第十八話
ライムが入学してから1ヶ月後、王立商業学園では『第一回クラス対抗商店バトル』の準備に取り掛かろうとしていた。クラス対抗商店バトルとは、その名の通り、各クラスが数日に渡り、その売上高及びアイデア等を競うイベントで、この学園では1シーズンにつき1度行われることになっている。
そして、各クラス内で『バトル対策委員』なるものを出さなくてはいけないのだが…。
「誰か、やってくれる人はいないか?」
しーん。
「ライム様、やらないんですか?」
隣からラッカルが覗き込んで聞いた。
「どんなものかわからないからな。失敗した時の責任が重いし、出来れば第三者視点でいたいな」
「はい、はーい!」
静寂を破るように声をあげたのはthe・ギャルのミナだった。
「おっ、やってくれるのか?」
先生が嬉しそうな声で言う。
「いえ、自分はやりませーん。私はぁ、ライムくんがいいと思いまぁーす!」
出た、小学校とかで絶対に出る他人への推薦。
「ふむ、確かに彼はこのクラスで一番適任かもしれないな…。そういうことだ、ライム、やってくれるか?」
「いえ、自分は…うっ」
突然、横から手が伸びてきて彼の口を押さえた。
「是非、やらせてください!僕も一緒にやります!」
「ちょっと、ラッカル!」
「おっ、そうか。じゃあ二人に任せよう!」
ライムが拒否する時間も与えられないまま、決まってしまった。
「ラッカル、なんてことをやってくれたんだ」
「えへへ、ごめんなさい♡」
「えへへ、じゃねーよ!」
ライムはラッカルの頭を叩いた。
「いてっ」
「こんな面倒なこと、やりたくないんだよ…」
「しょうがないじゃないですか、困っている女の子がいたら助けてあげるのが人の性…いてっ」
「お前はもっと反省しろ!じゃあ企画内容とかも全部お前が考えろよ」
「えぇー」
とラッカルは口を尖らせた。
「まったく…。にしても、まず売るモノを決めないとどうしようもないよなぁ…」
売るからには自分たちで原材料を揃えたり、仕入れたり、場合によっては作ったりしなけれればならない。モノではなく、サービスの提供を行うにしても、それ相応の技術がなければ話にすらならない。そして、これが一番重要だが、一般人相手に商売をするのだから、需要があるものでなくてはならない。
「父さんと母さんに聞くのもありだと思うんだけど…、負けた気がするからなぁ」
自分のためにならないと思い、却下。
「この世界にないものを作る…?それがアドバンテージではあるかもしれないけど、自分一人でできるかなぁ…」
「なかなか、思い浮かばないですねぇ」
ラッカルが呑気そうに言った。
「他人事みたく言うな。お前も真面目に考えろ」
「えー、何かないか、図書室に行って調べてみます」
「図書室か…。何気に一回も行ったことないな。行ってみるか」
確かに、思わぬところからアイデアが出てくるかもしれない。そう思い、二人は図書室へと向かった。
読んでいただきありがとうございます!
投稿が遅くなってしまい申し訳ございません…