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聖痕のワルツ  作者: 兎月
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第一話 おいでませ、異世界

題名を変えました。

「んう………」

桜真はうめき声を上げながら目を覚ました。

はて、自分はなぜ寝ていたのか、と記憶を引っ張り出す。


確か自分の誕生日パーティーとしてクラスの連中と焼き肉に行ったのだ。元々クラスの連中が強引に企画したのだが。受験生だから騒ぐ理由が欲しいだけだろう、あいつら。

とにかくそれなりに楽しんで三々五々、家路へ就いた。

友達と別れ、そのあとふと見上げた月がとてもきれいで。せっかくなので月見をしようと思って、そして。

そうだ。いきなり尋常じゃない痛みに襲われて、変な声を聞いたのだ。

あの痛みを浴びた後、どうやら自分は気絶していたらしい。

覚醒したてでぼんやりする意識を無理矢理働かせ、現状を把握しようとする。

あまり長い時間気を失っていたわけではなさそうで、身体の何処も痛くはないし動かしにくいところもない。おそらく気絶していたのは10分くらいなのだろう。

しかし、あの現象は何だったのだろう。今まで感じたことのある痛みとはまったく違っていた。

激痛は激痛なのだが、質が違う。レベルではなくカテゴリが違う、とでも言うべきか。

そして、あの声だ。

自分のことを『我が敵』と呼んだ、あの声の男。

そしてあいつは自分自身のことを『貴様の敵』と称した。

何だと言うのだ、あの男は。

自分にあんな痛みを与えた方法も理由も、まったくわからない。ましてや、その目的は言わずもがな。

しかし、

「今考えても、意味のないことか」

確かに目的や理由は気になるが。それでも今考えることではない。まずは現状の確認だ。

桜真は思考の切り替えは得意な方である。

そして、桜真は思考に沈んでいた意識を強引に外に向ける。



そうして桜真は見た。

周りに在るのは、木だ。それもたくさん。つまり森。

桜真は森にいた。それもかなり大きい森らしく、見える範囲に出口はない。

「おいおい……」

おかしいだろう、これ。

さっきまで、あの痛みだとかあの声の男だとかが懸念事項だったが順位逆転だ。

こっちのが大問題だ。目が覚めたら森の中でした。しかも10分程度(多分だが)で。

あの声の男はどこでもドアでも持っていたのか。

「ど畜生……」

つい罵倒が口から出てきた。

とりあえずあの声の男は殴ろう。拳で。顔面にイイのを一発ぶち込んでやる。顔はまだ知らないが。どんな理由があってもだ。まああの声の男のセリフからして正当な理由があるとは思えないが。

そこまで考えて、桜真は自分の思考に引っかかりを感じた。

いったい何にひっかかった?

そう、たしか、「あの声の男のセリフ」だ。

あいつは言っていた。うれしそうに、狂ったように。

『来い!こちらがわに!』と。

ここがその「こちらがわ」なのか。

なら、ここはどこだ。

日本か、いや常識的に考えて日本に決まっている。しかしこんな非常識な状況で、そんな常識|≪もの≫が通じるのか。

「ジーザス……」

追いつめられてアメリカ人みたいな言葉が出てきた。

まるで劇のように。額に手を当て、空を仰ぐ桜真だったが、その行動は、桜真をさらなる混乱へ突き落とす。


月が。空に浮かぶ眩く輝く月が。桜真を照らす青白い月が。

月が、二つ在る。


ここは、あの声の男が桜真を呼んだここは、どうやら。

異世界のようだった。


「マジかよ」


桜真の独り言は森に呑まれて消えていった。


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