Bar No Name③
ビリーが帰って暫くした後、ルークが店にやって来た
「セリスさん、カクテルに使う果物が在庫少ないので買い出しに行きますね」
「あぁ、あたしが行くからいいよ
ちょっと気分転換もしたくてね、カウンター周りの掃除頼めるかい?」
「わかりました。気を付けて」
Bar No Nameから大通りに出てすぐ、スラム御用達の大市場がある。
この国は果物が特産品で安く手に入る。
もちろん見た目がいいものは金持ちやレストランに自動的に配分されるが
見た目がちょっとアレなだけで、中身が一級品なのは変わらない。
レモン・ミントなど一通り買い出しを終え、セリスはありきたりな茶色の紙袋を両手に抱えている。
なんだか街の様子が騒がしい・・・パトカーなんて珍しいものでもなんでもないが、それとも違うざわついた感じがする。
露店の店主が話しかけてきた
「よぉ、セリス、この間のツケ払いに行くからな、明日店にはいるのか?」
「毎日開けてるよ、そんなことより、ツケ払いにきてまたツケで飲んでいくわけじゃないだろうね?」
「今度は大丈夫だよ!ポーカーで勝ったからな!」
「ったく・・・あぶく銭はどうせあぶくなんだ、さっさと借金払って真っ当に働きな!」
「耳がいてぇーや!あっはっは」
「所で随分騒がしい感じがするね、こんな真昼間から」
「あぁ、どこぞのガキがその辺のアウトローを連れて無茶やってるらしいな、昼間からポリ公があーでもねーこーでもねぇと嗅ぎまわってやがる。どうやら親が随分な金持ちらしく、なんでも買収しちまうんだってよ、無関係な奴も3番通り歩いてたってだけで、事故の犯人にされたり、ケンカの濡れ衣着せられたりして連れてかれるらしいぜ。だからここんとこ昼からこんな感じよ。特に夜の3番通りは気をつけな、明らかにヤバいやつがウロウロしていてかなわねぇや」
「ふーん・・・」
ーー3番通りか、ウォール銀行の系列で随分怪しい会社が並んでるって噂だね。
「ほらっ!」そう言ってセリスは露店の店主にレモンを放り投げる。
「ありがとよ!」
店に戻る途中
セリスはショーウィンドウに映る“影”に気づき、裏路地へ入る。
数歩歩いて足を止めるセリス。
そのまま振り返り「……なんか、用?」と言葉を発すると襲い掛かる男たち
男が掴みに来た瞬間、セリスは紙袋を片腕で体の脇に抱え直した。
足元に鋭いローキックを叩き込み、崩れ落ちた顔面に膝蹴りを叩き込む。
もう一人が背後から掴みに来る。
セリスは腰を軸にくるりと回り、抱えた紙袋を死守したまま反対足を振り抜いた。
延髄に直撃した一撃で、男は痙攣しながら沈む。
二人の体が石畳に倒れ込む鈍い音が響いた。
セリスは息一つ乱さず、抱えた紙袋を整える。
「それで?……なんか用?――って、もう聞こえてないか」
倒れた男のポケットから名刺を抜き取り、鼻で笑った。
「ふーん…」




