第十七話 不穏な動き
「おかえりなさいませ」
ゴードンが家に帰ると数人のメイドが出迎えた。しかし、いつもの如くゴードンはそれを無視した。
「ゴードン様、先にお風呂にいたしましょうか?それともご夕食に?」
メイドの中で最も年配の女性が一歩前に出てゴードンに尋ねた。
「…夕食を頼む」
「承知いたしました。すぐに用意いたします」
そういい、メイド全員は食事の準備のためにそれぞれの仕事に取り掛かった。
ゴードンは自分の書斎へと向かっていると、一人娘のリサとすれ違った。
「ただいま」
と声をかけるも、そういう年頃なのか、返事は一切ない。ここ最近、娘が自分に冷たいと感じているのはゴードンの悩みでもある。反抗期にしては少し早い気もするが…。
「…そういえば、今日、お父さんが言ってたライムってやつと話したよ」
リサがぽつりと呟いたのでゴードンは驚いた。
「ほう、それで?」
彼は興味深そうに尋ねた。
「…喧嘩売って来たね。本当に自分に自信があるのか、ムキになったバカか、どっちかはわからないけどね」
しかし、自分から話しかけたことは口にしない。
「喧嘩を売ってきた、だと…?」
ゴードンは自分でも頭に血が昇っていくのがわかった。
「次のテスト次第ね」
リサはそれだけいい、立ち去ってしまった。
ゴードンは書斎に入ると、自分の机を思いっきり殴った。興奮しているせいで、自分の手の甲の痛みは感じない。
「ふざけるなっ!あやつめ、図に載るのも大概にしろっ!」
コンコン。
書斎に扉がノックされる音が響いた。
「ご夕食が出来あがりになりました」
扉の向こう側からメイドの声がした。
「今はいらんっ!」
ゴードンは怒鳴りつけて答えた。
「承知いたしました。それと、お手紙が一通来ておりましたが…。送り主はヒュール・ウルヒ様でいらっしゃいます」
「なっ!今すぐよこせっ!」
失礼致します、と言い、メイドが部屋に入ってゴードンに手紙を渡す。
ゴードンは奪うようにして手紙を受け取り、その場でさっと読んだ。
「ふっふ…。夕食は手軽に食べやすいのをここに持ってきてくれ。仕事をしながら食べる」
「はっ、了解です」
と言い、メイドは急いで出て行った
「おもしろくなりそうだ…」
ゴードンは思わず笑みがこぼれるのだった。