、そういう表現の勉強しておいてくださいねって。

 後、敵に対しては、こう、お洒落に背後から刺す様な言い回しが良いとか何とか。

 最近、ご本を読むようになって覚えた表現です。えへん。

 勉強頑張ってます。


「そういう事は違うと思うの……にわとり相手というのも……」


 違うの?とフィーナに首を傾げてみる。


「ああ……もしかして。最近、ラエルが変な事言ってるのって、貴族的言い回し?の練習のつもりかー」


 アールも頭を抱えている。

 そんなこんなをしている間に、勇者ペッタポッタはにわとりを無事捕獲して引き渡していた。

 脱走兵は処断、つまり脱走にわとりも処断。

 これは、世界が平和になってしまうな!わはは。大勝利!完!

 この英雄譚、語り継がねばなるまい……と、何処かで語り部ラエルが決意している。


「どうしたの皆」


 勇者の凱旋に敬礼。

 ペッタポッタは凄い。あの魔王にわとりをも、あっさり……勇者!勇者!


「いや、ラエル最近なんか変な事言ってるじゃん。物騒な感じの。貴族的表現?の練習らしくってさ」


 えっ!?と言った感じでペッタポッタがラエルを見る。

 そ、そうだったのか……と何か考え込みだした。


「ラエル、とにかく。とにかく、貴女のそれは違うわ。後でお勉強しましょう」


 あい。

 何か不穏な空気に大人しく返事をする。

 違うのかー


 返事をしながら連行されて行く、にわとりに親の仇を見る目を向けておく。


「ラエル、にわとり嫌いなの?」


 その視線に気がついたペッタポッタに尋ねられた。

 うーん?と悩む。


 おいしい、にわとり、良い、にわとり。

 安眠妨害は悪。うん。許すな。

 卵もおいしい。卵大人しい。最高。

 これは好きなのでは?嘘だぁ……


「朝、起こされてお怒りなのよ」


「ああ、それで」


 フィーナの説明に納得するペッタポッタ。

 確かに朝、部屋まで声聞こえるねと苦笑い。

 結構、ここは駐屯地からは遠い。鶏舎魔王城は多分この辺。

 脱走してそれほど逃げ回っていたとは思えない。堂々と歩いていたし。

 ゆっくりしてたし、捕まえられんか。と思ったが、逃げに入ったら俊足だった。

 魔王が逃げるな。

 付かれず離れず。上手い動きをする。と、分析する。


 それよりも。なんで駐屯地まで声が聞こえるんだ。この村の七不思議ですな。

 やはり魔王の不思議な能力では?


「まあ、あれがこの村の朝の時計塔の鐘みたいなものだからね」


 ふぉーん……鐘が昼と夜しかならない理由らしい。

 雨だと駐屯地までは聞こえないらしいけど。と、ペッタポッタが言う。

 雨の日はお外での仕事があまりできないので、まぁそんなに困らないらしい。

 それに長年の生活で村の皆は起きる時間慣れてるから、にわとりに起こされなくても大丈夫。

 にわとり要らないのでは?養鶏には必要だね。はい。


 我慢しようねと言われた。はーい……しぶしぶ返事をしておく。

 そんな感じで休みは過ぎていった。


 夕食時にリュクスに休みの間の事を報告する。

 鶏舎魔王城から出陣し、村を襲っていた魔王にわとりが怖かった。以上。


 お風呂に入ってお休み前。フィーナとお話する。


「ラエル、彼女たちが言っていた詩的な表現というのはね?ああいう、ちょっと怖い表現でもないし、鶏に対して使うものではないのよ」


 ああ、でも養鶏が盛んな場所の方なら、鶏を褒める必要があるのかしら?とフィーナが少し悩み始めた。

 もん?と首を傾げる。


「そうね、まずは興味のあるもので練習しましょう。何が良いかしら」


 博物館で見た木の器とか?

 あの光沢……いい仕事してますね?

 ええっと、磨いただけで琥珀を纏わせたようなツヤ。

 虎を思わせる美しい木目……こんな感じかな?

 虎も琥珀も分かんにゃいけど。

 歴史の証人として今この時代まで損傷なく残っている、えっと何だろう。

 むむむ……


 そんな感じでラエルが悩んでいると、フィーナが口を開く。


「そうね、他に思いつかないわ。リュクス隊長について。これをお題にしましょう」


 はぁあ?リュクスたいちょうぅ?

 なんでぇ?

 あれをどう褒めろと?


「ラエルが興味ある美しいモノと言えば隊長でしょう」


 うんうんと頷くフィーナ。

 いやいや、確かに?よぉく、よーく、考えればリュクスは美しい。美しいと思うよ。

 でもさ、あれは女を手玉に取るクソ野郎だよ。きっとそう。

 褒める価値ある?ないよね?


 ぶんぶん首を振る。興味はない。興味ないです。


「……ラエル?どうしたの」


「たらし、おんなのてき」


 イヤイヤする。イヤイヤ。

 褒めて調子に乗らせてはいけない。


「……はい?ラエル、どうしたの?何時もなら、隊長の事、凄い熱量で褒めるじゃない」


 そんな事はない。そんな事は。

 そんな記憶はない。記録魔道具を確かめるまでもない。


「隊長になにかされたの?」

 

 何もされてはいない。

 女の敵だとこう、びびっび。お告げを感じる。


「隊長に限って、ラエルに何かするわけないわよね。あれだけ心配しているし」


 隊の皆の事ちゃんと面倒見てくれる。と、その点には同意しておく。


「ラエル、本当にどうしたの?そういえば、最近あまり隊長の話しないわよね。貴女」


 ラエルは正常です。調整だってちゃんと。


「だから、正常です」


 そう告げようとして止まる。

 本当に正常?調整は成功している?

 調整する機能に不具合が生じ失敗した可能性は?

 本当に調整出来ていると言えるのか?


 おかしくはない。ラエルの機能は正常だ。

 フィーナに教えて安心させないと。でも、口が開かない。声が出せない。

 どうして?

 だって余分なモノは……どうしたっけ?


「ラエル!」


 フィーナが叫ぶ声が遠くで聞こえる……

ストックなくなったので一旦ここで更新止めます。

登場人物のシミュレートが上手く行かないのでしばらくは更新有りません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ