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書け、と言われたので書きました。

スマホのアラームが耳元で大きな音を立てている。

「ねみぃ…」


私は盛大に鳴り続けるアラームを無視し、一度寝返りを打って開きかけた目を閉じる。

もっと寝かせてくれ。まだ登校まで、2日ほどあったはずだから。

そう二度寝の免罪符を思いながら、眠りに落ちた。


「いや、知ってたけど?」

現在時刻午前8時。

そして今日は、登校日。それも、春休み明けの初日。

ここからだと自転車おろか電車を使ったとしても登校時間に遅れる。

車で行くしかない。


「なんで私二度寝したかな…」

小さな絶望をした。

いっそ休んでしまおうか。

取り合えず制服に着替え、髪を梳かして整える。


「お父さーん、車出してぇー」

「ほいよ」


万が一にも遅れては困るので、朝食を抜いた。

父さんの車のドアを、引っ掴んで開ける。

鞄とともに車に乗り込むと、煙草の香ばしいというにはちょっと臭い香りがした。


移動中、ゆっくりと流れていく風景を見送りつつ、歩道を見る。

さすがに、この時間に歩いている中学生など存在しない。

きっともう、着いているか学校付近なのだろう。


車が近くの駐車場に着くや否や、走り出す。

自慢ではないが、足の速さならクラスの女子で一番だったのだ。

あと少しで校門に着きそうだというその時、黒い影が通り過ぎた。


「へぁ!?」

ぶつかった。


「ごめんなさい私の不注意です、すみませんでした」

黒い影は会釈を返すと、そそくさとその場を立ち去っていった。

全く、言葉の一つも発しないとは礼儀を知らないやつだ。


それよりも、学校。

私は、黒い影に憤りを感じつつも、校門に向かって走り出した。



ーーーー


「赤真熊さん、どうしたんですか初日から遅刻寸前だなんて」

「申し訳ありません…」


クラス全員(小学校のときから不登校の子を除いて)の前で、危うく遅刻しかけたことを名指しで心配してきたこの性悪担任教師の名前は、唐紅という。

保健教師よりも似合う白衣をまとい、栗色の髪をシュシュで一つに結っている。


「はーい、それでは取り合えず自己紹介でもしますかね」

「名簿番号1番の青氷さんはお休みなので、2番の赤真熊さん、お願いします」


「はい。私の名前は赤真熊 紅葉。趣味は定規と人の心を折ることです」


インパクト強めの自己紹介。

人の心を折るのが趣味、となれば近寄ってくる馬鹿な子はいないだろう。


その後、総勢31人の自己紹介が終わった後、担任の軽い話があり、朝のホームルームが終わった。


今日はもう、教科書を受け取って終わりのため、受取場所の体育館へ皆に紛れて向かう。

そんな中、一人だけ立って何かを手渡している人がいた。

私にも渡してこようとするので、「やめてください」と告げる。


「ふうん、まあいいや。はいこれ。興味があってもなくても来てね」


そう言って手渡されたのは手書きのチラシ。

無視された。

部活勧誘のチラシのようで、部活名は「魔法少女部」。

何の部活だ?


気になったので、放課後行ってみることにした。


ーーーー

「ようこそ!『魔法少女部』へ!」

「はぁ…」


「ささ、座って座って」

どうやら、部員は2人のようだ。

チラシを渡してきた真葉原 緑と、温果 秋という一つ上の学年の少女。


目の前にはお茶と、茶菓子が出された。


「いやあ、入ってくれる子がいてうれしいなぁ、君以外の新入生にフルシカトかまされてしまってね」

「いや、私入るって言ってないんですけど」

「うれしいなぁ、君以外の新入生にフルシカトかまされてしまってね」


入ると言わないと進まない、ゲームのシナリオか?

ほぼ初対面の人間にこれだけ馴れ馴れしく絡んでくるとは、恐るべきやつだ。


私はここには合わないな。

断ろう。

「あの、私部活には入りませ…」


言い切れなかった。

「うぎゃあ!?」


天井を粉々にして空から侵入してきたのは、朝ぶつかった黒い影。

朝とは違い、首に大きな南京錠を下げている。背丈的に、少女に見えた。


「魔法少女の気配を感知。処理に移行します」


機械のような、無機質な声だった。

背筋が凍る。全身の毛が逆立つような恐怖に、腰が抜ける。


「今日も来たの」

口を開いたのはさっきから黙りこくってニコニコしていた温果。

見た目にそぐわず、冷たい言葉だった。


「下がってて、危ないから」

そう言って真葉原はポケットから緑色の服を着たうさぎの人形を取り出す。


「んじゃ、お願い」

〔オッケー、変身行くよっ!〕


そんな声が聞こえると同時に、二人の体が色の違う光に包まれる。

まるで踊るような軽快な動きに合わせて、光が服へと形を変えていく。

やがて、光が全て衣装に変わり、気づかぬ間に髪の色も黒から緑とオレンジに変わっている。


驚き。

だけど、服が急に変わったことでも、何故か光りはじめたことでもない。

「人形が喋った…!」


真葉原が振り返る。

「声が聞こえているの?」

「ええ…」


「それって…え?でも…」

真葉原がぶつぶつと独り言を語りだす。


〔グリーン、戦いに集中して!死にたいの?〕

うさぎの人形が叫ぶ。

その直後、何かに気が付いたように真葉原が私を抱き上げ跳んだ。

間髪を入れずに、黒い影から出ているオーラのようなものが変形し、私たちがいた場所を襲い掛かる。

近くにあった段ボールは原型が分からないほど、潰れてしまっていた。


真葉原と私が段ボールに気を取られているうちに、硬質化した黒い影がすぐ眼前に迫る。

一度右に動いて引き付けておいてから、左に向けて振りきる。


そうやって黒い影を撒き、そのまま隙をついて駆け出す。

真葉原は部屋の端に私を置き、温果が戦っている戦場へ向かっていく。


その前に振り返り、言った。

「今から見るものは、黙っておいてくれると嬉しいな」

「バウム、『あれ』使うよ!」


〔イエッサー!制御は任せるよ!〕

そう言うや否や、うさぎの人形_バウム_は、杖に形を変えていた。

真葉原はそれを掴み取ると、目の前の敵に向けて唱える。


「大いなる自然よ、木々に宿る命の息吹よ!今ここにその生命の証を示せ!」

「バウム・ノーチェス・プリズムシャワー」


杖から、光があふれだす。

その光の中で私は確かに見た。

真葉原が、黒い影をまとう少女を抱きしめているのを。

そして、黒い影が霧散して消え、鍵が落ちたのを。


そのまま、私の意識も光に飲み込まれる_。

ーーーー

「あ、目が覚めた」

そう言って、上から温果がのぞき込んでくる。

頭の下に柔らかな感触を感じる。見上げると、4分の1視界が狭い。


状況から考えて、これはきっと「膝枕」だろう。

何故か、出て行ってしまった母の面影を感じた。母もよく、こうやって私を寝かしつけてくれたような気がする。

温果を抱きしめた。


「うわっ、百合百合しい…おいとましとく」

そんなことを露ほども知らないため、扉を開けて出ていこうとする真葉原。

「ちょっと待って違いますそうじゃないんです」

弁明。

ーーーー


「あ、そうだ」

先程の勘違いを息が切れるほど必死に説明した私を、好奇心に満ち溢れた瞳で見つめながら、真葉原が言う。


「なんでバウムの言葉が聞こえたんだ?」

「知りませんよ、そんなこと」

私に聞かれても、知ったこっちゃないのだ。


「聞こえるものは聞こえてしまうんです」


〔うーむ、これはやはり、そう、だよな…〕

「解析終わった?」

ポケットから、バウムが出てくる。

いつの間にか、杖の姿からうさぎの人形の姿に戻っていたようだった。


〔解析の結果を言う。でも、あんまり驚かないでね。リーベが起きちゃう〕

〔んお…?リーベはもう起きてますよぅ…?〕

今度は、温果の通学鞄から、橙色の服を着たうさぎの人形が眠そうに目をこすりながら出てきた。

そのリーベ、と呼ばれたうさぎの人形の目が、私の目をとらえる。

オレンジの瞳が好奇心に輝く。


〔はわ!あなた、魔法少女の素質がありますよ!研鑽を積めば、この子たち、いやそれ以上の…!〕

そういって、小さな体をいっぱいに近づけてくるリーベ。


「リーベ、ですよね?ちょっと近いのでどいていただいても?」

〔はい!〕

近い。


「リーベ、赤真熊さん困ってるからどいてあげて」

温果からの助け船が出た。


〔いえ、そうはいきましても…だってこの方、『三原色』の素質があるんですよ?〕

その言葉を聞いた瞬間、真葉原と温果の目の色が変わった。

そして、先程の態度とは打って変わってしつこく勧誘をしてくる。


「ねぇ本当にお願い、魔法少女になって」

「頼むよー」


右からも左からも、前からも後ろからも「魔法少女になれ」と言われ続ける。

一体何分耐えたのだろうか。


「はい、なりますよ。なればいいんでしょ、なれば」

全員が満面の笑みを浮かべる。


〔本人の同意も得たから、呼べるね〕

〔リーベ、張り切っちゃいます〕


そう言って、何かを唱え始めるうさぎたち。

徐々に、床に赤の魔法陣が浮かび上がってくる。

少し上に、赤の魔法陣がもう一つ浮かぶ。


間に、空間の割れ目のようなものが開き、そこからうさぎが飛び出した。

そして、私めがけて走ってきて_。


私の顔に、両足をぴっちりとそろえ、強烈なドロップキックをお見舞いしてきたのだった。

好きに上げるので期待せんといてください。


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