第四話 帰路
翌日、ライムたちはラルトシティに別れを告げ、王都へと帰っていた。
馬車に乗っている間、ライムはさまざまな考察をしていた。
「さて、異世界に来たわけだが…。まずは周囲の観察から始めるとするか」
ラルトシティを出発して少し経っているが、道は十分に舗装されている。
木々は至って普通に生い茂っている。
空を見上げると…遠くに見えるあれは…鳥…?にしては少し大きすぎる気がする。これが魔物とやらか!?
「ねぇ、パパ、あれって…?」
「ん、どれだ?…あぁ、ワイバーンじゃねぇのか?」
「わ、ワイバーン!?」
「うるせぇな、何驚いてるんだよ。たかがワイバーンごときで。あんくらいなら、パパどころか、デルクでも普通に倒せるだろうよ」
「デ、デルクでも…?」
「あたりめぇだろ。デルクが魔法得意なの知ってるだろ?」
そうだ、デルクは弱冠8歳でありながら、既に魔法が得意なのだ。魔法化学校にでも行ったら優等生なんだろうなぁ…。
魔法って、どうやって使うのだろう?あの自称女神さんも、魔法云々言ってたな…。俺でも使える的なこと言ってたけど、後で調べなくちゃな…。
というか、魔法だのワイバーンだの、本当に異世界に来ちまったんだなぁ…。この世界をエンジョイしながら生き抜く術を身につけなくちゃなぁ…。
そうこう考えているうちに、王都へついてしまった。
「お、おぉ…」
いくらライムの記憶があるとはいえ、思わず感嘆してしまった。うまく言葉で表現できない熱気というか、盛り上がりが、王都にはあるようだ。
屋台ではなにやら美味しそうな肉の串焼きが売られている。人々が硬貨を渡しているのを見ると、ここはきちんと資本主義経済らしい。社会主義経済であったらどうしようもない、と思っていたので、内心、安堵する。
「ほら、ついたぞ、降りろー」
どうやら、ここが両親の経営する商店兼家らしい。
店の名前は【エイカ商店】。なるほど、上から目線のようになってしまうが、良い名前だ、と思う。
「ほら、ライム、ぼーっとしてないで荷物運んでよー」
と母が言っている。
これからいよいよ異世界ライフが始まるのだという実感が湧き、その期待で胸が高鳴るのをライムは感じた。
「はーい」
大きく伸びをして、ライムは母のもとへ駆け出した。