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迷う残光は空に  作者: 悠月 蒼祈


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 いつもの夢を見た。

 『私』は『彼』に抱きとめられている。

 『私』の事が嫌いな『彼』は世界の終わりのような顔をしている。

 どうしてそんな顔をしているんだろう。

 だって、これで貴方は自由になれるのだから。

 何か『彼』が叫んでいるが、もう『私』はそれが聞こえない。


――ている。


 『彼』の美しい姿も殆ど見えない。

 でも、『私』が大好きな『彼』の綺麗な紅い瞳はよく見える。

 最後に見れてよかった。

 

 『彼』が幸せになれますように。







 そこで目が覚めた。


 いつもと違う天井。

 寝ている寝台も見たこともない程良質なもので。肌に触れた質感を意識したところでラエルは思い出す。

 ああ、王都に連れて行かれている途中だったなと。

 窓から外を覗く。日が昇って明るい。時間はわからないが出発はそろそろだろう。

 寝台から抜け出して準備をする。準備と言っても用意された旅装束に着替える程度だ。

 着替え終わったので荷物をまとめて案内役が来るのを待つ。


 目をつむる。

 夢で見た紅い目を思い出す。

 本当にきらきらと綺麗で。見たことはないが宝石はあんな風に綺麗なんだろうか。

 王都にはあんな綺麗なモノがあるだろうか。

 夢ではなく現実で見てみたいなとラエルは思いを馳せる。



 そうしていると案内役の役人が部屋に来たので付いて行く。

 宿屋に併設された食堂で、普段の食事とは比べ物にならない豪華な朝食を取り、宿を後にした。


 馬車に揺られていると王都に間もなく着くらしい。

 馬車は結構仰々しい。護衛の騎士がいっぱいいる。

 邪神配下の魔王達の動きが活発になって、魔物が多いのでこれくらいの護衛が必要だという。

 言われてみれば村でも時折魔物による襲撃があった。

 魔物は魔物避けの魔道具で大体なんとかなるらしいが、盗賊の襲撃は騎士に頼る必要がある。

 このご時世、人里の外で盗賊なんてやっている連中は、魔物をどうにかできる手練だ。

 役人はかなり偉いのかも?

 役人が注意する事を入念にラエルに言い聞かせる。


「君は十二歳。いいね?流石に若すぎる、幼すぎると入れないから十二歳。小さいのは劣悪な孤児院のせい」


 言われたことをラエルは復唱する。

 うんうんと役人は頷く。


「まあ間違ってはいないので大丈夫だろう。もっと幼いのでは?と疑問を持たれても十二歳で押し切りなさい」


 ラエルは十二歳。更に復唱する。生まれて十二年……十二年?

 違う気がするが十二歳。戸籍が十二歳なんだから十二歳。

 すると役人は満足そうに頷く。


「後は君は賢い。というか、物分りが良すぎるが正しいか?」


 心配そうに役人がラエルを撫でる。


「だからまぁ心配はしていない。とにかく貴族に逆らうな。まあ、道中何度も言ってきたが」


 貴族に逆らうな。簡単にまとめるならその一点だろう。とラエルの目を見て言い聞かせてくる。

 ラエルがおとなしい様子なので、案内役は口酸っぱく説明はしているが貴族への対応にはあまり心配していないようだった。

 理不尽な貴族にさえ目をつけられなければなんとかなるだろう。そう言われた。


「まあ元々そういう子を育てて、使い物になるかの試験的な策だからね。それがわかってない奴は居ないと思うし」


 わざわざラエルのような平民の孤児に、権力を振りかざすのは印象が悪い。

 多少の粗相は笑って許す度量がなければ……ということらしい。


「記録の魔道具はちゃんと使えてるね」


 役人から渡された魔道具をラエルは握る。


「軍では万が一の時に専用の物の携帯が必要だから。それで練習しておきなさい」


 まずは日記でも付けて練習するようにと言われる。

 記録の魔道具がちゃんと動作しているかの確認をしてもらう。大丈夫みたいだ。


「流石に君のような子に礼儀作法を求めるのはねぇ……とはいえ頑張って身につけるように」


 はい。と返事をする。

 すごく心配そうに役人が見ている。

 大丈夫。空っぽのラエルがどうなろうと誰も気にしない。



 王都へ入るための面倒な手続きは全て役人が行ってくれた。

 大きな建物、もっとも王都の建物はどれも大きいが……で馬車が止まる。

 言われるがまま馬車から降りて建物の中へと案内される。


「この部屋で偉い人が来るまで大人しく空いている椅子に座って待つように。じゃあね、生きていればまた」


 そう言うと役人はどこかに行ってしまった。

 ラエルは扉を開け部屋に入る。

 部屋には近い年の男の子二人と女の子一人が居た。

 こんにちは、と挨拶をして空いている席に座る。

 妙な緊張感があり、各々気になっているようだが、誰も言葉を発することはなかった。


 言いつけ通り大人しく座って待っていると扉が開いた。

 ラエル達は一斉に扉の方を向く。


 入ってきた人物はなんか良さそうな服を着ているので多分偉い人だ。

 ラエルは失礼にならないように、こそこそと顔を見る。

 ラエルより少し年は上だろうか。

 輝く金色の髪はとても美しく、顔の造形も恐ろしく整っている。

 そして何より。


(紅い瞳……『彼』とどっちが綺麗なんだろう?)


 見た目が好みな上官で良かった。

 彼がラエル達を見る。


「君達の上官になるリュクスだ。隊長で構わない」


 一応貴族だが継ぐ爵位がないので、手柄を立てれなくればそのうち平民になる予定らしい。

 だからそれほど厳しくはしないが最低限の礼儀は見せろと注意から始まった。

 役人も言っていたが貴族の人は怖いらしいので、普段から気をつけろ。という話のようだ。


「色々質問があるだろうが、まずはそちらの君から自己紹介を頼む。」


 指名された緑髪の男の子が慌てて返事をしながら勢いよく立ち上がる。


「あ、はい!えー、オレは、その」


 緊張で言葉が出てこないようだ。

 見兼ねた様子でリュクスが質問を始める。


「名前は?」


「な、名前はペッタポッタ」


「歳は?」


「十二、じゃなくて十三です!」


「出身地は……その名前の響き、大森林の方か」


 そう呟いてリュクスは持っている紙を見る。


「は、はい」


「エ・イの民か……王都での生活は全く違うものだろう。大変だと思うがよろしく頼む」


「はい!」


「時間も無い。とりあえずはこれくらいだな。ペッタポッタ、座って良い。次は君だ」


 もう一人の茶髪の男の子が指名され、慌てて立ち上がる。


「アールです。王都出身の同じく十三歳で、実家は商会です。

 物品の管理などで実家の仕事を手伝ってきた経験を活かせないかと」


 流れるように自己紹介を終えたがかなり早口だった。

 緊張が伝わってくる。

 リュクスが紙を見る。


「実家は……まあまあの商会じゃないか」


 まあまあ有名な商会なんだろうか?

 王都の事はよくわからないので、なるほどとラエルは記憶しておく。


「頭を使う仕事をしたい者は文官志望が多くて軍部では人材不足なのだ。君のような人材が来てくれて、しかも私の所に配属されたことを嬉しく思う」


 そして、リュクスはよろしく頼むと言って座るように促す。

 

「次はそちらの君だ」


 指名された金髪の女の子が優雅に立つ。


「フィーナと申します。歳は十三。実家は王都です」


 父が元貴族で、今後爵位が無くなる予定の隊長と似た境遇らしい。


「なので私は手柄を立て爵位が欲しいのです」


 リュクスは紙を見る。


「なるほど。大変な道のりだが私も目指すところは近い。手柄にこだわって無茶はしないように」


 優雅に礼をしてフィーナは着席する。

 そうしてラエルが指名された。

 ラエルは特に慌てた様子もなく普段通りに動く。


「ラエルです。歳は……十二?戸籍ではそう?東の?方から来ました?」


「何で全体的に疑問系なんだよ……」


 アールが不満げに突っ込む。それから十二?嘘だろ?とか言ってる。

 そもそも戸籍では?とか言っている時点で嘘だろ?とかなんとか。

 どう見ても背が低すぎるし……あいつらより小さいだろ。とぶつぶつ言ってる。


「孤児です。貴族の人の言うことを聞くように言われてきました」


「今年は孤児の枠なんて無いと思ったんだけど」


「そう、なんですか?」


「武功を上げた奴がボチボチ出てきたからな。今までと違って人気なんだよ」


 それに後で知ったが、どうせ魔物に襲われる環境なら、武力のない村で生活するより周りが軍人の遠征先の方が安全らしい。

 まぁこの話は神殿に結界を張る金を払えない、かなり貧乏な田舎の村の話らしいが。

 ラエルの村もそんな感じの村だった。ラエルが居た所は神殿運営の孤児院じゃなかった。

 村の皆が知ってれば徴兵の席は取り合いになっていただろう。

 ラエルが王都に来ることはなかったかも。


「なるほど?」


 とりあえず反応する。

 どうやらラエルが聞いていた話と大きく違うらしい。


「ラエル、君の聞いていた話と比較して詳しく説明してやりたいが、時間が足りない。もう座っていい……フィーナ、アール」


 リュクスが二人の名前を呼ぶ。


「君達は王都出身だ。しかも平民の上位層だ。その分、知っていることも多いだろう?他の二人の面倒を頼む」


 わかりました。とフィーナとアールが返事をする。


「さて、アールとペッタポッタ君達は同室だ。これが認識票だ。部屋を始め鍵としても使うので絶対に紛失しないように。男子寮の場所は……」


 リュクスが二人に銀色の小さい金属板を渡して説明している。

 どうやらあれが認識票とやららしい。


「フィーナ、ラエル君達二人も当然同室だ。寮の場所は……」


 ラエルは寮の場所を記憶する。


「これが認識票だ。無くさないように。フィーナ使い方を教えてやってくれ。後は作法やら……とにかく、面倒に巻き込まれないように必要だと思うことを最低限でいい。負担が大きいが頼む」


 リュクスから認識票を受け取る。


「はい、ご期待に添えられるか自信はありませんが」


「ラエルも彼女の言う事をよく聞いて、問題に巻き込まれないように気をつけて」


「頑張ります」


 うん。と、リュクスが頷く。


「さてこれからの君達の予定だが、今日はこの後は自由行動。立入禁止区画には行かないこと。ここと自室、食堂……丁度昼だし食事に行くと良い。それから授業で使う場所は見ておいた方がいいだろう」


 授業で使う教室と訓練場の場所の説明を聞く。


「明日は今後の準備だ。買い出しに行く。金は私が出すので気にしなくて良い」


 集合場所と時間を記憶する。


「以上で解散だ。早く部屋から出るように。でないと戸締まりが出来ないからな」


 部屋から出るように言われたので全員部屋から出る。

 リュクスが部屋の扉に自身の認識票をかざす。


「では明日」


 そう言うとさっさと行ってしまった。


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