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最強のいる異世界で  作者: こっこ治郎
第一章 「愛し、愛され、愛されず」
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第三話 『その村は平和と言うには程遠く』

対戦よろしくお願いします。

 彼を転生させてから少しの時間が過ぎた。

 彼は今頃何をしているだろうか。


 本を読んでいるかな。剣を携えて狩猟をしているだろうか。それとも親との特訓とかかな。


「大丈夫。今は…いや、いつまでも君は君の好きな事をするといい」


 使命もないし、強制もしない。ただただ生きて、生きて、生きてくれたらそれでいい。


「それが俺の、俺たちの使命へと繋がるから」


 世界を始まらせる。そのキーパーソンは君になる。僕はそう確信してる。


「二つのスキルと、別々の強さを持つ両親。それさえあれば君は確実に強くなる」


 強くなればその時は――


◇ ◇ ◇


「暇だな〜」

「暇だね〜」


 どこかの親子がそう呟く。

 野原で仰向けに寝転び太陽を見ながらそう呟く。


「とーさんなんか面白いことしてよ〜」

「やだ」

「ありがとう」

「どういたしまして」


 その二人の顔には知性というものはまるでなく脳を介さず脊髄で会話する逆に高等的なことをしていた。

 そしてその二人の後ろでは――


「全然暇じゃないんだけど?早く手伝ってくれない?」

「「…はい」」


 声色は優しいが顔は引きつり怒りを我慢しているデミーの姿があった。その怒りの表情を形容するのならばまさしく鬼と言えるだろう。


「て言っても俺たちは何を手伝えばいいのでしょうか」

「色々あるけど…屋台の準備を最優先で終わらせて」

「うっす」


 デミーが忙しくしている要因。それは町の祭りにあった。3年に一度開かれる農業と狩猟を合わせた【農猟祭】その祭りの一角で行う商いの準備は一ヶ月前から始めるのが基本だった。

 しかし、レイン一家はそのことを完全に忘れ、家族での遊びに呆けていた。その結果が今の惨状である。


「レインもなんか手伝って〜」

「じゃあ調味料買ってくる〜」

「はーい。お願いね」


 そしてレインは村へ歩を進める。


 ここで一つ彼らのいる村について詳しく語ろう。

 彼らの住む村、名を『フラジール』一番最初の村長がつけた名前で特に意味はない。ぱっと頭に浮かんできた言葉でかっこいいから村名にした。と語っている。


 そしてそんな意味のないフラジールという名前であるが20年前に村の名に意味ができてしまった話がその村では有名である。

 その話はまた丁度いい時に行うとして今はフラジール村の行事や建造物についてだ。建造物は木材を主として使い一軒家が立ち並ぶまさに村とも言える作りをしている。


 村の外側には畑と草原が広がり、反対に村の中心には全王を祀る教会が建てられている。その教会を取り囲むように商店街が立ち並びそれらを住宅が取り囲む。

 道路と思しきものもあり頻繁にではないにしろある程度の馬車が通過するのを見れる。


 そして今起きている祭りである【農猟祭】は村の全ての人々が中心に集まり酒を飲み騒ぐだけの祭りだ。

 それこそ昔は名の通り農業や狩猟などで競い合う祭りだったというが今では各々が作ったものを食べたり飲んだり売ったりする行事へと変貌してしまった。

 当たり前だが村の人達にはとても好評な祭りである。


「もうみんな準備終わってるな〜」


 ボーッとしながら村を見渡すレインのもとに大柄な男が一人近づく。


「レインじゃねぇか!今日はネウファと一緒じゃねぇんだな」

「ヤッホ~、ルガンおじさん」

「俺を呼ぶときは?」

「…………おにいさん」


 『ルガン』身長は190はゆうに超えているであろう大男であり、髭が生えており、父であるネウファの昔からの友人の一人。

 その巨体と有り余る体力を使い土木の仕事と門番の仕事を兼任する、フラジール町にずっといてほしいランキング第一位の男。


「買いもんか?」

「そんな感じ〜、母さんに頼まれちゃったから」

「デミーさんか。あの人はいつまでたっても若いよな〜。まあそういうもんだから仕方ないけど……」

「え?」

「いや何でもねぇ。俺もこれから村の見回りと守衛の仕事があるからまたな」

「ばいばーい」

「2人にはよろしく言っといてくれ」


 ルガンと別れてすぐレインは右にある店を見る。そこには『魔法屋』と書かれていて様々な種類の本や杖、さらにはローブなどがあった。

 その隣には『武器屋』と書かれた店があり様々な種類の武器と鎧、盾なんかも置いてあった。


 それらをスルーして数歩歩くと左側には『酒』と書いてある店があった。景観はボロボロだがそれでもたくさんの人が常に出入りを繰り返している。

 レインが中にはいるとそこには空になった戸棚が大量に並んでおり、奥を見ると幸せそうな女がいた。その女はレインに気付くと店のカウンターから飛び出し急速に近寄る。


「やあ!レイン」

「ジュナおばさん。幸せそうだね〜」

「おばさんっていう年でもないんだけど…まあまあ許してやろう」

「予約してたお酒を取りに来ました」

「あれね、りょーかい。すぐ持ってくるから待ってて〜」


 『ジュナ』デミーの数少ない友人の一人であり、酒屋の主人であり、村で一番人望あふれる人物。彼女を知らない村人はいない。彼女は村長候補だったとも言われている。そして先ほど会った


「レイン〜?うちのバカ夫知らない?」

「ルガンおじさんでしょ?さっき見たよ」

「どこ行くって言ってた?」

「仕事行くって言ってたはずだけど…」

「あいつ…」


 怒りに震えるジュナの姿は彼の母親の姿と酷似する。それは鬼の形相をしていた。


「…ありがとレイン。これ注文のお酒ね」

「ありがとう」

「今日はもう店閉めちゃうから早く帰りなさい」


 その鬼は収まるのを知らずカウンターの出入り口を壊す勢いで開き店の外へと出る。


「うん。頑張ってね」

「それはどっちに向けて?」

「もちろんジュナおば…お姉さんに向けて!」

「ありがとね」


 レインはジュナを見送るとそのまま調味料を売店で買い家へと向かう。


 その後、父がお酒を買うのを忘れ母に正座をさせられている姿を見て似てるなと思いながら父のサポートをするレインであった。

 ちなみに同日の夜の酒屋ではジュナの叫び声とルガンの弱々しい声が響いたという。

小噺です。日常がもうちょっとだけ続きます。俺を許してやってください。

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