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迷う残光は空に  作者: 悠月 蒼祈


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18/19

18


「じゃあ、戦後処理だ。矢の回収をする」


 あい。と返事をする。

 ふらふらと門から出て矢を拾う。

 門の横に箱があるのでここに矢を入れるんだぞ。と、門番の人に言われたので返事をする。


 ちなみに毛むくじゃらは台車に乗せられて、ごろろろ。門に吸い込まれていった。

 矢を拾い集める。折れている奴、鏃がない奴。綺麗な奴。細かく分別して箱に入れる。

 浄化やら色々魔術を使って、周囲の毛むくじゃらの汚れを落としている人もいる。

 激闘で地面が抉れたりしているので、そういう整地も行っている。

 柵があれば戦闘は大した事はなかったけど処理は大変でした。


 騎士の皆さんが遠くに見える。

 毛むくじゃらが出たから偵察しているらしい。

 騎士が?と思ったが毛むくじゃらは結構強敵らしい。柵に弱いだけで。

 こう、新兵がとろとろ矢を回収しているので、ならば騎士がという事らしい。

 なるほど?


 朝、畑作業をやっていたリュクス隊はお疲れ。

 なので刈り取った草の件は他の隊に引き継いで今日の畑仕事は終了。

 いつの間にか手放していた草刈り鎌も見つかってよかった。

 草刈り鎌持ってたらフィーナ抱っこできないし、その辺だろう。

 畑仕事するより騎士は斥候の真似事する方がいいわよね。と何となく思った。

 お昼のお食事の時間です。



 お食事をしながら報告会。


「ラエル、体は大丈夫か?」


 さっき合流した時点で聞くべきだった、今更だが。

 と言われ大丈夫。と返事をしておく。

 パンはかたい。

 かたい時は汁につけると良いと聞いたので試すが何とも言えない味。

 かたいほうがまし。むぐむぐ食べる。


 柵登るとはなぁとアールが唸っている。


「判断は悪くない。フィーナを抱える前に、敵。とでも一声掛けて欲しかったが」


 抱える前なら叫べましたな。反省。

 悔しさでパンを噛み砕く力を生み出す。


「強化魔術も悪くなかった。反動の治療も問題なさそうだが、医者に後で見てもらいなさい。フィーナ連れて行くように」


 リュクスがフィーナに指示を出す。医者どんな人かな。


「その後は、見張り台から射撃していたのか?」


 はい。とフィーナが答える。


「ラエルは消耗が激しく、暫くは回復に専念していました」


 うむ、という感じで力強く頷いておく。

 見張り台のお二人には助けられました。と、報告しておく。


「そうだな、弓を教えてくれた件も礼を述べねばな」


 うんうんと頷く。


「ラエル、そう言えば一発だけ射撃していたわよね」


 目をそらす。そ、そうだったかなー

 お疲れですので記憶混濁してるのです。

 おやおや、まったく記憶に……と目を合わせないようにする。


「ラエル、正確に報告するように」


 あう、と、パンを口に入れる。

 お食事中です。もごもご。


 リュクスが額に手を当てる。


「その態度を改めるように言っただろう。君は処罰されないと学習しないのか?」


 ごめんなさい。と頭を垂れる。

 ふぅ~とリュクスが息を吐く。


「こちらの話をしておこう」


 ラエルは後で話を聞くからな。と強めに言われた。


「三人で門まで走って逃げて。ペッタポッタを報告にやって。私達二人は他の者が逃げるのを助けるべく、柵の上から援護射撃だな」


 なるほど。柵の上にも上がれるようになってはいる。


「門が閉まったら後はアール、合流したペッタポッタに任せて後はまぁ……」


 射撃訓練大会ですね。


「私は弓が得意ではないし、練習も考えたが。それでも今回の条件なら命中率は悪くはないからな」


 そうなんだ。リュクスは何でも出来そうだけど。

 エヴと手合わせしてるの見たけど、剣も今ひとつだったし。

 魔術もそれほど?だし。

 意外とどれもパッとしませんな。ハッハ。

 ラエル……?と不思議そうな視線を感じ、もごもご。パンかたいです。


「ちょっとしか見れませんでしたけど、隊長、動きは綺麗でしたけどね……そこそこの腕なのが不思議なくらいですよ」


「弓の上手いペッタポッタに褒められるのは嬉しいな」


 やっぱりペッタポッタ君はお上手なんですね。

 森の民、流石!と納得する。


「アールも初めてにしては上手かった」


 皆、弓が得意なのか?ふーむ。前衛居なくない?

 つまり、ラエルが前衛?頑張ります。


「で、ラエルの話をして欲しいんだが」


 匙で汁を掬っていたが戻す。


「ええっと、回復したので?一本だけこう、矢をぴゅ~っと」


 放物線を手で示す。放物線を。

 なんで山の方に飛んでいったんだろうねぇ……


「あの見張り台からほぼ真下の獣に撃ったんだよな」


 うんうんと頷く。

 リュクスが再び額に手を当てている。


「弓の練習は、もう少ししてからと思ったが。始めた方が良いのかも知れないな」


 弓の練習かーたのしみ。


「リュクス隊長、誤魔化されないでください。ラエルちゃんとご説明しないと駄目ですよ」


 フィーナに怒られたのでしぶしぶ話す。しぶしぶ。


「高い所が怖くて、こう、狙いが?」


 手で放物線を指し示す。

 高いの駄目かーと皆が悩んでいる。


「とにかくラエルには後で大切な話がある。医者に調べてもらったら部屋まで来るように」


 昼の予定は取り止めで。全員休息するようにと言われた。

 フィーナに連れられ医者の所に向かう。


「ラエル、改めてありがとうね。お陰で無事だったわ」


 そんな事はない。フィーナなら普通に走って逃げ切れただろう。

 無駄に抱っこして見張り台まで運んだだけだ。

 ラエルが酷い消耗をする必要はなかった。


「私、多分、怖くて動けなかったわ。ラエルに抱っこされて。お陰で敵倒さなきゃってなったの」


 確かにあの牙は中々でしたな、お嬢様。あれこそは猛者の証。犠牲者数しれず。

 と、いう雰囲気を出して重々しく頷いておく。お目々可愛かった。

 皆、すぐ避難して犠牲者居なくてよかった。


 フィーナはラエルが守らないと。


 と、決意を新たにする。



 医者に見てもらって何もなし!よし!

 との事なのでお礼を言ってラエルは部屋に戻る。医者は優しそうだった。

 滞在中はたくさんお世話になりそうなのでちゃんとお礼を言っておく。

 フィーナお嬢様は散歩するらしい。一人で大丈夫?

 いつの間にかアールとペッタポッタが居た。なので、三人でお散歩することになっていた。

 ラエルは元気です。とアールとペッタポッタに報告して、足取り重く部屋に戻る。

 足取り重く元気じゃないと思う。お休みした方が良いのでは?

 

 エヴと部屋の前で出会う。イヤイヤ。

 軽く敬礼してさささと部屋に入ってしまう。


 いつも通り、リュクスにお茶を振る舞われる。

 今日もお茶は美味しい。


「ラエル、色々言いたい事はあるが」


 リュクスは額に手を当てている。


 もうちょっと落ち着いて行動しようね、態度改めようね。

 指示聞こうね的なお話だった。いつもの。

 こう、内なる反骨心が……はい。頑張って直します。


 額から手を離し、リュクスは茶を飲む。


「無事で良かった。しかし、結果が良くても統率の為には処罰が必要なのが組織というものだ。気をつけなさい」


 そうして、お話が終わって。


「ラエル、この後はどうする?」


 皆お散歩、所在、わからず……困った。

 一人遊び?得意な遊びだ。何して遊ぶ?水汲み?


「私は馬の世話に行くが」


「おぉおー……」


 馬、馬。武勇伝を語って聞かせたい。


「君も来るか?」


 うんうん頷く。そうと決まれば早速。



 リュクスと手を繋いで厩舎へ向かう。はやく。はやく。はやく。

 馬の歌を歌いながら厩舎へ向かう。物騒じゃないやつね。


「うまーげんきー?」


 厩舎に入って隊の馬に挨拶する。元気か!

 櫛をリュクスから受け取る。櫛の使い方はわかる。


「私は水を汲んでくるから。気をつけて」


 はーい。と返事をして送り出す。

 ここの井戸水が馬は好きなんだって。

 魔術で出さないの?と、聞いたらそう言われたのだ。

 まぁ魔力使うから井戸があるなら井戸です。

 水汲みするって言ったら時間がかかると断られた。ぐぬぬ。

 早く大きくなって水汲んであげるからね。


「うま」


 呼ぶと喜んでいる。かわいい。


「あのね、今日は毛むくじゃらと戦ったの」


 今日の激闘をお話しながら櫛で梳いてやる。

 頭をラエルの高さまで下げてくれているのでやりやすい。

 何か他の馬もそれで?それで?と言っている分きがする。


「で、フィーナがしゅばば格好良かった」


 フィーナは知ってるよね?あの、お嬢様だよ?ここに来る時、御者やってたでしょ。

 知らない、覚えてないとかありえない。

 と、馬を威圧しておく。


「毛むくじゃらはねー牙がこう。あれは多くのモノを屠ってきた剛の者。きっとそう」


「あれー?ラエルちゃんじゃん」


 幻聴が聞こえる。振り向きざまに拳を叩き込みたくなる衝動を抑える。

 エヴ様、こんにちゃ。と挨拶する。挨拶大、事。


「何か難しい言葉、屠ったとか物騒なお話聞こえてきたんだけど。何の話をしてるの?馬、に」


 馬に話をしてはいけないのか?

 馬はラエルの話を楽しんでくれているのに。

 馬達はそうだそうだと言っている。


「毛むくじゃら。つわもの」


 こう、と体当たりをして見せる。

 馬が怖いねー毛むくじゃらと話している。多分。


「毛むくじゃらって。ああ、何か猪の類が出たんだって?ラエルちゃんも居たの?」


 エヴも何してたかは知らんが。激闘の報告を聞いたんだろう。

 うんと頷いておく。


「うま」


 呼んで櫛を入れる。馬がささくれた心を癒やしてくれる。


「怖かったでしょ」


「毛むくじゃらは粒らなお目々可愛い。ラエルは怖くない」


 そ、そう。かわいいか?と首をひねっている。お前より可愛いお目々だったわ。

 怖かったのは高い所です。毛むくじゃらは可愛いお目々でした。

 お前は何をしに来たんださっさと馬の世話をしてやれ。

 シッシとやりそうになって堪える。ぐぬぬぬぬ。

 し、静まれ、ラエルの手!

 馬と目が合う。馬はかわいい。よしよし。


「うま、あのね。草刈った。乾燥させて。うまのご飯になるって」


 美味しいと良いねと櫛を梳かす。

 馬がこう、懐いて可愛い感じ。あの子達みたい。

 あの子、達……?


 視界がぼやける。目から水がまた出てくる。

 あの子達、何かわからない。

 わかるのは、毛むくじゃら、まるやき。おいしい。

 こう、くるくる焼く。じゅわじゅわおいしい。


 心配そうに馬がラエルに顔をもっと近づけてくる。


「うま、大丈夫です。ラエルは元気です。ちょっと寂しく?なっただけです」


 今日は駄目だ。ラエル、いったいどうしたんだろう。


「うま、ありあと。だいじょ、ぶ」


 上手く喋れない。

 うーと言いそうになってぐっと堪える。


「ラエル、どうした」


 リュクスが戻ってきたらしい。

 ラエルとエヴを見たリュクスに、エヴが俺じゃないと首を振っている。


「まるやき、おいしいぃ」


「うん、そうだな。でも丸焼きにはしないはずだったと思う」


 リュクスが汲んできた水を馬にあげる。

 馬、お水ですよ。お水、お水ざっぷっぷー

 目から水が出てぎゅう~ってなるのを堪える。


 ん?


 えっ、まるやき……食べれないの?リュクスの話にそんなと落ち込む。


「突然、お前ら何の話だよ」


「くるくる回して焼く。知らないの?」


 こう、くるくると棒を回す仕草をラエルは見せてやった。

 エヴはラエルより年寄で、貴族なのに。

 まるやきも知らないのか。

 はーまったく。


「あの、馬に毛むくじゃらの事教えてた」


 リュクスに馬とお話してた事を説明する。

 エヴがいや、聞きたいのはそこじゃないと突っ込んでくる。

 エヴは話盗み聞きしてたもんね。


「あ、ああ。それで、それで。丸焼きね」


 そう言ってリュクスが考え込んでいる。


「寂しくなった」


 そういうと、そうかとリュクスが頭を撫でてきた。

 邪な気配がするので払い除けておく。えいえい。

 触るな触るな。女の子に気安く触っては駄目だと。

 心のフィーナも言っている。


「猪は処理したりしないとダメだから、今日は食べられないと思うけどな」


 処理するって調理担当が張り切っていた。とエヴは説明している。


「えっ」


 エヴから明かされる衝撃の事実。今日は食べれない。食べれない。

 ま、まるやき……

 そだ、そだ、にわとりでもいいのでは?

 朝、安眠妨げ、死の鳴き声を放つあのにわとり。

 名案では?


「泣き止んだと思ったら、何か変な事考えているだろう」


 リュクスに突っ込みを入れられ焦る。

 何も。変なことは、何も。


 リュクスに櫛を渡す。ラエルが届かない所を丁寧に梳く。


「馬、気持ちいい?」


 馬に尋ねるとうむ。と返事をしたような気がする。


「その子、馬って名前じゃないでしょ。リュクス、この子の名前は?」


 馬は馬でしょ。馬もそう言っている。ね。

 うんうん。

 と馬を見ているとリュクスが話し始める。


「デュンだな。最初はもっと長い名前だったが、誰も呼ばないし、こいつも覚えられなかったとか何とか言われたな」


 だから長い名前の略称のデュンで落ち着いた。と前任者から聞いたとリュクスは言う。

 え、馬?問い詰める視線を投げかける。

 馬は目を逸らす。馬!お前!名前もっと早く知りたかった!

 馬ぁ、ラエルと君の仲はそんなものだったのかぁ!

 うん、会って数日ですね。はい。

 最初に教えてくれてもいいのに。


「うまはでゅん?」


 頷いた気がする。馬との細かい意思疎通は難しい。

 懐いているし、大雑把な命令は聞く。

 なので、今のところ問題はないが。


 世話を終えて馬、でゅん、元気でねーと厩舎を後にする。

 でゅん、でゅん、でゅん。と馬の名前を連呼してみる。

 覚えた。多分。覚えているかは明日のラエルに期待しましょう。


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