第十六話 職員会議②
「満点が二人、ですか…」
一学年の担任団で唯一の女性教師であるサリーがぽつりと呟くように言った。
「私の迫真の演技のおかげでしょうなぁ!」
「トーシン先生が『気合いだ、気合いだ、気合いだぁーっ!』って言うせいで、すっかり生徒にはそれが刷り込まれたようですよ」
とアークが苦笑する。ちょうど、職員室で前回のテストの採点をしていたのだ。
「また小僧がまた満点か。不正をしているに違いない!」
とゴードンは憤っている。
「はぁ…。まだそんなこと言っているのですか?じゃあ、ペン型魔道具で確認してみればいいじゃないですか。そのための魔道具でしょう?」
サリーが呆れたように言った。
「ふっ、それはいい。しっかりと暴いてみせようではないか。ほら、アーク先生、彼が使っていた魔道具を貸してください」
勝手にしてください、とだけいい、アークはそれを手渡した。
ゴードンは不気味な笑みを浮かべると、その魔道具を起動させた。そして、ホログラム的に試験時の彼が映し出される。
「ふむ…?ほう…。ほら!彼はこんなにもカンニングをしているではないか!」
ゴードンは大きな声で叫んだので、周りにいた教師たちが一斉に覗き込んだ。確かに、思いっきり後ろを向いたりしているわけではないものの、少しきょろきょろとしているのは確認できる。
「でも、カンニングしたところで、どうせ合っている答案なんてないんですから同じじゃないですか?」
「うっ、うるさい!カンニングといったらカンニングだ!不正だ!」
「でも、彼はその後、何も書き込んでいませんよ?それに、そのくらいなら周りの子も全員きょろきょろとしているじゃないですか。あなたの娘さんのも見ましょうか?」
恐らく、生徒が解く前に考えていた以上に簡単な問題だと感じたので、周囲の反応も気になったのだろう。みな、所詮10歳なのだ。
「だ、だがしかし…。か、彼はあの『魔の新星』の弟だぞ?魔法で何か不正ができてもおかしくないだろう…」
「ま、魔の新星って…!魔法科学園で圧倒的な実力を見せつけ、在籍中ながらも国王近衛隊として使えているというあの!?」
「…デルク=レポン。確かに名字は同じですけど、兄弟っていうのは本当なのですか?」
「ほ、本当だとも!」
ゴードンはこのことは出まかせで言っただけで、その情報の裏は取っていなかったが、それを悟られないようにするため、威勢良く言った。
「ですが、学園長のおっしゃる通り『疑わしきは被告人の利益に』。証拠もないのに騒ぐ立てるのは大人としてみっともないですよ」
「な、なんと…!」
ゴードンは怒りで震えた。あまりにも屈辱的すぎる発言だ、と。
「き、きさまぁ…!」
「それに、第一、魔法で不正していたとしてmpそれはそれでいいじゃないですか。彼にはそれだけの才能があるってことですから」
アークに続き、サリーも冷ややかに言った。少なくとも、この場にはゴードンの味方をする者はいないようだ。
「くっ…、わかった。今日のところは許してやろう」
そう吐き捨てると、ゴードンはどしどしと部屋から出ていった。