第九話 職員会議
ライムたち寮生が新入生歓迎会を行なっている頃、王立商業学園では職員会議が行われていた。
「今年の新入生総数は240人ですか…。この子達はどのように育ってくれるのでしょうかねぇ…」
こう言ったのはサリー。入学式で司会を務めていた女性教師だ。
「そりゃあ、最注目はライム君じゃないんですか?なんせ、彼は我が校初の満点合格ですからね!」
イケおじという言葉が相応しいであろう男性教師のアークが言った。
「いや、断じて認めん!あの小僧、絶対に何か不正を働いたに決まってる!」
アークとは対照的に、髪が薄く、小太りの中年おっさんであるゴードンが声を荒げて言った。
「ゴードン先生、自分の娘がトップ通過でなかったからといってライム君に八つ当たりするのは良くないですよ」
サリーがピシャリという。
「確かに、あなたの娘さんのリサさんも非常に優秀です。例年ならトップでもおかしくない成績ですからね」
「その通りだ。それなのにあの小僧は一体どんな真似を…」
「それでは、ゴードン先生は彼の不正を証明することができますか?」
会議室に凛とした声が響き渡る。
「が、学園長…」
「『疑わしきは被告人の利益に』。今時、子供でも知っている理論ですよ」
「ぐぬぬ…」
ゴードンは何か言いたげな様子だったが、静かに言葉を飲み込んだ。
「ライム君の今日のスピーチは非常に良かったです。あの態度を見ても、彼が我が学園に不適合な人材だと言えますか?弱冠10歳でありながら、あそこまで堂々と話してくれたら十分でしょう。それに、不正を働いてうちに入ってくるようであれば、授業について来るなど到底不可能でありましょうよ。ましてや、彼には満点合格者という肩書きが常に付いて回ることになりますから…」
「………」
その場にいた全教員がクラベルの言葉に神経を研ぎ澄ませて聞いていた。
「アーク先生」
「はっ、はいっ!」
クラベルが急にアークの名を呼んだので、意図せず声が裏返ってしまった。
「君には、ライム君の担任を任せたいと思っています」
「えっ、わ、私が、ですか…?」
「この場に、アーク先生は貴方以外いないと思いますが?」
「そ、それはそうですが…、何故私にあの金の卵の担任を?」
「私が一番適任だと判断したからです。それ以上でも、それ以下でもありません」
「………」
「返事をしない、ということは拒否したと見做してよろしいですね?」
「い、いえっ!是非とも、私は育ててみましょう!」
「…良い心意気です。しかし、ライム君以外の生徒の担任であることも忘れないでくださいね?」
「も、もちろんです!」
こうして、この日の職員会議はお開きとなった。
ほとんどの職員が席を立つ中、ゴードンだけは座ったままだった。
「貴方、変なこと考えてないでしょうね?」
そんな彼の様子を見かねてサリーが声をかけた。
「………」
「大体、貴方が何を考えてるかくらいの見当はつくわよ。いい?ライム君は我が学園の宝となる存在。公私混同しないでね」
念を押すようにサリーが言う。
「………」
しかし、ゴードンからの返事はない。
サリーは小さくため息をつき、会議室を後にした。
「あの小僧…、俺の可愛いリサの邪魔をしやがって…。消え失せるが良い…」
そう呟くと、彼は手にしたライムの成績表を握りつぶした。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
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最初は10000字行けば良いと思っていたので、ここまで続けられたことを嬉しく思っております(*´꒳`*)
これからもアイデアが浮かぶ限り執筆していこうと思うので何卒よろしくお願いします!