第四話 激突、サメvsサメ
「ジィィィィィクッ!! ハイル!!」
フランスに侵攻していた連合国軍は空から突如として現れたヒトラーシャークに対し、なすすべもなく倒れていった。
「何なんだあのイカれた兵器は!? 早すぎるぞ! 弾が当たらねぇ!」
「いいから撃て! 対空砲ももっと撃ちまくれ! バズーカ!」
ヒトラーシャークに対して、連合国軍はありとあらゆる兵器を使って撃墜を試みた。バズーカ、対空砲、高角砲、鹵獲したパンツァーファウスト、m1ガーランド等小銃に軽機関銃まで。
だがいずれもかすりもせず。無意味に終わった。そして敵はヒトラーシャークだけではなかった。
「総統閣下に続け!! ジィィィィクハイル!!」
「ハイル! ハイル! ハイル!」
地の底まで、いや地の底を突き抜けてどこまでも落ちていたドイツ兵達の士気はヒトラーシャークの登場によってうなぎ上りであった。あらゆる敵を無力化し、自ら先陣をきるその姿に、ヒトラーのカスのような評価も改められた。
「ドイツ野郎が! ザワークラウトでも食ってろ!」
「撃て撃て撃ちまくれ! 地獄だ!」
援護に来たシャーマン戦車はヒトラーシャークの糞爆弾で撃破された、兵士は体当たりの余波で倒壊した建物に圧殺された。
「座標を送れ! 爆撃を要請するんだ!」
「とっくにやってる! けど応答がない!」
「司令部のクズ共め! 俺達を犬死させるつもりか、このグァッ──」
地上部隊の殆どを片付けたヒトラーシャークは次に空へと目を向けた。そこにはまだ撃墜されていない戦闘機に爆撃機が多数向かってきていた。
「ジィィィィィクッ!! ハイル!!」
空へと向けて急上昇するヒトラーシャーク。
だが何かを感じ取ったヒトラーシャークは急停止する。
「何者だ!?」
刹那、すさまじい熱をはなつ光線が撃墜しようとしていた連合国軍の航空機を粉砕した。あと少しでも上昇を続けていたなら、間違いなくヒトラーシャークもこうなっていただろうことは想像に難くない。
「ゴガァアアアアアアアア!!」
光線が飛んできた方角に目を向けると巨大な三つ首のサメ、アトミックシャークが一体。おぞましい咆哮をあげながら地上の建物を粉砕しながら真っすぐにヒトラーシャークへと向かってくる。
「なるほど、連合国軍も似たような兵器を作ったか。しかし私は負けん! 私は第三帝国の帝王、アドルフヒトラーなのだ!」
敵であると断定したヒトラーシャーク、肛門のロケットブースターを目一杯稼働させ、アトミックシャークへと迫った。
「ヒトラーシャークと我々が召喚したサメが交戦に入ったそうです! やりましたね!」
「馬鹿者! 我が兵達も踏みつぶされているじゃないか! それに街も滅茶苦茶だ!」
連合国軍司令部では報告を受けた司令官が頭を抱えていた。アトミックシャークの出した損害が思った以上に酷い物だったからだ。
「あれは一体なんなんだ! 建物は壊す! 味方は吹っ飛ばす! かと思ったら仲間を巻き込んで大勢死人はだす! 一体何がどうなってこうなった!?」
「落ち着いてください。我々はフランス人じゃない。我々がこのヨーロッパを解放した。その事実さえあればあとはどうでもいいのです」
「お前はとんでもないクズだ」
頭を抱える司令官、葉巻に火を付けようとしたところで追加の報告がきた。
「報告です! 日本軍が反転攻勢に出ました!」
「こことは関係がないだろう?」
「いえ、我が軍を殲滅したあと、アメリカ本土へと攻勢に出ているようです!」
司令官は思わず葉巻を落とした。
「一体何でだ!?」
「向こうでもサメが出たようです」
「なんなんだ!? 枢軸国の国民はサメで出来てるのか!? ッハ!? ということはイタリアも!?」
「いやそっちは呑気にパスタ食べてます」
「…………」