表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷う残光は空に  作者: 悠月 蒼祈


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/19

13


 流れに身を任せ目を瞑る。

 やっぱり、何か最近おかしい。感情が妙に揺れている。

 これでは駄目だ。正常ではない。

 感情を希薄にしなければならない。でもなくしてはならない。

 完全な――にも多少の揺らぎは必要だと。そういう風に出来ている。

 だから美しいと感じたモノに『私』の『心』を動かされるのは仕方がない事だ。

 だが。

 この異常な高揚は不具合だ。調整する必要がある。

 捨てないと。捨てないと。何を?そんなモノは決まっている。

 空っぽなのに?

 でも捨てれば正常になる。正しくなる。

 はやくすてないと。


 『彼』への想いは必要ない。想いは願いにする。

 そうやって無駄な想いは消費すればいい。

 だから『私』は願う。『彼』が幸せになるようにと。

 『私』はその願いで―を――から――へと変質する。

 ごめんなさい。貴方との契約、約束は守れない。

 だって、―は――に変質するから。払える対価がない。

 ――を貴方が受け取ってくれれば。それで対価になるなら。いいのだけど。

 ――は貴方のモノ。でも、『私』は貴方を選びたくはない。




 頭が重い。酷い夢を見た。

 くわっと目を見開く。

 ……暗い。

 周囲を見回す。ラエルの寝台だ。

 フィーナは居ない。

 寝台から抜け出て灯りをつける。

 時間は……まだ消灯時間じゃない。フィーナはまだ帰ってきていないだけだろう。

 お腹は空いているような?でも食堂の料理食べれるかと言われると。うーん……

 厠に行ってから考えよう。


 うーん……少なめで注文すれば食べれる量は出してくれる。

 でもなぁ……食事という気分じゃない。

 どうしたものか。頭が若干重い。食堂に行くのもちょっと。

 視界に机。その上に何か置いてあるのに気がつく。


『ラエルへ 食べるといい』


 ラエルが読みやすい簡潔な手紙?の横に携帯食料が置いてあった。飲み物状の栄養剤も置いてある。

 うん、これなら食べれるかな……?

 もそもそと焼き菓子みたいな、でも栄養価の高い携帯食料を食べる。

 アールとかは不味いと嫌がっていたが、ラエルは嫌がるほどではない。

 少量で栄養価が高い。素晴らしいと思う。

 くびくびと栄養剤を飲む。新しい味だ。今までで一番不味い。

 瓶に書かれた栄養剤の情報を読む。

 ほとんど読めない。何となく味の名前が書いてる所が、今までに見たことがない文字列だ。

 何となく嫌な予感がして選んだ事がない奴が、こんな文字だった気がする。

 この味絶対に選ばない決意をする。後でフィーナに聞いておこう。

 文字の形と配置を必死に記憶しておく。


 汗で気持ち悪いのでお風呂に入って寝よう。

 フィーナが帰ってきたのでお風呂に入る話をしてお風呂に入る。

 ラエルの顔色が悪いと心配していた。

 話し合って、御付きの者が風呂に入れてくれるという方向で話がついた。

 ありがとう御付きの皆さん。今日もお世話になります。

 じゃぶじゃぶ洗われておやすみなさい。



 朝起きて、フィーナに昨日飲んだ栄養剤の味について聞く。

 それ、一杯在庫あるのよねぇ……と困ったように話していた。

 在庫考えて生産すべきでは?と聞いたら、何故か他の味を作る時に出来てしまうらしい。

 在庫処分に協力してあげたラエルを褒めてほしい。


 栄養剤について聞かれたので横にあった手紙をフィーナに渡す。

 昨日の事はえーっと、記録魔道具を確認する。

 長い話になるので体調悪くなった!と簡単に説明しておいた。


「リュクス隊長にお礼をしなくてはね」


 ラエルはリュクスと会っていた話はしていないのだが?

 お手紙の筆跡でわかったらしい。

 筆跡、なるほど。確かにラエルの字とは違うもんね。


 隊長、貴族、お礼……どうすればいいんだろう?


「リュクス隊長なら、ラエルがありがとうって伝えれば大丈夫よ」


 よくわからないが、孤児からのお礼なんて期待できないし、そんなもんか。


「大丈夫そうね。訓練無理しちゃ駄目よ」


 うんうんと頷いておく。



 今日は訓練からだ。

 リュクスが見学しておきなさい。と言ってきたので大人しく見学する。

 お茶を飲んで寝てしまっただけなのに体調が悪く見えたらしい。

 あ、お礼は言っておきました。

 栄養剤は他の味にしてほしかったと抗議したいけど、在庫押し付けられただけでしょう。


 文字の勉強をしつつ見学する。

 勉強しているとエヴが絡んできてうっとおしい。


「ラエルは孤児院でどういう生活だったの」


 孤児院での生活?あんまり記憶にない。

 話すことなんてないと思うけど?


「食べてたものとかさ」


「朝はパンとスープ。夜はパンと適当な主菜とスープ」


 前に皆に言った通りの説明を繰り返しておく。


「え?」


 いや、変わった食べ物の話はしてないのに何で不思議そうに?


「一日の予定とかは?」


「朝起きて水汲み、ご飯、水汲み、ご飯、水汲み、寝る。後は礼拝堂でお祈り」


 井戸まで遠いので水を必要量汲むにも結構時間がかかる。

 ラエルは小さいから、それほど水を持てない。どうしても回数が増える。

 台所にある水瓶が満杯じゃないと。

 たまーに神職が巡回に来て説法するので、その時は礼拝堂でお祈りだ。


「孤児院ってこう、遊んだりする時間ないの?王都の神殿経営のやつは慰問に行ったことあるけど、遊ぶ時間とかあったよ?」


 エヴが引きつりながら聞いてくる。

 ラエルは水汲みの時間と食事の時間しか記憶にない。

 遊ぶ?遊ぶ……遊ぶって何するんだろう?

 水汲みが終わればあったのかな?遊ぶ?何をして?

 他の子がラエルに石を投げてたのが遊ぶだったのかな?あれは狩猟とか村の防衛訓練か。

 水汲みでのろのろのラエル相手じゃ上達しないと思うけど。

 というか勉強しないと。


「ラエルちゃーん、そこで黙ると怖いんだけど」


 ラエルは怖くない。何で?

 エヴを見て首を傾げる。


「話戻すけど、そのずっと水汲みしてて、ご飯、それで足りるの?」


「お祈りすれば足りるよ?礼拝堂でこう」


 サニア神へのお祈りすれば何とかなる。

 太陽神は生命も司っているので何とかかんとか。

 後は魔力を変換してうんたらかんたら。

 生命力やら体力やら色々複合してなんやかんや。

 ラエルの無理やり使ってた強化魔術はそういうのも含まれてるとかなんとか。

 食事が効率いいだけで、そういう魔術が上手く使えれば、あまり食事はいらないって医者が言ってた。

 ラエルは完全に絶食しているわけじゃない。なので寝れば魔力は回復するし。

 小さい体だからいい加減な強化魔術でも何とかなったって。

 絶食してたら多分餓死してたとは言われた。孤児院で食事が出てよかったね。

 野草をこっそり調理して食べたりしてたし、出なくても大丈夫だったのかな?うーん。


「いや、祈ってもお腹は膨れないでしょ」


 お腹は膨れなくても魔力で何とかなる。

 サニア神に紐づけして魔術詠唱すれば十分な効果になる。とかなんとかじゃなかったっけ。

 確か、どこかで?食料無しで何日も生き延びた人がそんな事やってたような?

 うーん、ラエルはあれを無意識でやっていたのか?なるほど。

 ラエルは知らない。多分『私』が詳しい。『私』は感覚派というやつ?なので説明できない。以上。

 勉強進まないのでそろそろ黙ってくれないかな?

 魔術士にでも聞けばいいんじゃないの?リュクスとか詳しいと思うけど?

 リュクスは魔術得意じゃないって言ってたっけ?あれ?じゃあ、詳しくないか。

 医者に聞けば良いと思うよ。割と事例あるってラエルを見てくれた軍医が言ってたし。

 と思うが面倒なので黙っておく。とはいえだ。


「エヴ様もちゃんとサニア様にお祈りすべき」


 大事な事なのでこれだけは言っておく。

 この世界に存在する事を許してほしいならお祈りは義務ですよ。

 まぁ祈らなくても祈らない自分が苦しむだけだ。

 サニア神は救ってはくれない。ヒトは自分で進むのだ。

 神託も多少はあるけど、負荷がかかりすぎて発狂するし、サニア神は干渉しにくいのだ。

 神託も大体ふわ~っとした内容だし。三百年後雨が降るとか。で?っていう。

 まぁ三百年後、河が大氾濫して、邪神がその隙に信仰を得て大変な事になったんですけどね!

 だからヒトにわかりやすく直接絡んでくるのは邪神だけだ。

 ラエルはサニア神へ祈っておく。


「えーっと、ラエルって意外とサニア神信者なわけ?」


 サニア神は世界の管理をしている。敬意を払うのは当然では?

 サニア神が管理しないと誰も住めなくなっちゃうし。

 私達が信仰を捧げてサニア神が元気になる。世界が安定する。

 確か聖人なんちゃらが、こういう神託を聞いて残していた程度の、知られている話だと思うのだけど?

 と、思わず熱くなってしまった。いつの間にか立ち上がって熱弁してたらしい。慌てて座る。


「……どこでその聖人の話知ったの?」


 どこで?どこで?

 いや、だって『私』はだって……あれ?

 ラエルは知らない話だ。拙い。話しちゃ駄目なやつだ。


 孤児院の礼拝堂であった説法はもうちょっと緩い話しかなかった。

 うおー!太陽神!お日様!作物育つ!みんな元気!わー!みたいな話。

 化け物陽の光に焼かれ浄化されろ!とかそんなの。

 不死者じゃあるまいし。ラエルは陽の光を浴びて元気です。


 どうしようこれ。とりあえずこいつ殴る?口封じする?


「わかんにゃい」


 焦って噛んだ。疲れているのかも。


「まぁお子様の記憶じゃ何処で聞いたかわかんにゃいか……」


 納得してくれたらしいけど腹が立つので殴ってもいいかな。

 貴族、隊長、上官。殴るのダメ。

 反抗的な態度、反省してます。


「誕生日のお祝いとかは?」


 誕生日とは?あれか?

 何とか思い出して引っ張り上げる。


「お前は、今日からそうだな、あまり幼すぎるのも問題か。十二歳。十二歳だ!軍に行け!戸籍作った。ヨシ!」


 孤児院の大人の真似をしてみる。

 中々似ているのでは?


「おーい、それ拙いやつぅ……」


 エヴが頭を抱えだした。忙しいね大変だね。

 勉強の邪魔する暇ないね。あっち行ってね。隊の皆がエヴ様の有り難い指示を待っているよ。


 拙いって何が?戸籍?

 大体孤児なんて里親に引き取られる時か、就職先が決まった時に戸籍作るし普通では?

 孤児は戸籍なんて無い方が逆に管理しやすいからね。いちいち報告しなくていいし。

 孤児院は無関係ですってやつ。王都は違うの?うん?


「ラエルちゃんはお幾つなの」


 十二と胸を張る。十二になったのです。

 よくわかんないけど。十二回誕生日過ぎたのです。

 あれ、女の子に年齢聞くの駄目じゃなかったっけ。

 エヴ失礼なやつ。フィーナに報告しなきゃ。


「いやいや、今の話で十二は胡散臭いでしょ!?」


 どこが?ヨシって大人……あの役人も確認したよ?

 役人に聞くべき。確実。お子様の適当な話、信じない方が良いよ。

 シッシ。エヴを追い払う動作をする。自分の隊を見なさい。隊長なんだから。


 十二って言われたから十二なんでしょ。知らないよ。

 月日の経過なんて興味ないし。

 ああ、でも邪神が動き活発になってきたから気にしないと駄目かも。

 刻限過ぎて手遅れとか大変だ。


「あー、うん。君に言っても仕方がない」


 エヴは諦めたように訓練に戻っていった。

 エヴの相手疲れる……勉強の邪魔だし。

 全然進んでない。どうしよう。

 ただでさえ文字に興味がないから進むの遅いのに。

 ヒトって大変ですね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ