表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

第三話 目覚めた世界

「見たこと…ある天井だな」

ぽつりとライムはつぶやく。

「ライム!起きたのか…!」

父がライムに抱きついた。

「うぅ…パパ、苦しいよぉ」

「そんなこと言ったって、お前、一旦目を覚したと思ったらまたすぐ倒れやがってよぉ…!」

「だからと言って泣かなくても…」

父の目にキラリと光るものが見えたのだ。

「…いや、泣いてなどおらん!その…これは、だな、ホコリが目に入ったのだ!」

いくらなんでも言い訳が苦しくないか…?でも、きっと、俺のことを心配してくれたのだろう。ありがとう、と口の中でこだまさせる。

大道は、前世では父は彼が生まれる前に亡くなってしまっていたので、父親を「パパ」と呼ぶ機会はなかった。にもかかわらず、それがすんなりと口に出せたのは、おそらくライムの元の記憶のおかげだろう。

「ライムっ…!」

今度は後ろから抱きつかれた。真っ黒な髪に優しそうな顔立ち。これが、3歳上の兄、デルクか。

「ライム…起きたのね…!」

この声の主が母か。うるっとさせた目で心配そうにこちらを見ている。やはり、みんな心配してくれているみたいだ。

「みんな…ありがとう」

「そんなこと言ったって…ライムが…溺れるからぁ…」

デルクが声をあげて泣いている。

「ほんとだぞ。パパが助けに行ってなかったらどうなっていたことか…」

なるほど、父が俺のことを助けてくれたらしい。さすが、頼れる父親といったところか。

ふと、外に目をやると、波が穏やかに音を立てていた。どうやら、ホテルの自室で寝かされていたらしい。

「大丈夫?ちゃんと立てる?」

ライムが体を起こして立ちあがろうとすると、母が心配そうに声をあげた。

「大丈夫。もうどこも痛くないよ」

どうやら、ライムの体は丈夫らしい。あんなことがあったばかりなのに、体を動かしたくてうずうずしているのがわかる。まだ5歳だからそんなもんなのかもしれないが。

「腹、減っただろ。メシにするか?」

と父が言った。どのくらいの時間、寝込んでいたのかは分からないが、少なくともその間は腹に何も入れていないはずだ。ライムは父と手を繋いで、食堂に行った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ