最終話
核攻撃を受けた後も、ヒトラーシャークはしばらくの間、連合軍を相手に戦い続けた。
しかし、核攻撃をもろに食らったヒトラーシャークも無事ではなく、ドイツ軍は再び劣勢へと追い込まれた。
ソ連軍はそれに乗じて進軍、ドイツ本土にまで核が投下されるとドイツ軍は故郷も失い、なけなしの戦力をかき集めて一点突破を図った。
「いいか……一人でも多く生き残り、日本へとたどり着くのだ。我々ゲルマン民族の誇りと……真実の戦いを……後の世に伝えるために!!」
もはやヒトラーシャークはその命を終えようとしていた。尾鰭は焼け焦げ、身体は所々骨がむき出しになり、凄まじい速度を叩きだしていたロケットブースターは半壊、通常のレシプロ機と変わらないほどの速度と高度を保つのがやっとの始末だった。
ドイツ軍の戦力ももはや一大隊程度、戦車も数両、航空機も10機程度、あとは歩兵が少々といったところ。
だがそれでもドイツ軍は戦う意思を見せる。彼らは自国の誇りの為に戦うことを決めた。
『ドイツ軍残存の部隊に告ぐ! 君たちにもはや帰るべき国はない! 速やかに降伏しろ!』
連合軍は包囲網を窄め、ドイツ軍の残党を迎え撃った。連合軍は先の戦いで戦力の大多数を失っていたが、それでも今のドイツ軍相手には充分すぎる。
「ジーク……ハイル」
ヒトラーシャークは飛んだ。向かいくる連合軍の戦闘機を片端から叩き落とし、少しでも前へ前へと飛んでいく。
「総統閣下!!」
すぐとなりを飛んでいた戦闘機がヒトラーシャークを庇い被弾する。
敵の戦闘機による20mm弾を食らい続々と落ちていく。
地上は既に連合軍による攻撃で壊滅、ヒトラーシャークに救援を乞うたが、それもかなわなかった。
「ぐうぅぅぅッ!!」
後ろをとられたヒトラーシャークに連合軍の戦闘機は機関銃の掃射を浴びせた。
もはや避けることも、反撃することも、今のヒトラーシャークにはできなかった。
「ぐうぅぅぅッ!! うわぁぁぁぁぁッ!!」
やがてヒトラーシャークは地上にいる連合軍部隊に向かって最後の特攻を仕掛け、そして、散っていった。
最後まで生き残っていた日本にも核が投下され1939年より6年続いた大戦はここに終結。フランスは延々と続く無人の荒野と化した。
そして、ヒトラーシャークを産み出した件の薬品は文書も研究所も破壊され、歴史の闇の中へと姿を消したのだった……