Bar No Name②
翌朝の《Bar No Name》。
ソファで横たわっていたビリーが目を開ける。
「……ここは……?」
「見ての通り、ホテルじゃない。」
セリスが水を差し出す。
「昨日のやつらは?!」
「この国の警察は優秀だね。電話一本ですぐに飛んできたよ」
「……すいません……」
セリスは冷たい目で問う。
「――何があった?」
ビリーは唇を噛み、やがて吐き出した。
「……僕には婚約者がいたんです。リリアって言います。ひき逃げにあって……右足を失いました」
セリス「……相手は?」
ビリーは拳を握りしめ、声を震わせる。
「……ダミアン・ウォール……」
セリスの目が細くなる。
「ウォール銀行の……?」
ビリーは言葉を発さず、ただ強く頷いた。
セリスは煙を吐き、低く呟いた。
「なるほどね」
そして冷ややかに続けた。
「警察に話するんだね。こんなところで話した所で何にもなりゃしない。もちろん、昨日の話もね」
ビリーは声を荒げる。
「警察にも話しました!でも全然取り合ってくれないどころか、酒でも飲んでフラフラしてたんだろうって!事故に遭う前の晩にプロポーズをしたんです。その日も僕の家で両親と会う約束をしていて…」
セリスは肩をすくめ、淡々と告げる。
「とにかく。ここで話しても変わらないんだ。目が覚めたなら帰って病院でも行きな。そのままにしてたら化膿するよ」
ビリーは唇を噛み、Barを後にした。




