表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷う残光は空に  作者: 悠月 蒼祈


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/19

12

「ほ、ほら、お食事しよう。食べ終わったらリュクスの所に行こうよ」


 ……


「リュクスの様子を二人で見に行こう。面白そうだし」


 許可が出たので料理を口に入れる。

 リュクスの様子……気にはなる。休日何やってるか観察はしたい。

 優雅にお茶とかしてるのかな。

 私服も気になる。かっこいいの着てるのかな。

 休日は用事がある時しか見たことがないので、制服のお姿しか見たことない。

 制服は制服で良いものです。でも私服で優雅にしてるとこ見たい。


 ……


「おもひろほう?」


 思わず聞き返す。

 こいつとリュクスは旧知の仲?って奴っぽかったし、野郎にとって面白い事なんてないだろう。

 何が面白そうなんだ?


「食べながら喋るの行儀悪いよ?」


 食べるのに集中する。ラエルは一人前、ちゃんと食べれるようになったのだ。

 少し冷めた料理を食べ進める。


「俺が一緒ならリュクスの居る寮に入れるし、姫も興味あるならどう?」


 こいつと一緒なのは嫌だが、リュクスを見れるなら我慢できなくはない。

 食べ終わったのでごちそうさまとサニア神に祈りを捧げる。


「いや、真面目だね……ちゃんとお祈りして」


 何を当たり前の事を。サニア神への祈りは当然でしょう。

 ただでさえ魔術が下手だし、サニア神にちゃんとお祈りしないと。

 ルヴィも邪神対策に祈りをするようにと言ってただろうに。


 食器を返却するために立ち上がるとエヴに奪われる。


「お姫様は持たなくていいよ。ここは私めが」


 と、なんかやってるので素直に食器を任せてみる。

 きりきり働けへんしつしゃ。




「あの、エヴさま?」


 ラエルは首を傾けつつ名前を呼ぶ。一応、様を付けておく。

 多分、貴族だし逆らうのは危険。


「何かな?」


 目が合う。手を離せ。

 お手々繋いで仲良く貴族の男子寮に向かって、連行されている。

 手を離せ。


「おひめさまってなに?」


 気になったので聞いておく。

 意味を理解したくないので発音がおかしくなった。


「ラエル姫は可愛いからね。だからお姫様」


 こいつは何を言っているんだ。

 可愛いのはフィーナの様な娘だ。フィーナとは合同訓練で会っているし、知っているはずだ。

 目が腐っているのでは?

 お嬢様と言っていた犯罪者予備軍を思い出して殴りたくなってきた。


「ラエル姫、足遅いね」


 体力がないのだ。これ以上の速歩きは吐く。食後だし。

 という気持ちを抑えて微笑んでおく。微笑んでおくと良いと聞いた。

 それから、フィーナを始めとするお姉様方が、足遅いと言われたとかなんか言ってた気がする。えーっと。


「とのがたのほはば?」


 ほにゃららら~覚えてない。きぞく、くうきよんで。

 ……無言になる。違った?


「あ、はい。そうだね……君小さいもんね……本当に十二歳?それにしては小さいし子供っぽいし」


 ???

 ラエルは今日も疑問でいっぱいです。フィーナ対応仕方教えて!

 と、念を飛ばすが何かが起こるわけでもない。

 通信の魔術の類はラエルに使えるか以前に、許可がなければ結界に阻まれて王都でそもそも使えない。


 というか手を離せ。


「抱っこするのはどうかな?」


「ゆうかいはんがいます!たすけて!」


 フィーナに教わった通りに叫ぶ。


「ラエル、不審者に捕まったら叫んで助けを呼ぶのよ!」


 周囲に誰もいない困った。

 叫んでも無駄だった!


 ふしんしゃ!

 手を払い除け、距離を取りびしっと指差す。無駄でも威嚇すべきと判断。


「うん、大人しくしてね。抱っこしない、抱っこしない」


 エヴは抱っこを諦めて手を繋ごうとするが無視する。

 ラエルは大人しくついていく。体力的に逃げれないので。

 ささやかな抵抗だ。うん。


 そういう反応、逆に危ないと思うけどなあ~とか何か呟いているが聞こえない。



 そんな感じで壮絶な死闘の果てにようやく、ようやく貴族の男子寮へとたどり着いた。

 長く厳しい戦いだった。ちゅかれた。

 男子寮に入ったら近くに居た人にお菓子もらった。焼き菓子をもそもそ食べる。

 エヴはラエルの一時入館手続きをしに行った。認識票を奪われた。返せ。

 身長差で奪い返せるわけもなく。

 もそもそ食べていると色んな大人の人が来て世話を焼いてくれる。

 きぞく、おとな、ラエル、とても恐縮。エヴとかいう奴とは違う。いい人達だ。

 ここはお礼に一発芸とか披露すべきかな?一発芸?そんなものは出来ない。

 もそもそ。


 色々聞かれたので不審者につれてこられた!と目についた不審者を指さしておく。

 あいつです!


「ラエル、誰が不審者だ」


 エヴとかいう名前の不審者が苦情を言っている幻聴がする。幻覚も見える。


「ほれ認識票」


 慌てて受け取って首から下げる。

 紛失したら大変だった。

 盗まれたので盗んだエヴって犯罪者の責任にすれば大丈夫なのかな?


「今日一日は居ても大丈夫だから」


 手続きにお礼を言っておく。

 お礼は大事。

 行くぞ、と誘拐される。助けて!と何処かに念を送っておく。


「……何か思ってたのと違うんだよなぁ……」


 とか何か呟いているが気にせずリュクスの部屋へと向かう。


 部屋の前まで来ると何かエヴに合図される。

 はー?やんのか!と臨戦態勢になるが、扉を叩けと促されたのでとんとん叩く。

 貴族に逆らうのは駄目。寮で騒ぐの駄目。


「はい?」


 と返事がして扉が開く。


「エヴ、開けて入ればいいだろ……」


 エヴを見て気怠げに視線を逸らそうとするが、エヴが黙ってその場に居るのを不思議に思ったらしい。

 リュクス様、私服かっこいい!貴族っぽい!気怠げな様子も良い!また新たな一面を……

 リュクスはそんな事を考えているラエルには気が付かない様子だ。

 エヴの手をリュクスが見る。

 エヴの手は下、ラエルを指している。

 ラエルと目が合う。今日もリュクスは美しい。


「……」


 勢いよく扉が閉まる。


「……迷惑だった?忙しそうだし帰る?」


 と、エヴにラエルは首を傾げて提案する。


「いや、暇だろ。朝、予定聞いたけど用事なさそうだったし。部屋片付けているだけだよ。お姫様に見せられないものがあるんでしょうよ」


 もーん?みせられない?

 何かな?とわくわくしているとそっと扉が開く。


「ラエル、なんで?何かあった?」


 リュクスの顔色が悪い。


「エヴさまにゆうかいされた」


 ラエルは問われたので正確に状況を報告する。

 できる子なのです。


「違う、違うから落ち着け。リュクスが暇そうにしているから、冷やかしに来ないか?と招待したんだよ」


 ゆうかいです。ふしんしゃです。


「たいちょう?めいわく?」


 リュクスがちょっと怖いので何か発音おかしくなった。

 美形の圧に押されています。エヴは圧に負けて爆発したら良いと思う。


「いや、うん驚いただけ。廊下で騒ぐのは良くないな。どうぞ」


 リュクスの部屋はラエルとフィーナの部屋の二倍くらいあった。

 エヴと同室らしい。こんなのと同室とかリュクス様お可哀想。

 よよよ。


「ラエル~?何か変なこと考えてるよねぇ~?」


 頬をエヴが突く。

 不審者には変なこととか言われたくはない。

 リュクス様と同室とかふざけるなと、やり場のない怒りをどうするか考えてるだけです。

 不審者さっきから周囲を見回して何だよ。お前の部屋でもあるんだろうに。

 と、ラエルも改めて部屋を見る。広さしか見てなかったからね。


「家具素敵!」


 とっととーと机に駆け寄る。

 いい!良い!細かい彫刻素晴らしい!上塗り剤の色味、質感も木材と意匠に合ってて良い!

 色々な角度から観察する。ほわー

 椅子もいい。違う作家の作品のようだが見事に調和している。ふわー

 題材はなんだろう?春かな?

 花と鳥?何かまったくわかんないけどいい!

 この机にこの椅子を合わせるのは中々のやり手です!

 いい木だ。いい。そっと触れる。

 うむむ……うむ……


 あ、許可もらってない。触っちゃった。


「ん、ラエル。その卓、気に入った?」


 茶器を用意してきたリュクスがラエルに尋ねる。うんうん頷く。

 茶器を見る。その茶器良い!いつもの持ち歩く用の奴と違う!

 ちゃんとしたお茶会で使うやつだ!フィーナに教わったやつだ!

 いい磁器だ!


 リュクスは茶器を載せた盆を机……卓に置く。

 それから椅子を引いてラエルを座らせてくれた。

 誰かさんとは違うね。


 座り心地も良い。いいねいいね。

 そわそわしそうになるのを頑張って堪える。

 ゆうがに。優雅にです。


 リュクスは茶器にお茶を入れてラエルの前に置く。

 ほわー素晴らしい茶器だ。薄い白い磁器。

 どれも淡い色合いの花が描かれている。種類はまったくわからない。

 ラエルの前に置かれた茶器は薄紅色の小さい花だ。

 花の名前はわからない。ラエルは詳しくない。

 フィーナに教わった気がするが覚えてない。

 褒めろとか小粋な小話とか言っていたのはこれか。ぐぬぬ、わからない。

 ちなみに急須には黄色い花が描かれている。かわいい。


 リュクスに促されたのでいただきますと言って、強化魔術を掛け気合を入れて茶器を持つ。

 割るわけにはいかないし、この茶器でお茶を飲むならちゃんとしないと。

 そしてそっと茶器に口をつける。

 滑らかな磁器の質感が素晴らしい。

 傾けると磁器を滑ってお茶が口の中に入ってくる。

 おーいーしーい!

 もそもそしてたお口に潤いが!


 この磁器何時までも触っていたい……良い。良い。

 滑らかな白い肌。この曲線……思わず溜め息。


「リュクス、俺には?」


「は?」


「俺がラエルを連れてきてあげたんだけどなぁ」


 ちらっとエヴは寝台の方を伺っている。

 エヴに無言でお茶を差し出すリュクス。

 受け取って飲むエヴ。所作は良い。腐っても貴族。なんか腹が立つ。

 そんなことより茶器が素晴らしい。エヴとか見ている暇はない。

 改めて見ると盆も素敵。ふー

 茶器を持ち上げ口に運ぶ。お茶も美味しい。

 滑らかな磁器がお茶を邪魔していないのが良い。


 さっきはあんなに口に入れて食べてたのに……とか幻聴が聞こえる。

 ええい、気が散る。


「は?」


 リュクスの低い声に思わずそちらを見る。


「ラエル、エヴと食事してきたの?」


 首を横に激しく振る。食事の邪魔をされました。

 そんな、一緒にお食事とかするわけ……


「それはもう、こう、あーんと……」


 何言ってるんだこいつ。おのれ、やはり不審者。

 ねっ?と片目を閉じ合図してくる。

 そんなあーんの記憶はない。


「しょくじ、じゃまされた。ゆるせない」


 ラエルは偽報を垂れ流すエヴに代わり、リュクスに昼食中の様子を簡潔に報告する。

 荒ぶる感情を鎮めようと必死で変な話し方になってしまった。


 お茶がおいしい。癒やしというやつ。きっとそう。


「後で覚えていろよ」


 リュクスの声にびくっとなる。こわい……

 でも良い。素敵。かっこいい。


「お姫様怖がってるんで、落ち着いてもらっていいですかね……」


 エヴがラエルに話を振る。

 ラエルは目を輝かせてリュクス様を見ています。怖がってなどいないのです。

 エヴは変な事は言わないでほしい。

 もうエヴが一生喋らない方がこの世界の平和の為になって良い。とラエルは思う。

 教えてあげた方が良いのかな?

 エヴを黙らせた分、リュクスには綺麗な詩でも読んでくれませんか?と提案したい。

 美しい口から奏でられる、素敵なお声で綺麗な詩が聞きたい。

 ラエル渾身の名案だと思う。そうしよう。


「ラエル」


 リュクスの顔色が悪い。

 ラエルは怖がってないと必死に目を輝かせてみる。

 よくわかんないけど他に思いつかない。

 そういうのも素敵だけど、やっぱり、優雅に穏やかにしているリュクス様が良いと思うよ。

 ラエルはそういうリュクス様が美しいと思うのです。うん。


 ふぅーとリュクスが息を吐いて静かにエヴを問い詰め始めた。

 仲良くて良いね。お茶がおいしい。


 リュクスの静かな声が心地良い。

 お腹いっぱいで……適度な運動をして……まぶたが重い……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ