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迷う残光は空に  作者: 悠月 蒼祈


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 それから数日後。

 文字はめきめき。成長著しい。

 あの腹立たしい文字の絵本も読めるようになったら、我慢できるようになった。

 それでも。

 文字も凝ってもっとお洒落な絵本に出来ないのかという怒りはある。

 そんなわけで、多少読めるようになった。

 だから、興味のない本も嫌々色々挑戦してどんどん成長していってます。

 最近は冒険譚がお気に入りです。

 鋼鉄の鎧をも引き裂く漆黒の爪、それを華麗に受け流し……

 と内容を思い出し想像する。

 ラエルもあんな感じで活躍できるように訓練頑張りましょう。


 訓練も特に変化なく。誘拐犯はさっさと檻に入れ。

 それくらい。

 後は訓練に、武術が増えた。

 まずは正しい拳の扱い方から。えいえいと拳を突き出す。

 これで誘拐犯に襲われても大丈夫。

 と思ったけど、誘拐犯は一応貴族なので。上官なので。

 ラエルよりも強い。困った。まだ勝てない……

 とりあえず、手当の訓練で練習台に立候補してきたので、包帯で絞めておいた。

 自分の隊の面倒みろよ。シッシ。と追い払う。


 それくらい。特に変わったことはない。


 と思ったら何か演習があるらしい。

 隊で近くの村の駐屯地までお出かけして、補給物資輸送するらしい。

 そこで畑仕事とか色々任務をして、空になった補給物資の入れ物を持って帰る。

 大枠はそんな感じ。時期によっては祭りの準備から運営までやらされたり色々。

 今回は祭りの時期じゃないから祭りはない。

 まぁ基本それ以外がわかるのは現地に行ってからだ。

 隊長は知っているらしいけど。

 情報収集は許されているので、任務の情報集めをしておくようにと言われた。

 行く村の周辺情報とかかな?調べた方が良いことは。何やるのかな?


 で、合同訓練やってた隊と他に数隊で村に行く。

 つまりエヴの隊と一緒。気が重い。外で誘拐は洒落にならない。

 フィーナの側を離れないようにしないと。

 王都は防備が万全だけど、お外は危ないしフィーナを守らなければ。頑張ろう。

 御付きの者は連れていけないらしいので皆さんに


「フィーナお嬢様はお守りします」


 と宣言しておいた。よし。

 お世話はラエルがした方が良いのかな?少しは出来るようになったし。

 御付きの皆さんにも世話の腕を褒められるようになってきたのだ。

 御髪の手入れ位はラエルが出来るようになっておいた方が良い。

 フィーナお嬢様の美しい髪を維持しないと。

 お世話の練習も頑張っているのです。



 リュクスから呼び出しを食らう。

 ラエルはいい子です。許してください。

 とりあえず平伏する。


「何をやっているんだ君は」


 ラエルは椅子に座らされる。

 リュクスは何時ものように茶器を用意して、ラエルに茶を振る舞う。

 お茶は美味しい。


「演習のことだが」


 てっきり誘拐犯への不敬罪の件かと……違うのなら黙っておこう。

 お話をお聞きしますといった表情をしておく。


 リュクスは額に手を当てる。


「そのお茶目な……お茶目な……態度止めようね。私やエヴだから許されていると思いなさい」


 怒られた。やはり不敬罪の話だった!

 リュクスも自分のお茶を用意する。


「とにかく、もっと他の隊が増えるし、駐屯している軍人も居るんだ。その態度を改めておきなさい」


 反省。反省しています。


「本題に入るが」


 本題じゃなかったの?

 リュクスは目を閉じ息を吐く。

 額から手を離し、机をとんとんする。とんとん。心地よい拍子が眠気を誘う。

 運動してお疲れです。眠い。


「本題に入るが、君の体力を考えると、私は演習はまだ早いと思う。エヴ隊の二人もだ」


 ラエルと一緒に良く休憩している二人の事だね。

 まぁ向こうは近づいてこないけど。同じく途中で倒れてる仲間って話です。

 名前は覚えていない。そろそろフィーナに聞いておかないと。

 本人に聞くのは流石に気まずい。それくらいはわかる。


 体力に関してはそうですね。としか言いようがない。

 馬車で移動するにしてもこれほど虚弱だとやっぱり心配だ。


「村での作業に慣れてもらわないと困る。そういう体力不足の者も連れて行って、訓練するのが慣例なのだ」


 なるほど。と頷く。

 そこで篩にかけるわけですね。生き残れるかな?

 ラエルちょっと心配。


「ちゃんとわかっているか?適当に返事をしているだろう」


 そんな事はない。ちゃんと理解しているし、聞いている。

 その顔は絶対に聞いていないだろう……

 と、リュクスはとんとん止めて再び額に手を当てて呟いている。

 聞いてます。聞いてます。ちゃんとその呟きも聞いてます。


「とにかく言いたいのは、身体強化魔術を使っていいから。ちゃんと演習に参加しなさい」


 あ、身体強化魔術使って良いんですね?

 それなら大丈夫そう。よし。と気合を入れる。

 生き残ってみせます!と顔を輝かせておく。


「まぁ、君は身体強化魔術は上手いので心配はしてない。……他が心配だが。他が、心配だが!」


 と珍しく声を荒げるリュクス。

 ラエルはいい子です。心配はありませんよ。


「本当に頼むから。大人しく、殊勝な態度。それを演習中だけでも心がけて……」


 はい。と返事をしておく。


「エヴにも君で遊ばないように言っておく。仲良くするように」


 えっ!?仲良く?仲良く……?大丈夫?


 ……みたいな反応して……とかぼそぼそリュクスが呟いている。

 上手く聞き取れない。


「あのなぁ……隊は違えど、一応上官だぞ。それから君は平民、あいつは貴族」


 わかってる。わかっています。そんな事はわかっていますよ。

 お茶を飲む。美味しい。このお茶はこの前食べた果物を煎じたやつかな?


 エヴが絡んでこなければラエルは絡まない。

 絡んでくるから相手をしているだけです。


「他にも絡んでくる奴がいるかもしれない。残念ながら、隠れて平民を雑に扱う貴族が上手く紛れているのだ。軍など大半が平民だと言うのに……まったく」


 なるほど……怖い。


「とにかく、大人しくして演習ちゃんとして。生きて、懲罰も受けず帰ってくるように。騎士も同行するのだ。無礼の無いように」


 はい。と返事をしておく。大丈夫。頑張る。

 あ、騎士様も居るんですね?安心だ。

 騎士は厳しい試験突破しているだけあって格が違うからね。

 王都に来た時の事を思い出して頷いておく。


「それから、演習まで短いが、身体強化魔術の練習をしておきなさい。訓練中も使って構わない。演習に備えた訓練をしなさい。まぁ明日指示は出す」


 はーい。と返事をしておく。


「返事だけは良いよな……」


 リュクスは頭を抱えてしまった。

 何で?


「とにかく明日からエヴへの態度は改めて」


 はいと返事をしておく。


「エヴのような奴が他の隊にいても我慢すること」


 わかった?復唱!と言われたので復唱する。


「うん、頑張ろうね」


 あい。

 リュクスの圧で変な返事をしてしまった。

 ぐったりしたリュクスと別れ図書室へ向かう。




 図書室ではリュクス隊の皆で遠征に行く場所について調べている。

 ラエルも合流して調べる。図書室まで移動してきて、眠気もマシになってきた。


 小さい村で、王都から近く比較的安全らしい。

 ラエルの居た村とどっちが大きいだろうか。

 多分、王都から近いから小さい(大きい)村だと思う。

 王都に来る途中に寄った村も、王都に一番近い村は大きかった。

 そもそも駐屯地もある村なんだからそれなりに大きいと思う。

 いや、小さいという話は王都と比較してかも知れない。全部小さくなるね。

 村の大きさはまあどうでもいいか。王都より小さいでいいや。


 むーんと地図を見る。

 ……村に隣接して森がある?

 ペッタポッタに聞いてみる。

 森!森!とラエルは言う。


「森、あるねぇ」


「ペッタポッタ、森、獣、村襲う?」


……うーん、地図じゃ何も書いてないからどういう森かわからないけど。と前置きして。


「ちゃんと手入れしないと危険な獣や魔物が住み着いたりで襲う話は聞くね。うちは奥の方だから普通に徘徊してて、こういう森とはちょっと違うけど」


 にゃるほどーと反応して、ペッタポッタにお礼を言って考える。

 うーん、邪神が動き出して魔物が活発になっているなら影響があるのかも。

 演習、もしかして魔物退治あるんじゃないの?ヒト、他国より魔物と戦うのがこの国の軍の役目でしょ。

 うーん、駐屯している軍の役目だろうけど、いざという時の事は考えた方がいいのでは?

 アールと目が合う。ラエル達のやり取りを聞いて、どうやら同じ事を考えていたらしい。


「魔物が出るのかもなぁ……出番はないと思うけど、前線?柵くらいはあると思うけど」


 そう言って腕を組んで考え込むアール。


「それを突破されないとは言い切れないし。柵の中で俺達は作業だと思うが、万一、手強い奴が暴れた場合、俺達も身を守る為に動く必要があるのかも……」


 王都の近くでそんなぁ、まさかぁ。なんて言う奴は居ない。

 王都だって壁の外は魔物が跋扈しているのだ。

 ラエルの居た村だってこう、入ってきた魔物と死闘を繰り広げてたし。大人が。

 ラエル?死闘を避けつつ水汲みです。水汲みに休みはないのです。命の水は必要。


 王都に来るまでだって、役人の護衛は結構しっかりしていた。

 あれは軍でも騎士って奴だ。武闘派貴族の精鋭達だ。

 こう、ラエル達みたいにのびのび、ままごと訓練じゃなくて。

 ずっと武術や戦略、厳しく心技体を鍛え続けてきた精鋭だ。


 そんな精鋭が護衛してても結構戦闘あったし、王都までは長く厳しい道のりだった。

 魔物避けもあったし。魔物はあんまり来てなかったのかな?

 でも見るからに騎士な護衛がいて襲ってきてる。って事は結構やばい奴らだったのでは?

 まあ見てないんだけど。音が聞こえていただけで。

 うん。ラエルは何もしていない。


 ラエルは騎士の皆さんが何か肩車?とかしてくれたくらい?

 高いの怖かった。

 櫓で哨戒任務とかあったらどうしよう。村の駐屯地なら櫓くらいはあるかな。

 櫓、訓練場にもあるのだ。まだ登ったことはない。怖い。


 とりあえず、周辺の生物。獣、魔物を調べておこうってなった。

 特別危ないのは居ないかな?普通に危ないのは居るけど。

 まぁ新人が演習で行くような場所だ。大丈夫でしょう。

 うーん……大丈夫……大丈夫……

 いや、流石に新米隊長の貴族の子息が何人も参加してるのに、こんな新人訓練で危険あったら結構問題じゃない?

 幾ら軍の厳しい訓練でもそんな危険なんて。エヴは不幸な事故にあえば良いと思う。

 いやいや、ラエルが思うより外は危険なのかも知れない。どっちだろう。



 時間も時間なので適当に夕飯を取って解散。

 フィーナと自室へ帰る。


「そういえばラエル、呼び出しは何だったの?いつもの面談?」


 演習頑張ってね的な話だったと答える。


「ああ、ラエル大丈夫なの?演習、流石に王都の外だし」


「強化魔術使っていいって」


「そう、それなら……何とかなるのかしら?あまり無理しちゃダメよ」


 うんうんと頷く。がんばります。


「それとエヴ隊長の事、怒られた」


 あー……とフィーナが苦笑いする。


「ラエル、仲良いものね。確かに隊長と馴れ馴れしすぎるとダメよ?」


 フィーナ?誰が誰と仲が良いと?

 ぶんぶん首を振る。フィーナ騙されるな。


「仲良くない。エヴ隊長は敵。やつの所業を知るべき」


 フィーナに今まであった事を丁寧に伝える。

 あらあらと苦笑していたフィーナが徐々に恐ろしい形相になっていく。


「あのエーヴレイス様が。まさか、そんな。失礼な殿方とは知りませんでしたわ……」


 エヴ?何?首を傾げているとフィーナが解説してくれた。


「あの方はエーヴレイス様ですよ。ラエルが呼んでいるのは愛称です。愛称を呼べるくらい仲良くなったのでは?」


 は、初めて知った。知らない知らない。

 仲良くなってない。敵です。誘拐犯です。危険人物です。


「ラエル、最初に自己紹介していたでしょう」


 記憶にない……記録にもない……あっ。


「あの、エヴ様の隊の人の名前わかんない……」


 ああ、とよろめくフィーナ。


「ええ、そう。興味がなかったのね。確認すべきだったわね。教えるわ。ちゃんと魔道具に記録しておきなさい」


 持っていると聞いたわ。と言われ頷く。

 えーっとまずはシッシュのフエオハ・リッコ。フーと呼べばいいらしい。

 兎はフー。兎はフー……

 次に茶髪のジェス。黒髪のガジャ。覚えた。記録魔道具さんが。


「ラエルはエーヴレイス様の様な方が好みかと……」


「……は!?」


「違うの?」


 違う違う。イヤイヤ。

 首をブンブン振る。目が回ってしんどい。


「エーヴレイス様もお美しい方でしょう?ラエルの好みかと。あれほど打ち解けていたし……」


「うつ、くしい?」


 エヴが?いやぁ、まあ美形に一般的には区分されると思うけど。好みじゃないなぁ。

 顔も今ひとつ覚えていない程度だし。

 ラエルはアレを美形と認めたくないのですけど?


 好みじゃない。好みじゃないとフィーナに伝えておく。

 打ち解けてもいない。ラエルの警戒心は最大。いつも臨戦態勢です。


「つつく、いたい。きらい……」


 あれ、結構痛いのだ。力加減間違ってると思う。

 思い出したら頬が痛いような気がする。ぐぅ。

 頬をさする。

 ああ……フィーナが額を押さえる。


「それは女の子に対して失礼な態度ですわね。ラエル、次に突かれたら相談して頂戴。抗議します」


 フィーナ、かっこいい!と崇めておく。

 フィーナは可愛い。かっこいい。素敵。お祭りで巫女とかやらない?

 巫女フィーナ様、民にサニア神の威光を知らしめよう。


 それから抗議は憲兵に突き出そう。今すぐ連絡しよう。それが良いと思います。

 現行犯じゃないからダメかも。うん。我慢します……


「とにかく、ラエルも過剰反応してはダメよ。男の子はそういうので喜ぶ人もいるの」


 なるほど。面白がってたわけですね?

 腹が立ってきた。


「だから、エーヴレイス様はラエルの事を。その、気に入っているように感じたのだけど。違うのかしら」


 それはない。絶対にない。

 あれは牽制だろう。何に対してかはわからないけど。

 不快感とかなんかあるし。孤児が気に入らないとかそういうやつ。

 やるか、やられるかにそのうち発展しそうな感じ。油断しない。勝つ。


「そ、そう。ラエル、気持ちはわかったけど落ち着いて。嫌だろうけど我慢すべきよ。ラエルが不興を買って万が一なんて、嫌よ私」


 フィーナ……ぎゅっと抱きつく。

 頑張る。フィーナが心配、応援してくれるならきっと我慢できる。頑張る。


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