第五話 芸術
「逃げろ逃げろ! 化け物だ! 化け物が来るぞ!」
アトミックシャークとヒトラーシャークが交戦に入ったことでフランスは火の海と化した。ヒトラーシャークはその俊敏さでアトミックシャークの核光線を回避し続けた。
しかし、回避すると別のものに当たる。
「エッフェル塔が!」
最初の一撃でエッフェル塔が破壊された。ヒトラーシャークの反撃でエリゼ宮殿は大便で圧壊した。
ノートルダム、モンサンミッシェル、ヴェルサイユ、ガルニエ……全て焼き払われ、大便で圧壊し、そこにいた市民は焼かれた。
「芸術だ! フランスの最期を芸術として残すんだ! 絵具を寄越せ!」
「あえて青をたっぷり使ってやる。Vive la France!」
燃え盛る都市を見て終わりを悟った市民はキャンバスを持ち出して絵をかき始める者達も居た。
絵具を塗ったくり、筆を走らせる。
「おいアンタら火が来るぞ! はやく逃げろ!」
正気なフランス人は逃げるように言った。だが止まらない。最後を芸術で飾るために絵筆を動かし続ける。その姿は端から見れば狂気だっただろう、火が近づいて来るのにもかかわらずキャンバス片手に絵をかいているのだから。
「絵具は足りてるが、インスピレーションが足りない! 何か……何かないか?」
「おい見ろ! シャトーラトゥールがあったぞ。これで景気づけといこう。酔いこそ芸術に最適だ」
ある男が倒壊した建物の中から一本のワインボトルを持ってきた。
「だったらこっちは料理だ! ブッフブルギニョンを食わせてやる! フランスは芸術だけではない! 美食もあるのだ!」
彼らは笑った。笑いながら飲み、笑いながら筆を走らせた。
「良い香りといい味だ。これでこそフランス」
「酔ったら書くぞ。書くぞ。書くぞ……」
彼らを眩い光が包んだ。