第十五話 ライバル!?
テスト返しが終わり、アークが教室から出ていくと、皆不満を出し合っていた。
「何よ、あのクソジジイ」
「あいつがあんなことばっかり言うから俺たちは間違えたんだ」
おそらく「クソジジイ」とは、トーシンという、初老の男性教師のことだろう。ことあるたびに授業で「気合いだ、気合いだ、気合いだぁーっ!」と叫んでいるのだ。ん?そういえば前世ではそれが口癖のタレントがいたような…?
「ライム様、もう帰りましょ」
テスト返しも終わり、今日はこの後の授業もない。ラッカルの言う通り、帰ることにした。
「うん、支度するからちょっと待ってて」
ライムが机の上の荷物を片付けようとした、その時だった。
「ライムって人、いる?」
教室の入り口の方から女性の声が聞こえた。
ライムが振り返って見てみると、目つきの鋭い女子生徒が仁王立ちしていた。
ライムは入り口まで歩いて行き、
「俺がライムだけど?」
と言った。
「ふぅん、あなたがライム、ねぇ…」
その女子はまるで品定めでもするかのような目でライムのことをまじまじと見た。
その様子が気に食わなかったライムは、
「何か用?言いたいことでもあるなら手短かに言って」
とぶっきらぼうに言った。
「いや、おと…、先生が、あなたについて言っていたから「先生が、俺に?何て?というか、いきなり名前も名乗らずに何?」
「…そうね、私は3組のリサよ。あなたについてはね…すごい、って」
リサは心の中で苦笑した。口が裂けても、あなたが不正していると疑っているだなんて、今は言えないわよねぇ…と。
「は?」
一方で、ライムはかなりイラついていた。いきなり大声で見ず知らずの子に呼び出された挙句、よく分からないことを言ってきた。ときかく、目の前でニヤついているこの女を一刻も早く視界から消したい思いでいっぱいだった。
「本当にそれだけ?んじゃ、俺、帰るから」
ライムはそう言い、リサに背を向けた。その背中に向かってリサは声をかけた。
「あなたがどのくらいすごいのかを確かめたかったのよ。私、この前のテスト満点だったし。入試も次席だったもので」
その言葉で、ライムは歩みを止めた。
「ほう。君が『2位』なのか」
「えぇ。いつも『1位』は阻まれているから。といっても、まだ2回しか競う機会はなかったけど」
リサがライムに詰め寄って言う。
「あなた、まさか中途半端な『1位』じゃないでしょうね?私の上に立っているのですから」
「ご自分に自信があるようでして何よりですね。ですが、満点の私めを心配する時間がございましたら、ご自身の学力を高められてはいかがでしょう?」
ライムは思いっきりいやみを込めて言った。彼にとっては、リサが宣戦布告してきたとしか映らなかったのだ。
そんな二人の様子を遠目に、教室にいた生徒たちは固唾を飲んで見守っている。
「なるほど…。では、私はその勉強をしてきますので、失礼」
しばし睨みあった後、リサの方が出ていった。ライムはその背中を睨みつけ、荷物が起きっぱなしの自席へと戻った。
「あの女…」
席へ戻る途中、ウルヒがそう呟いているのは聞こえた。
「ん?あいつについて何か知っているのか?」
「い、いや、ちょっとな…」
ウルヒは言葉を濁した。
「なんだよ。なんか知ってることがあるなら言ってくれ」
「し、知らん!ほら、帰るぞ!」
そういうと取り巻きの子分たちがウルヒに続いて立ち去ってしまった。
「あれ、絶対に何か知ってる反応だろ…」
ライムはそう独り言を呟いた。
席では、ラッカルが既に荷物をまとめて片付けてくれていた。
「…すごかったですね」
「ったく、なんなんだよ、あの女。いきなり俺に喧嘩売りやがって…」
「まぁまぁ、落ち着いてくださいよ。どうせライム様には勝てないんですから…」
「そうだろうけどさ、あんなに舐められたら腹立つわ」
ライムはラッカルに宥められながら寮に帰った。
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